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2010年10月

2010年10月31日 (日)

ムラサキシジミの死体

 今朝、六義園の塀のまわりを散歩のときにチョウの死体を見つけました。かなり痛んでいますが、紫色の金属光沢が美しいチョウです。
 調べてみたらどうもムラサキシジミのようです。よく似たチョウにムラサキツバメがいます。翅が傷んでいるので判断に迷いましたが、翅の角のカーブの感じはムラサキシジミのようです。専門外なので間違っていたら、ご指摘ください。
 ムラサキシジミもムラサキツバメも南の暖かい地方のチョウのようで、北進が話題になっていました。食草は、カシ系ですから六義園にはシラカシなどの樹木がありますから十分生息可能です。
 ちょっと前までは、やはり北進してきたツマグロヒョウモンが珍しくて、見たらメモをしていました。しかし、今年はいるのは当たり前、メモも取らなくなってしまいました。
 それにしてもチョウの北進は何種も話題になっていますが、鳥はそれほどでもありません。はっきりと温暖化の結びつけられる例は、今のところ報告されていません。変温動物と恒温動物の違いなのでしょう。鳥に影響が出てくる頃には、もっと深刻な事態になっているかもしれませんね。
Murasakisizimi

2010年10月30日 (土)

台風のおかげで

  今日は東京都公園協会主催の「大名庭園で楽しむ野鳥観察」、六義園での自然観察会の日でした。ところが、台風9号が関東地方直撃、朝から本降りの雨です。今まで数え切れないほどの観察会を指導していますが、台風に見舞われたのは初めてです。
 このイベントを決めたのは今から数ヶ月前。そのときは、まさか台風が来るとは思ってはいませんでした。秋晴れの中、バードウォッチングを楽しむつもりでの日程です。しかし、万が一のことを考えて六義園のなかの心泉亭を確保、座敷ではありますが庭園を見ながらお話をすることができます。この万が一が当たってしまって急遽、心泉亭での講演会となりました。
 実は、観察会は定員30名。ところが、すぐに定員となりキャンセル待ちの方がいるとのことで、午後にも観察会をすることになっていました。ですから、講演会も午前と午後の2回開催しました。大雨にも関わらず、欠席者は数人でした。
 講演の内容は、バードウォッチングの方法から野鳥を見るとわかること、六義園の江戸時代から現在の野鳥のようすと、とりとめのない話となってしまいました。話だけで、どれだけ野鳥とバードウォッチングに関心を持っていただけたことやら。突然の台風来襲ということで、ご勘弁願えれば幸いです。
 皆さん、今度はぜひ天気の良いときに六義園にお出でいただき、野鳥との出会いを楽しんでいたければと思います。

2010年10月29日 (金)

神田古本祭り

 神田神保町に会社のあるTさんから先週「祭り今日からデス」と電報のようなメールをいただきました。祭りとは”神田古本祭り”。神保町にある古書店が、道ばたに本を並べて売る青空市が開かれています。
 昔はこの季節になると、秋の夜長、読書の秋、読書週間、そして古本祭りと楽しみにしていたものです。以前は、中央線古書展やらデパートで開催される古書市にも出かけていきましたが、このところはご無沙汰です。やはりネットの影響が大きいですね。欲しい本があれば検索して見つけ出し、いちばん安い古書店で通販で購入。なにせ徳島や釧路の古書店から買えるのですから、たいした時代です。
 ここ数日、一万歩を越えていないのでこれはまずいと思い、散歩がてら古本祭りに行ってきました。
 昔、青空市は錦華公園や交差点のキムラヤのところが空き地で、そこで開かれていました。この前行った時はすずらん通りが会場でしたが、今年は路地と歩道。自分のお店の前の車道側に本棚を並べているという感じでした。おかげで良く歩きました。平日、それもあまり天気が良くないのに、とても混んでいました。人をかき分けての本探しです。そのため、鳥の本はあまり見つけることはできませんでした。それでも「定本野鳥記全8巻」が5,000円、「野の鳥の生態」日新書店版が800円など、格安で並んでいました。
 本日、購入した古本は「考証江戸奇伝」「鳥と人間」「鸚鵡籠中記」。この後、書泉グランデで新本の「カラスの自然史」「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」を購入。おかげで、10,764歩となりました。

Furuhonmaturi_2

2010年10月28日 (木)

隅田川にハクガン

 今日は1日雨予報、こういう日ならば江戸東京博物館も空いているだろうと、午後に出かけました。魅力的な展示があると行くのですが、長い行列に恐れをなして入り口で帰って来たことが何度かあります。
 現在開催されいる特別展のテーマは「隅田川」。先に行ったN井さんから「隅田川にハクチョウが描かれている」との情報をいただいています。ですから、浮世絵や屏風絵のなかに描かれている鳥をじっくりと探すためには、混んでいたら困ります。
 江戸東京博物館に着くと、この天気にも関わらず日程を変えられない修学旅行のバスがたくさん並んでいました。しかし、幸いなことに特別展は空いていました。おかげで、自分のペースでじっくり、そして何度も見ることができました。そして、屏風絵のなかにいろいろな鳥が描かれていることを発見しました。
 たとえば、この企画展のWebサイトに掲載されている鳥文斎栄之の「隅田川風物図屏風」(文政9・1826)には、門跡と書かれたお堂の上にコウノトリが巣を作っています。永代橋のほとりですから西本願寺のようです。この屏風絵には、このほかコサギ、ユリカモメ、カラス類がいます。
 入ってすぐにところに展示されている「江戸名所図屏風」は、とても小さく鳥が描かれています。しかし、いずれもリアルなために種類がわかります。このなかに、なんとハクガンがいました。白く大きめな鳥の翼の先が黒く描かれています。同じ画面には、ハクチョウがいますので、明らかに描き分けています。東京湾にハクガンの群れの記録はありますが、隅田川の記録は初めてです。このほか、この屏風にはカワウ、ユリカモメ、オシドリ、コサギ、スズメ、マガン、ドバト、そしてトモエガモらしい鳥がいます。
  このほかの展示の中から、オナガガモ、マガモ、コガモ、ツバメを確認しました。このほか、種名のわからないものも何点かありました。暗い照明とガラス越しの展示のため確認が取れないものもありましたので、目のいい人ならばもっと見つけられるかもしれません。
  しかし、「隅田川」と銘打っていながら、隅田川の自然についての解説はまったくといっていいほどありません。まして、そこに描かれている鳥については一言もありませんでした。この豊かな自然の隅田川の恵みが江戸の自然と文化をはぐくんだと思うのですが、ちょっともったいない感じがいたしました。
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/exhibition/special/index.html

