下村兼史を語る
往年のバードウォッチャーのなかには、下村兼史のおかげで野鳥にはまったという人がたくさんいます。モノクロ写真でありながら野鳥の生き生きとした素顔をとらえ、文章ではなかなか行けない辺境地の野鳥の様子を紹介し、そして映像による野鳥たちの生態。これから出会うであろう野鳥たちに、どんなにワクワクさせれたたことでしょう。そして、今では当たり前になってしまった野鳥の写真から映像、そのルーツをたどると下村兼史に行き着きます。
私個人としては彼の名著「北の鳥南の鳥」を読んだことで、どんなにハマシギの繁殖地千島に憧れたことでしょう。もし、この本を読まずして千島でハマシギに会ったら「ああ、ハマシギいる」で終わってしまったに違いありません。千島のハマシギだけてはありません。下村兼史は、さまざまな野鳥との出会いをより感動的にしてくれた野鳥の魅力の案内人です。
塚本洋三さんは、ご存知「東京湾に雁がいた頃」の著者。モノクロ写真の魅力にとりつかれた往年のバードウォッチャーです。当然のことながら、行き着く先は下村兼史の道をたどること。
前置きが長くなりましたが、今日は千葉県我孫子市にある鳥の博物館での塚本洋三さんの講演会にいきました。タイトルは「モノクロ写真と下村兼史を語る」です。
会場は、満員。下村兼史によって野鳥の世界にどっぶりとつかった往年のバードウォッチャーの顔ぶれも見えました。
塚本さん自身、野鳥とモノクロ写真、そして下村兼史の魅力にとりつかれているだけに話も魅力的。この手の話は、自己陶酔に終わってしまいがちなのですが、やさしい語り口とユーモアで、2時間30分という講演時間がとても短く感じました。
そしてそして、今日のおまけ。なんと下村兼史の最高傑作「或る日の干潟」の上映です。私は、今まで2回見ていますが、今回は多くの番組に関わるようになって目が肥えての鑑賞です。この「或る日の干潟」は、凄い作品だと改めて思いました。わずか15分、戦前のモノクロ映像の作品ですが、その後のNHKの「自然のアルバム」から「ダーウィンが来た」にまでつながる自然番組の”造り”の原点がここにあると思いました。
たとえば、ハヤブサを登場させ、緊張が走るガンの群れ。まったく別の時に撮影して、あたかも同時に起きているかのように編集しドラマを作り上げる手法は今でもよく行われています。そして、ストーリー展開、カット割り、パーンからズーム、ロングからアップへの切り替えなど、現在の自然番組と変わりません。
戦前に自然ドキュメントの形を作り上げた下村兼史の感性とセンスの良さに驚きました。今回の塚本さんのお話は、モノクロ写真が中心でしたが、映像作品についての考証も引き続きお願いいたします。
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