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2010年5月20日 (木)

天井に描かれた鳥たち

 山階鳥類研究所のH岡さんから「お寺の天井絵の鑑定依頼が来たのだか見てあげてくれないか」と依頼を受けました。鳥の名前を調べるくらいならばご協力しましょうと、安請け合いしたのは良いのですが、この季節は野鳥のハイシーズン、なかなか都合がつきません。本日やっと、うかがうことができました。
 うかがったのは、越谷市にある林泉寺です。周囲には水田が広がり、のどかな風景の中に大きなお寺がありました。広い敷地には、大きな本堂、スダジイやアカマツの古木が往時をしのばせます。林泉寺は、かなり古いお寺で、天井絵は江戸時代初期かそれ以前のものの可能性があるとか。それだけに絵もかなりくすんでいます。それに暗い本堂の上に飾られているのですから難しい鑑定です。
 絵は、全部で63枚。植物や寄進したであろう家の家紋もあり、鳥はこのうち43枚でした。 いずれの鳥も動きのある図柄で、生き生きと描かれています。

Rinsenji1
 種名が特定できたもののなかには、マナヅル、キジ、カワセミ、アカゲラ、メジロ、スズメ、フクロウ、ヒガラ、ウズラなど、仲間までの特定は、ガン類、カラス類、ハト類、シラサギ類など。そして、かなり種の特定の難しい絵もあります。描かれているイメージからモズのようなのですが、色が違うといったようなものです。これはタカ類、オオタカだろうか。

Rinsennjinorthern_goshawk
 また、絵柄は画面いっぱいに鳥を描いたものと花との取り合わせと2つのパターンがあり、どうも複数の絵師が製作に関わったのではないかと思われました。さらに、タカやホトトギスの描き方から狩野派の流れをくむ絵師と思われますが、このあたりは専門外なので言及はさけます。
 このほか、鳥の名前がわかるものの中には、サンケイやおそらくハクオウチョウのような外国産の鳥も描かれていて、これらの鳥が当時すでに輸入されていたことがわかります。
 残念なことに、色はほとんど退色してしまっていますが、赤がほんのり残っています。じつは、これが種の特定を難しくしています。というのは、胸の赤いタカ類や胸が赤いモズのような鳥となっているのです。どうも、当時としては貴重な赤い絵の具を手に入れ、それを多用している可能性もあり、本来の色とは違うのではないかと思いました。

 これは謎の鳥。模様はウソ、顔つきはモズ、尾に目玉模様のある鳥はいないし。

Rinsenji2
 それにしても、お寺の天井画が古文書のように貴重な資料として、現在に情報を伝えてくれたことになります。おかげさまで、天井絵でバードウォッチングを楽しませていただきました。
 また、林泉寺のご住職はじめご家族の皆さまには、ご丁寧にご案内いただいたばかりではなく手厚いおもてなし、たいへん恐縮してしまいました。このおもてなしも、日本人の失った心情を思い起こされました。ちょっとタイムスリップして江戸の自然と心に触れた一日でした。

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コメント

 今日は、お忙しい中、遠路足をお運びいただき、ありがとうございました。ご案内担当のなこ です。
 先生においでいただいたお陰で、「鳥1」「鳥2」としか名前が解らなかった天井画に「マナヅル」「カワセミ」「等、名前がつき、本当に有り難く思っております。今は、自然に見る事のない、様々な鳥が描かれていて、驚いています。
 江戸時代は、なんと自然豊かな時代だったのだろう・・と。
 本当にありがとうございました。
 今後とも、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
 

なこ様
 こちらこそ、ありがとうございました。
 あの後、週末に向けて機材の購入のため秋葉原に行きましたが、俗世にひきもどされた感じでしたよ。

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