Sumidagawa_3
                          

2010年10月27日 (水)

10,000枚目

 今日、六義園で写真を撮ってデータをコンピュータに落としていると、カメラにフォルダーが2つできていることに気が付きました。ひとつのフォルダーのファイルは9999で終わり、もうひとつのフォルダーには0001で始まるデータがありました。ということは、カメラを購入してから今日で1万枚の写真を撮ったことになります。
 キヤノン7Dを入手したのは4月頭でしたから7ヶ月で1万枚、このペースで冬鳥のシーズンを迎えれば、一年間で2万枚に届くかもしれません。
 貧乏性の私は、すぐにお金のことを考えてしまいます。もし、フィルムだったら1本36枚撮れますから、1万枚ということは278本ということになります。これを金額にすると、カラーリバーサルフィルムが1本700円余。現像所へ持ち込んでの現像代もそのくらいですから、1本につき1500円かかります。ですから、フィルムカメラで1万枚の写真を撮ったら417,000円かかってしまいます。これに、現像所に行く電車代から時間を加えたら、実際には5~60万円となるでしょう。このカメラと望遠レンズ、2セット分の値段になります。それが、ほぼタダ。デジタル時代バンザイです。
 保存してあるデータを見ると、5,815枚の写真が残っています。およそ4割は捨てたことになります。それでも133Gのデータとなり、データ専用のHDDの約半分をキヤノン7Dのデータが占めていることになります。
 私は、録音がメインですから写真はそんなに撮っていません。それでも、この状態なのですから毎日公園で写真を撮っている野鳥カメラマンの方たちはいったいどういったデータの整理をしているのでしょう。
 かつてのフィルムの時代は、撮った中から失敗作を捨てるという作業を行いました。デジタルカメラの時代は、撮った中から良いものだけを拾うという感覚でないとデータが貯まってとんでもないことになりそうです。
 ほぼ1万枚目は、スズメの若鳥。暖かい日向で、うつらうつらしているところです。

Treesparrow

2010年10月26日 (火)

おかしな看板-手賀沼

 これっておかしいですよね。

Kanban1

 ジャパンバードフェステバルで手賀沼のほとりを歩いてたら見つけた看板です。手書きでもないし、プリンターでプリントしてパウチしたような簡単な看板ではありません。プラスチック製で、しっかりとした支柱に取り付けられています。ですから、誰かが勝手作ったものではなく、手賀沼親水公園を管理している千葉県か我孫子市が設置したものでしょう。
 看板に書かれている「この沼には入れません」は、危ないからだろうと最初は理解しました。しかし、その次の「消毒していません」にひっかかりました。
 まず「それじゃあ、どこかに消毒された沼があって入れるの?」と、つっこみを入れたくなります。
 この看板は手賀沼のほとりではなく、人工的に作られた水路のような水辺に建てられていました。ちょっとしたビオトープのようになったところで、トンボや水辺の生き物がいるところです。ですから”この沼”は、手賀沼ではなく親水公園の施設に対してのものと考えられます。ようするに管理者として、消毒していない水が流れているから入らないでと言っているものと理解できます。
 しかし、消毒していない水辺なのだから入れないというもおかしなものです。親水公園の水辺なのですから、水に入って魚を捕る楽しみがあってもよいところです。野外の水辺なのですから、いろいろ細菌がいて当たり前。私の子どもの頃は、近所の用水池で筏を作って遊んだりしました。おかげで池から上がると黒いヒルが身体についていたりしたものです。自然のなかの細菌に対しては生き物として免疫があってしかるべきものです。
 それとも、ここで子どもがケガをし化膿して、その親が水を消毒して流せとクレームでもあったのでしょうか。あるいはそれを恐れてのことなのでしょうか。1枚の看板から水辺の自然と親しむコンセプトは、この施設にはないということがわかります。
 この看板がおかしいと思わない管理者がおかしいと思います。

2010年10月25日 (月)

