思わぬ伏兵
第3日曜日は、私が顧問をしている日光野鳥研究会の自然観察会の日です。今日は、日光と足尾を結ぶ細尾峠を歩きました。細尾峠は、かつての日光と足尾を結ぶ旧道で、いろは坂に匹敵するほどの曲がりくねったつづれ織りの坂道が続きます。しかし、初夏は新緑、秋は紅葉が素晴らしいところです。標高はおよそ1000m、野鳥がもっとも多い高さです。
今日から梅雨入りかという予報もあって、雨が心配でした。会員の気象予報士のT中さんは「午前中は、大丈夫」と太鼓判を押してくれての観察会の開始です。たしかに、薄雲はあるものの所々に青空も見え、まずますの天気です。これはたっぷりと夏鳥たちのコーラスが期待できると、わくわくしながら細尾峠に向かいます。
ところが、思わぬ伏兵です。峠に着くとエゾハルゼミの大合唱です。唸るようなセミたちの声に森は満ちあふれていました。エゾハルゼミは、ほんの3,4センチメートルの小さなセミです。体は褐色で羽は透明、これだけたくさんのセミが鳴いているはずなのに姿はいくら探しても見つけことはできません。やっと見つけたエゾハルゼミの小ささに驚きました。この小さな体から、こんな大きな音が出るのは不思議です。
声は、こういう感じです。
これでは、オオルリもキビタキが鳴いても聞こえません。というか、そもそも鳥たちも鳴くのを諦めているのか、まったく鳥の声は聞こえません。やっと、見つけたのはヤマガラの家族。幼鳥たちが鳴き合いながら、木々の間を異動していきます。彼らの絆は、ボーカルコミュニケーションがたよりのはずです。このセミの騒音のなかで、幼鳥たちがはぐれてしまわないか心配です。
お昼を過ぎると、T中さんの予報どおり少し雲が厚くなってきて風が吹き始めました。すると、まるでフェードアウトをかけたようにセミたちの声がすーっと静かになっていきました。きっと、温度との関係が深いのでしょう。私も脱いでいたフィールドコートを引っ張り出して着ました。
すると、待っていたかのようにキビタキが鳴き始めました。メジロ、ジュウイチ、センダイムシクイ、そしてオオルリも高らかにさえずり始めたのです。昼下がりの時間帯は、野鳥たちはほとんど鳴きません。それが、今日は違っています。セミが鳴いていた間、さえずれなかった分を埋め合わせをするように鳴き始めたのです。やはり、セミの大合唱の中ではさえずっても意味がないと理解しているのでしょうか。
考えてみれば、セミにとっても今日は最後の初夏の日、明日から気温の低い梅雨に入ります。日光の梅雨はとても寒いのです。彼らにとっては今日が正念場であったのかもしれません。
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