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2010年5月24日 (月)

30年ぶりのコノハズク

 野鳥録音は、人の群れのなかではできません。ですから、人が集まる珍鳥情報には興味ありません。しかし、録りたい鳥が人気、あるいは少ない鳥の場合があります。たとえば、サンコウチョウもアカショウビンもいるところは名所になってしまい、人が集まっています。しかし、野鳥の録音は貸し切り状態でないとできないのです。そうなると自分で探すしかありません。季節と環境、そしてカンをたよりに出かけます。私は、これでサンコウチョウやアカショウビンをゲットすることができました。
 A部さんは別の方法で、会いたい鳥を探します。彼は、古い資料を駆使して当たりをつけて出かけます。古い単行本や報告書などを入手して、いたと記録のあるところへ行ってみるのです。過去に記録のあるところですから、可能性はゼロではありません。
 そのA部さんが、報告書に地名の載っていた栃木県北部のダム湖のほとりで、コノハズクが鳴いているという情報を一昨日の夜にいただきました。私にとってコノハズクは30年以上前に三重県の大杉谷で会って以来、声を聞くことは久しくなく、ぜひとも録音をしたい鳥です。
 今回は、夜の取材です。道もよくわかりません。近づくことができないかもしれません。A部さんの話では移動して鳴いていたとのこと。ということは、どこで鳴くかわかりませんので、YAMAHAのW24、C24、そしてソニーのPCM-D1を持って行き、とにかくあちこちに仕掛け、可能性を高めることにしました。また、遠くで鳴いたときのためにPMD620にはガンマイク(AKG C568EB)とマイクアンプ(Wendt NGS X2)をセットして使ってみることにしました。このセットのために、バッテリーボックス、それぞれをつなぐコード、そして確認のためのヘッドフォーンが必要です。これに双眼鏡と防寒のために衣類で、かなりの重装備。腰がきしります。
 ダム湖のほとりには、午後5時半に着きました。静かです。何も鳴いていません。ダム湖ですから周囲の山から沢がいくつも流れ込んでいます。そのため、ガンマイクをセットして聞くと「ゴーッ」という音がどこへ向けてもします。これで果たして録音できるか不安になって来ました。
 A部さんは「昨日は7時10分に鳴いた。今日もきっと鳴く」と自信ありげです。私としては、ちょっと標高の低いこの地では渡りの途中立ち寄ったもので、今日は抜けてしまっているのではという不安がありました。
 ところが、まだ明るい6時頃、A部さんが「鳴いた!」。確かに金属的な声が聞こえたような気がします。耳を澄ましましたが、一声のみ。録音はできません。それもかなり遠くです。それではということで、声がした方へ2人でダムの畔の道を歩きます。登り坂に息を切らして、先ほど鳴いていたあたりに到着。ここへガンマイクのセットを仕掛けることにしました。
 太陽が山の端に隠れると、アカハラが遠くで鳴き始めました。カケスも忙しそうに飛び交っています。鳥はいるし、とにかく1声は鳴いたのだからいることはいる。期待がたかまります。じっと押し黙って鳴くのを待っているところへ同じ録音仲間のE村さんが合流。さきほど、車を置いたところで鳴いていたとのこと。それではということで、ガンマイクのセットは置いたままにして、道を戻ることにしました。
 行ったり来たりしているうちに、昨日鳴いたという7時10分も過ぎました。あたりは夕闇が迫ってきて、アカハラの声がいちだんが賑やかです。それを録ろうと、岩陰で録音機を構えていると「鳴いている」との声。聞こえます。さっきに比べれば近い、しかし前には沢があり水音も賑やかです。ここで2分15秒、録音できました。まあ、番組には無理でも加工すれば図鑑には使える声をゲットすることができたと一安心。7時32分のことでした。
 いるのが確認できたということで、ここでE村さんはお帰りになりました。真っ暗になる前に、コンビニで買った弁当を食べて腹ごしらえし長期戦に備えようと、弁当をあけて一口食べたとたん、すぐ横の山の斜面で鳴き始めました。今度は近い。録音機を3台持ってそっと近づくと、頭の上で鳴いているのではないと思うほどの近さです。これならば沢音はなんとかなります。しかし、口に含んだご飯は、音が出るので噛むことができません、この時の録音は4分4秒。こんなに長い間、口のなかに食べ物が入っていたことはありません。
 その時の録音がこれ。YAMAHA W24、48Khz/16bitで録音。ボリューム調整、ノイズリダクションを軽くかけています。ヨタカとの競演が良い感じです。

「oriental_scopsowl100521.mp3」をダウンロード

 どうですか?ちゃんと「仏法僧」と聞こえますか。
 この後も長く鳴いてくれ、雌と思われる声が間の手をいれるシーンもありました。なお、残念ながらガンマイクのセットには近くでアカハラが鳴いてくれた以外、コノハズクは入っていませんでした。
 まずはA部さん、ありがとうございました。

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コメント

やりましたねぇ!、おめでとうございます。録音はなんと言っても、フットワークと執念が大切ですからねぇ。

SY-99様
 天気を横目で見ながら、すっ飛んで行かないと鳥は待ってくれませんね。
 おかげで、親不孝のしっぱなしです。

30年ぶりですか
おめでとうございます。

私もコノハズクの声が大好きです
夜の山で反響する声は何とも言えない感動、神秘的です。

個体によって鳴き方が違うようで
私が一昨年録音した2個体は

「ウッ・コッ・コー♪」 3つのリズムの
音程(1kHz)を変えないで鳴く個体と
「ウッ」と「コー」は1kHz
「コッ」の部分を少し音程(1.2kHz位)上げる個体でした。

まつ様が録られたのは「ウッ」と「コッ」は同じで「コー」が少し下がる個体ですね。

近くで録られたようで、良い声で聞こえます。

kochan様
 そんなに比較できるほど、コノハズクを録音する機会があるとは、らやましい限りです。
 ダイトウコノズクでは、鳴き声から個体識別をしてなわばりの変化や婚姻関係まで調べられたはずですから、コノハズクも個体識別ができそうですね。

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