ジャパンバードフェステバルに思う

 ジャパンバードフェステバル(以下JBF)が昨日終了いたしました。土曜日は、バードカービング展でとらわれていましたので、昨日は企業やNPOのブース、アビスタ会場の写真コンクールやカミさんが出品しているワイルドライフアート展を見て回りました。これでひととおりは見ることができました。会場と会場の間は船でゆっくりと行ったのですが、それでも1万5千歩を越えていました。
 ジャパンバードフェステバルやJBFで検索すると、多くの来訪者は満足されているようで、なかには関係者へのねぎらいの言葉さえあります。これでは、今後のJBFの発展はないと、あえて苦言を述べます。
 JBFは今年で10周年。私は、それ以前に開催されたバードカービング展から毎年、参加しています。いち来訪者としての意見です。
 10周年というのは一つ節目の年だと思うのですが、それらしい雰囲気を感じることはありませんでした。規模も過去最大であった年に比べれば小さいし、有名人を呼んでのイベントありません。10周年記念と銘打ったイベントはあることはあったのですが、私のまわった限り出会うこともありませんでした。10周年でこの程度なのですから、JBFのマンネリ感は否めません。とにかく新しい企画が見あたらないというのが、いちばん大きな理由です。裏事情はわかりませんが、お金がかかっていないと感じるせいもあるでしょう。これからまた毎年、このまま続いていくのでしょうか。
 JBFは「鳥を自然を愛する人たちが、一堂に会する、年に一度のお祭り」と銘打っていますので、お祭りとして形はまずまず整っていると思います。Webサイトを見ても環境の保護も自然の保全を目的とはしていないので、このままで良いのかもしれません。しかし、このテーマでイベントを行う以上、いかがなものかと思います。同じ時期に名古屋でCOP10が開かれているのですから、当然JBFもと思うのですが希薄でした。
 一部のNPOのブースがかろうじて環境問題をフォローしていましたが、地味である上に展示ブースは片隅であることは否めません。いずれにしても、イベント全体に自然の保護や環境へ取り組みの雰囲気やコンセプトが感じられませんでした。参加企業に、それぞれの企業が行っている環境への取り組みについてのパネル1枚でも良いから出してくれという取り決めは、求められないのでしょうか。
 自然への配慮とは逆の印象を持つ展示さえありました。会場を回って違和感を感じたのは、飼い鳥系のブースがあることです。かろうじて、生の飼い鳥はいませんでしたが”鳥を自然を愛する”の自然部分が欠如したブースは、いかながものでしょうか。また、会場内をモモアカノスリを持って堂々を歩く来場者がいましたが、これも問題。何度も会いましたので、主催者は注意をしなかったのでしょう。さらに、キバタンを海賊みたいに肩に乗せたオバさんがいましたが、これも違和感を感じました。
 この来訪者たちは、単に鳥のイベントということで鳥好きの人が集まるところ、自分も仲間という感覚で来たのだと思い思います。私はこの来訪者に違和感を感じましたが、彼らが違和感を感じないとするならば、野鳥と野生、自然に対するこだわりがイベント全体になかったからでしょう。JBFは、彼らのほうが違和感を感じ肩身の狭い思いするようなイベントしなくてはならないのではないでしょうか。

Jbf2010

 写真は、賑わう光学器機メーカーのブースが並ぶ一角。

2010年10月23日 (土)

手賀沼の畔で

 今日と明日は、千葉県我孫子でジャパンバードフェステバルが開催されています。本日は、バードカービングコンクールの審査を行ってきました。午前10時からはじまって終わったのは1時近く、疲れました。
 今年も水準が高く、このコンクールを続けることで皆さん努力されバードカービングの向上につながっていると確信いたしました。
 ただ、審査する方はたいへんで、甲乙付けがたい作品を前に点数を付けるのに悩みます。結果、悪いところを探して減点していくというたいへん意地悪な目で見なくてはなりません。私の性格には合っているかもしれませんが、制作者がまわりにいるかもしれない中での審査ですから気を使います。
 明日もやっていますので、ぜひとも審査にも苦労したバードカービング展にお出でください。今日の会場風景です。

Birdcave

 審査の後、日本バードカービング協会のH原さんが審査員のためにお弁当を用意してくれました。写真がそのお弁当。

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 「手賀沼野鳥の楽園」と題されたお弁当、この包み紙を描いたのは黒田長久先生です。鳥類学者でありながら、絵もお描きになり作曲作詞されるという多才な先生ならのでは味のある絵です。湖畔で審査員をしていただいた野鳥カメラマンの叶内拓也さんと、黒田先生の絵が描かれているお弁当をいただく、何とも贅沢なひとときでした。もちろんお弁当は、たいへん美味しゅうございました。

2010年10月22日 (金)

情報化時代の珍鳥情報

 デジスコ通信に「情報化が野鳥を脅かす」と題し、投稿いたしました。ご一読願えれば幸いです。下記URLで、読めます。
   http://www.digisco.com/mm/dt_50/toku1.htm
 昔の珍鳥情報は、探鳥会の場で伝わりました。たとえば「先週の新浜でコシャクシギがいたよ」と明治神宮探鳥会で教わったりしました。当時、我が家には電話がなかったので「デンワクレ」と電報が来たことがあります。その後、日本野鳥の会の事務所ができた頃は、ボランティアで会報の封筒詰めをしていると珍鳥情報が聞こえて来て、ボランティア仲間で見に行きました。ですから、かなり積極的にいろいろな活動に参加しないと珍鳥情報は得られなかったのです。それだけに、珍鳥はボランティアへのご褒美、探鳥会の精勤賞という感じであったわけです。ある意味、鳥への貢献があって珍鳥に出会えたことになります。
 ところが、インターネット普及によって検索ツールに珍鳥名を入れれば、たちまち情報漏れをしているブログから詳細な情報を得ることができます。あるいは、携帯電話やEメールによってリアルタイムで情報が伝わってきます。
 野鳥への貢献度とは関係なく珍鳥情報が勝手にやってくる時代の到来となりました。これは、良いことなのかの問いかけです。

2010年10月21日 (木)

羽田から海外に行った頃

 今日、羽田空港の新国際線ターミナルが開業しました。ニュースやワイドショーでは、新しい施設の話題でもちきりです。私はこれで「初めての海外旅行は、羽田から行った」という自慢話ができなくなりました。
 初めての海外旅行は、1976年のこと。街には「およげ!たいやきくん」の歌が流れ、田中角栄がロッキード事件で逮捕された年です。1ドルが250円くらい、それでも360円からずいぶん安くなったと思ったものです。まだ、海外旅行の黎明期らしさがあり、貯金が30万円以上ある通帳を見せなくてはビザがおりませんでした。
 ツアーは、アメリカ西海岸のバードウォッチングの旅でした。このツアーで出会ったバードカービングが、その後日本で花開くとは思ってもみませんでした。その経緯は拙サイトの「鳥の道くさ」で報告していますので、ご興味のある方はご一読いただければと思います。下記URLです。
 http://homepage2.nifty.com/t-michikusa/birdcarving.htm
 バードカービングはその後、関係者の努力もあってコンクールを開催するようになりました。そして今週末、千葉県我孫子で開催されるジャパンバードフェステバルで、バードカービング展とコンクールが開催されます。例年、全国から応募のあった作品が300点あまり並びます。それはそれは壮観です。私は、23日にコンクールの審査のお手伝いで会場にいます。
 ジャパンバードフェステバルについて詳しくは下記URLで。
 http://www.birdfesta.net/

 羽田から飛び立ち、バードカービングに出会って34年、その成果をご覧いただければと思います。なお、バードカービング展以外にも絵画展もあります。また、光学機メーカーなどのブースでは実機に触れることのできるまたとないチャンスです。このほか、講演あり音楽あり盛りだくさんなイベントです。 
 羽田の国際線開設のニュースから、バードカービングに出会った旅を思い出しました

2010年10月20日 (水)

カネタタキの高い音

 秋の虫がにぎやかになりました。実は虫の多くは8月から鳴いているのです。暑い昼間は、セミの声がうるさくて聞こえませんでした。夜は夜で、アオマツムシがにぎやかすぎて他の虫の声が聞こえなかったのです。そして、涼しくなり秋の夜長、耳を澄ませば昼間も夜も色々な虫の声が聞こえてくるようになりました。
  ちょうど去年の今頃、部屋の中の植木鉢でカネタタキが鳴いているのに気が付きました。TVやらオーディオ器機のそばなので、はじめは不具合で鳴る機械の警告音かと思いました。カネタタキの声は、そんな声です。さっそくPCM-D50で録音。どうぞ、お聞きください。

「kanetataki091008_00.mp3」をダウンロード

 実際は、羽をこすり合わせて出している音ですから”声”や”鳴く”というのは正しくありません。しかし、イメージは声であり鳴いているように聞こえますので、情緒ある表現をさせていただきます。
 カネタタキの声は、名前のように鐘を叩くような音とテンポに聞こえます。しかし、とても高い音なので老耳になった私には近くで鳴いてくれないと聞こえません。この時は、狭い部屋ですから聞こえたことになります。カネタタキの声をスペクトルグラムで見ると、基音がおよそ7,000Hzにあります。そして、14,000Hzにかなりはっきりした倍音があるのがわかります。さらに、21,000Hzにもうっすらとありました。倍音があるということは、ふくらみのある音に聞こえることになります。
 以前、94kHz/32bitで録音した音源もチェックしてみました。94kHz/32bitで録音すると47,000Hzの高音までカバーできます。それによると、28,000Hz、35,000Hzにも倍音が広がっているのがわかりました。こうなると人の耳には聞こえない領域ですが、虫たちは聞いているのかもしれません。
 小さな虫の驚くべき力ですね。

2010年10月19日 (火)

新宿のハクセキレイのネグラ

 昨夕、北海道のH田さんが上京されているとのことで、新宿のホテルまで会いにいきました。ロシア人のご夫婦と京都から東京の旅で、午前中はカミさんと鎌倉を探索、お疲れのところお邪魔いたしました。
 ホテルに向かう途中、JR新宿駅南口を出て甲州街道と西口の前の通りの交差点を通ると都会の騒音の中、ハクセキレイの声が聞こえるのに気が付きました。デパートのルミネの前です。
 そういえば昔、ここにハクセキレイのネグラがあったことを思い出しました。時間があまりなかったので、じっくりは観察することはできませんでしたが、まだネグラをとっているハクセキレイがいました。ルミネの屋上に数羽、まわりのイチョウの街路樹に数10羽が飛び交っていました。
 以前は、ルミネの正面入り口の上にある穴に1羽ずつ入り、尾が飛び出ているという面白い風景が見られました。写真では、青いルミネのロゴの上のほうにある格子状の模様のある壁面です。

Lumine
 昨夕は、ここには入ることはせず、おもにイチョウの周りで飛んでいました。今では、木の中をネグラとしているようです。
 10年ほど前に日本テレビのニュースで、街のなかでネグラをするハクセキレイということで、ここで取材を受けたことを思い出しました。車が行き交う中のインタビューで苦労した思い出があります。たしか『今日の出来事』だったと思いますが、こんなことがニュースになったのです。
 JR渋谷駅近くの青山通り沿いのネグラは、無くなったと聞いています。この新宿のネグラはいまだ健在なわけは、どこにあるのでしょうか。その違いを解明できたら、ハクセキレイが都会でネグラをとる理由が分かるかもしれませんね。
  この後、H田さんとロシア人のご主人のビクトールさんと、ホテルの近くの居酒屋で夕食。ビクトールさんはキムチがいたく気に入ったようで、おかわり。ロシア語でもキムチで通じました。

2010年10月18日 (月)

秋の稚児の墓

 昨日は、日光野鳥研究会の自然観察会。滝尾神社から行者堂を登り、女峰山への登山道を途中、稚児の墓まで行きました。途中に殺生岩という大きな石碑があるのですが、ここまではスギ林で生き物の少ない上に道も急峻です。しかし、ここを過ぎると広葉樹の林となり鳥も多く、道もなだらかになります。
 昨日は曇りがちでしたが、気持ちの良い秋の山歩きを楽しめました。これで、晴れていたら日焼けでけっこう疲れたことと思います。
 鳥は、遠くで鳴くマヒワの声が冬鳥第一号。ヒガラ、コガラ、キクイタダキといった小さな鳥たちが、枯れ葉のように木々の間を飛び交っていました。紅葉は早いツタウルシは染まっていましたが、カエデ系は一枝程度でした。
 今日のメインは、キノコ類でした。いたるところにキノコが出ていていました。F会長がキノコに詳しいので、いろいろ教えていただきました。分かった名前だけでも挙げておくと、シイタケ、スギヒラタケ、ハナイグチ、アカハツタケ、シロハツタケ、ナラタケ、クリタケ、ムラサキシメジ、ハタケシメジ、ホウキタケ、ホコリタケ、ウスタケ、ニガクリタケ、クサウラベニタケなど。しばらく前に誤って売られてしまった毒のニガクリタケと食べられるクリタケは、同じようなところに生えていました。これは、間違えますね。 行者堂に戻ってきた時、シカのラッティングコールが聞こえました。オスシカの雄叫びですね。秋らしい音でした。

Tigonohaka

2010年10月16日 (土)

『探鳥見聞録』発行

 『14人のバードウォッチャーが語る探鳥見聞録』の見本が本日、届きました。
 バードウォッチングを極めたベテランのバードウォッチャーたちによるエッセイ集です。それぞれの野鳥に対するこだわりと取り組み、そして感動が伝わってきます。一口にバードウォッチングやバードウォッチャーと言っても、これだけ個性があり多様性があるのがわかります。初心者は見聞を広めるために、上級者は「あるある」と言いながら感動を共有できることと思います。
 本書を画策したのはスワロフスキーのTさん、彼自身こだわりのバードウォッチャーなのですから人選からテーマまで、こだわっています。ぜひ、ご一読ください。10月30日、発売予定です。
 私も書いています。
出版社:文踊社
定価;1400円+税
ISBNコード:978-4-904076-14-9

 下は、表紙の写真です。

Tantyuokennbun

2010年10月14日 (木)

思い出の神保町

 神田神保町のスズラン通り、三省堂の裏に「三慶商店」があります。私にとっては、初めて双眼鏡を手に入れた思い出の古道具屋なのです。写真は、今の店舗です。楽器関係の古道具屋になっています。

Sankei

 今では、店舗は1軒だけですが、昔は西側の角(現在は居酒屋)もお店で、こちらのほうが大きい店舗、カメラや双眼鏡もありました。路地を入って見えるガラスのショーケースには、何台もの双眼鏡が並んでいて、いつかこの双眼鏡が欲しいと眺めていたものです。鳥の本を探して古本屋街を歩いて見つけた古道具屋、高くて手の出ない双眼鏡が並んでいる三慶商店は、高級ブランドの並ぶブティックのように見えました。街には、まだ東京オリンピックの興奮と活気が残っていた時代の頃です。
 幸いなことに、父が高校の入学祝いに双眼鏡を買ってくれることになりました。それも三慶商店で。父はすでに亡くなってしまったので、今となってはどういう関係か分かりませんが、三慶商店の主人と父は知古の仲で、行くと近所のレストランからオムライスを取ってくれました。ですから、多少は負けてくれたもの思います。
 双眼鏡を買いに来たと言ったら主人が「競馬をするのか?」と言ったのも覚えています。当時は、双眼鏡の用途と言えば競馬鑑賞ぐらいしか思い付かなかったでしょう。バードウォッチングなんて言葉も知らなかった時ですから、私は「野鳥観察です。」と憮然と答えたと思います。
 当時は野鳥を見るための双眼鏡は何が良いかという情報はまったくなく、お店の主人が進めるままに大きな双眼鏡を買ってしまいました。たしかメーカー名は、テレスターという名前で7×45くらいのタイプでした。金額は覚えていませんが、5,000円くらいだったでしょうか。私の小遣いが1ヶ月500円の時代ですから、今ならば50,000円くらいになると思います。
 口径が大きい双眼鏡だったので、明るくて見やすかった印象があります。双眼鏡を手に入れて鳥を見ると、今まで不明種Aであったのかツグミであることがわかったり、コミミズクを見つけるなどし、どんどんこの世界にはまり込んでしまいました。
 ある意味、三慶商店で買った双眼鏡が私の人生を変えたことになります。そして、古本屋で買った野鳥の本が、それを増幅させたことになります。そんなことを思い出しながら、この通りを歩くと懐かしい気持ちと感謝の気持ちで、胸がいっぱいになりました。

2010年10月13日 (水)

細密画を楽しむ

 神保町を訪れると、つい昔を思い出して懐かしい思いに浸ってしまいます。
 カミさんには「中学生のときに都電で来ていたのだから」とつい自慢もしてしまいました。このレストランはまだある、あの名物書店が無くなっていると、街並みをチェックをしながらの道行きです。
 今日、この神保町に行ったのは三省堂の裏手にある文房堂で開催されているアート・オブ・ナチュラルヒストリー展が開かれているためです。知人の箕輪義隆さんや田中豊美さんのほか、8名の画家の方の作品がおよそ60点が展示されています。いずれも、細密画の作家の方たちです。細密画は、ただ緻密さに感嘆すれば良いですから、わかりやすい絵の鑑賞法です。私の場合、つい監修をしてしまいますので疲れる絵でもあります。
 今日の会場では、当番の田中さんにお会いできたほか、バーカービングのMさん、近くに職場のあるTさんも呼び出して、鑑賞させていただきました。
 いずれも、圧倒されるほどの細密画で、一見の価値はあります。お近くの方は、お立ち寄りいただければと思います。損はしませんよ。
 アート・オブ・ナチュラルヒストリー展Darwin Vient 4
 期間:2010年10月4日(月)~10月16日(土) 期間中無休
    10:00~18:30(最終日は17時まで)
 場所:文房堂ギャラリー
 東京都千代田区神田神保町 1-21-1文房堂ビル4F 

2010年10月12日 (火)

鳴かない白鳥-コブハクチョウの声

 昨日、我孫子駅から手賀沼のほとりを歩いて鳥の博物館に行きました。途中、カイツブリが鳴いたりモズの高鳴きを聞きながらの湖畔の道、木陰は気持ちが良いけれど日向はかなり暑かったですね。
 水の館あたりの公園は、人も多く賑わっていました。この時、池の方から聞いたことのない声が聞こえてきました。こんな声です。録音機はPCM-D1、かなり加工編集しています。

「mute_swan1010103.mp3」をダウンロード

 声の主は、コブハクチョウ。初めて聞く声です。コブハクチョウの英名はMute Swan、直訳すれば”消音白鳥”です。鳴かない白鳥というわけです。
 以前、公園の池にいるコブハクチョウの声を録ろうと1時間以上粘ったことがありますが、近づいた人への威嚇のときに「シャーッ」というような声を一声だしただけ、一瞬のことで録音のチャンスを逃し録れませんでした。蒲谷鶴彦先生もコブハクチョウの声は未収録で『野鳥大鑑』にも入っていません。それだけ、鳴かない鳥の声があっけなく録れてしまいました。
 しかし、よく見ると鳴いているコブハクチョウには、コブがありません。どうやら幼鳥のようです。見回すと、この鳥以外に5、6羽のコブハクチョウがいてほとんどが幼鳥でした。遠くで、鳴き合いながら泳いでいるのも幼鳥。幼鳥は、よく鳴くようです。
 この幼鳥の鳴き声にはいろいろあって、そのなかに「ミューッ」と聞こえる声があるのに気が付きました。ミューと鳴く白鳥でした。

2010年10月11日 (月)

悔しい講演会-鳥の博物館

 父から「先代の小せんは良かった。亡くなった三木助の芝浜は・・・」と聞かされるたびに悔しい思いをしました。もっと早く生まれてくるのだったと歯ぎしりをしたものです。
 同じようにバードウォッチングの先輩から「昔は良かった!」という話を聞くことほど、悔しい思いはありません。
 本日、千葉県我孫子市にある「鳥の博物館」で開かれた講演会に行ってきました。タイトルは「新浜グループのその時代」、演者はバードフォトアーカイブの塚本洋三さん(写真上)と岡田泰明さん(写真下)。ご両人とも私にとってはバードウォッチングの大先輩、古き良き時代のバードウォッチングを楽しんで来た方です。ですから「昔の東京湾には干潟が広がっていて、そこには多くのシギチドリたちが・・・」という話をたっぷり聞かされ、思いっきり悔しい思いをさせられた講演会でした。

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Okada

 お二方とも1950年代の話が中心で、私はまだ生まれたばかり、五つの時か、と年号が出てくるたびに思う話です。新浜は千葉県の江戸川本流と放水路にはさまれた海岸を言い、そこには広大な干潟と湿地が広がっていました。干潟には、マガンはもとよりサカツラガンの群れがいたのです。そして、識別の難しいと言われているシギやチドリの群れがたくさんいたのです。いかにして、遠くて警戒心の強いシギやチドリの名前を区別したか、塚本さんは往年のモノクロ写真。岡田さんは図鑑を並べての話でした。今日の話をうかがって改めて野鳥の識別の歴史を知りました。今、こうして野鳥の名前を識別できるのも先達たちのご苦労があったからこそです。いわば、先輩たちが残してくれた遺産です。
 今度は、私の世代が次の世代を悔しがらせる番です。悔しがらせるばかりではなく、残せるものはあるか・・・ 

2010年10月10日 (日)

謎のネコ缶

 夕方、出かけようと階段を下りていくと、4階の手すりにキャットフードの缶詰が置いてあるのに気が付きました。現場写真です。

Nekokan

 中はからっぽ、よく見ると少し繊維質のものが残っていましたが舐めたようにきれいになっています。最初は、マンションの住民がネコに餌付けを始めたのかと思いました。しかし、考えて見れば非常階段の4階までネコが登ってくるとは思えませんし、ネコにやるのならば下に置くのが普通です。
 そこで考えられるのは、ここをなわばりとしているハシブトガラスです。この階段あたりは、あの濡れ羽色のカラスのなわばりです。どこかで、ネコに餌付けしているキャットフードをしっけいして、このなわばりを見渡せる場所で優雅に食事をしたのかもしれません。
  カラスの調査をしていた時、ネコに餌付けしているのをよく見ました。そして、ネコの残りをカラスが食べていました。あるいは、給餌をしているお婆さんがいなくなるとカラスの天下となります。このネコへの餌付けが、カラスを増やしている可能性は大いにあります。ネコへの給餌も都市生態系の一つです。

2010年10月 9日 (土)

ボイスレコーダーの活躍

 今日のニュースで録音的に興味があったのは、大阪府警の警察官の暴言が録音されて訴えられた話です。これは、参考人でありながら厳しい取り調べを受けた人が、持っていたボイスレコーダーで録音し、その音源を証拠として訴えたものです。
 その暴言が、ニュースでは流されていたので聞いた方も多いことと思います。録音をしている者からすると、あまりにもきれいに録音されているので少し不思議に思いました。隠し撮りなのですから服か鞄に入っているはずで、そういったなかで録音するとどうしても音が籠もってしまいます。また、ポケットに入れておいたのならばガサガサという音が入っているはずです。まるで、ドラマのなかのセリフのようにきれいに録れているのは驚きました。よほど、うまく録音機を隠して録音したのでしょう。あるいは、ボイスレコーダーの性能が良いのでしょうか。
 さらに面白いのは、録音しているのを警察官に見つかり消去、しかし実はゴミ箱に入っているだけ。後ででリペアして、今回の訴えにつながったわけです。そのような機能がボイスレコーダーにはあるのですね。念のために、手元の録音機をチェックしたらYAHAMAのW24とC24にもありました。尋問のときには、これを持って行くことにします。
 ところでニュース映像をチェックしたところ、NNN(日本テレビ系)が東芝の VOICE BAR DMRシリーズのどれかで7年前の機種です。じつは、これにはゴミ箱機能はありません。記者かディレクターが持っている機種を適当に写したのでしょう。
 ところが、TBS(東京放送系)、ANN(テレビ朝日系)、FNN(フジテレビ系)が、いずれも三洋電機のXacti SOUND RECORDERシリーズのどれかで、これは最近の機種。ゴミ箱機能があります。どうやら、日テレを除く各社が映像として流したのは、実際に録音したボイスレコーダーのようです。三洋電機は、ボイスレコーダーの老舗的な存在ですから普及率も高く、このレコーダーが使われた可能性が高いのです。
 それにしても、ボイスレコーダーの機能は目覚ましいものがあります。警察に捕まった時のために1家に1台、いかがですか。

2010年10月 8日 (金)

カラスの濡れ羽色

 住んでいるマンションの階段から本郷通りの外灯にとまるハシブトガラスを撮影しました。上からのアングルのカラスは、珍しいので狙ってみたのです。

Largebilled_crow
 しかし、よく見るとなんてきれいなカラスでしょう。背中から翼が、紫色と緑色の金属光沢で輝いています。頭も緑色の光沢があります。まさに、カラスの濡れ羽色です。
 影を見てもらえるとわかりますが、曇りの状態での撮影です。太陽の光を浴びていないのに関わらず、この光沢が出ています。他のカラスを同じアングルで見ることがありますが、これほど輝いているカラスは初めてです。
 このカラスは、本郷通り沿いをなわばりにしているもので今年、侵入してきた者です。なわばりを確保したものの巣作りまで至りませんでした。なわばりを守るために、このソングポイントで良く鳴きます。きっと若い成鳥でしょう。もっとも美しい年齢なのかもしれません。

2010年10月 7日 (木)

秋のヒバリ-大久保農耕地

 ノビタキが気になって大久保農耕地に行ってきました。
 秋の渡りのノビタキは姿をよく見ますが、声は聞いたことがありません。どんな声で鳴くのか、探してみました。しかし、足元からキジの雄が飛び立ってびっくりしたり、土手の上にいると目の前、目の高さを飛ぶオオタカにガンを付けられたりしたもののノビタキはいません。今日は、ダメかと思った帰り道、やっと1羽が出現。しばらく観察していましたが、鳴くことはありませんでした。
 やはり鳴かないのかと思っていたら、空からにぎやかな声が聞こえてきました。なんとヒバリのさえずりです。秋にヒバリのさえずりを聞いたのは初めて、録音も初めてです。こんな声です。PCM-D1で録音、かなり加工編集しています。

「SkyLark10100702.mp3」をダウンロード

 録音は約1分、春ならば5、6分は鳴き続けるのに短めです。また声量も低く、風の音やノイズに紛れそうに鳴いていました。
 六義園仲間のK村さんが先週、やはり田んぼでヒバリが良くさえずっていたと教えてくれましたので、このシーズンでもヒバリがさえずることがあるようです。去年は同じ大久保農耕地で、ウグイスの秋のさえずりを聞き録音できました。このところ、秋のさえずりを聞いたり録音することがままあります。野鳥たちの秋のさえずりは、どんな意味があるのか気になります。

2010年10月 6日 (水)

11月の「朝の小鳥」は葛西

 文化放送のスタジオの日は、なぜか雨の日が多いのですが、今日は晴れ。ちょっともったいないくらいの晴れでした。
 本日収録した11月の放送内容は、東京都江戸川区にある葛西臨海公園の鳥たちです。季節外れのシジュウカラのさえずりからスズメのネグラ入りの声まで野鳥たちの初冬の声です。去年と一昨年、この季節にずんぶん葛西に通いましたので、その時の音源を使っています。シジュウカラのさえずりもびっくりするほど元気な声で晩秋らしくないのですが、事実として構成してみました。
 今日の打ち合わせでは、巣やネグラなど、専門用語の使い方で盛り上がりました。というのは、ネグラも巣と同じように何か構造物があって、鳥はそこで寝ていると思っている人がなぜ多いのかです。以前、講演会で「巣は産院のベットと同じ、巣立ってしまえば使うことはない」と説明した後、ネグラの話をしたら「ネグラはどんな形をしているのですか?」と質問されて戸惑ったことがあります。巣もネグラも、多くの人が人の家からイメージしているための混乱だと思っていました。
  今日の打ち合わせ目からウロコは、この混乱は飼い鳥にあるのではないかということ。というのは、ブンチョウやセキセイインコを飼うときに籠のなかに、藁で作った”巣”を入れますね。鳥は、ここで卵を産んだり、夜に眠ったりしています。多くの人はこれを見て、ネグラも巣も同じと思ってしまい、ネグラも巣のような構造物があって、そこで寝ていると思ってしまうのではないかと言うことでした。ですから、ネグラという言葉だけからでは、ただ木の枝にとまって寝ているいうイメージが伝わらないことになります。
 シナリオや原稿を書いていて難しいなあと思うのは、こうした巣、ねぐら、なわばり、さえずりなど、専門用語として定義されているにも関わらず国語として普及している言葉です。なじみの言葉だけに、つい説明を怠って使うと、こちらの意図が伝わらないばかりか誤解を招くことさえあるのです。
 最近、コマーシャルで良く出てくる”進化”もしかり。進化の定義をそのまま生かせば「イチローが進化した」と言ったら、身体の構造が変わり遺伝子が変化していなくてはならないことになるのです。
 いずれにしても、シナリオを練る作業はいつも勉強になります。
 11月の放送予定は、下記のとおりです。
   7日 シジュウカラ
 14日 ハクセキレイ
 21日 カイツブリ
 28日 スズメ

2010年10月 5日 (火)

ナメクジの音

 O村さんのブログ「生録。」で、なんとカタツムリの音の録音に成功した話が載っています。カタツムリの音と言ってもカタツムリが鳴くわけではありません。カタツムリが食事をする時に立てる音です。その貴重な音もアップされています。ぜひ、お聞きください。生物録音の極致ですね。
 実は、私はナメクジの食事の音を聞いたことがあります。高校時代、住んでいたところは平屋の都営住宅、4畳半があてがわれていました。父の本棚やミシン、勉強机があるので実質3畳ほどのスペースで寝ていました。
 ちょうど今頃、秋の夜長のシーズン。寝ていると「ベリベリ」あるいは「バリバリ」という音が聞こえて眼が覚めました。暗い部屋のなかで何の音がわからず、恐怖感が募ります。そうっと電気を点けて音のする方を見ると、なんと3cmほどのナメクジが1匹。畳の縁の黒い布の部分で音を立てていました。どうも畳の縁に含まれる糊を食べているようです。今回、O村さんが捉えたカタツムリが新聞紙を食べる音とよく似ています。音と音の間も、同じように記憶しています。
 昔は、家のなかにいろいろな生き物が紛れ込んできたものです。床下ではネコがお産をしたことがあります。毎年、天井裏にはスズメが巣を作っていました。ナメクジも風呂場から台所に良くいました。同居人がたくさんいたのです。それだけに生き物は身近な存在でしたし、彼らと緊張関係のなかで生活したことになります。こう言った生活のほうが、多くの生き物と地球を共有しているということが実感できました。
 O村さんのカタツムリの音から昔を思い出し、生き物との関係に思いを馳せることができました。

2010年10月 2日 (土)

モズのグゼリを録る-大久保農耕地

 天気の合間を縫っての取材が続いています。今日は、埼玉県さいたま市にある大久保農耕地にモズのグゼリを録りに行きました。
 あぜ道には、今年は半月ほど咲き始めるのが遅かったヒガンバナが満開、秋の田園風景のなかでの録音はとても気持ちの良いものでした。上空では、ツバメの群れが舞い、そのなかにはアマツバメが混じっていました。ときおり、ヒヨドリの渡りの群れが鳴きながら飛んでいきました。鳥たちもつかの間のお天気に忙しいそうです。
 モズのいるところは、去年の取材でだいたい見当がついていましたので、にぎやかな運動場からもっとも離れてているモズのなわばりに録音機をしかけました。モズのグゼリは、声量がないので、すこしでも近くで録音しなくてはなりません。そのため、下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦で、SONYのPCM-D50とPCM-M10、YAMAHAのW24の3台を鳴きそうなところに置いておきました。
 だいたい20分ほどの周期で、高鳴きをしたり、グゼリをしてくれました。面白いのは、高鳴きのポイントとグゼリをするところが違うのです。高鳴きは、木のてっぺんや電線の上ですが、グゼリは藪の中が多いのです。そのため、去年の高鳴きポイントを中心に録音機を置いておいたので、途中で場所を変えて設置しました。
 その結果、録れていたのがこの声です。PCM-M10で録音しています。かなり、加工編集しています。「ちょっと来い」の節がかすかにあります。

「bullheaded_shrike101002_03.mp3」をダウンロード

 ところで、グゼリは練習歌、さえずりの練習の歌、あるいはさえずりの未完成の声と解説されています。しかし、今日改めてモズの行動を見ると、すでに高鳴きをしっかりと行っているのですから練習歌の意味は、どう考えてもおかしいことになります。
 グゼリという語感から口のなかで「グチュグチュ」鳴くという印象があります。そのため、コサメビタキのさえずりもグゼリのように鳴くと表現されているのを読んだことがあります。ようするに、グゼリの「行動の意味=練習歌」と「行動の状態=グチュグチュ鳴く声」がいっしょになって混乱しているのです。そして、もっとも知られているモズのグゼリの意味は、解明されているとは思えません。

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