思い出の神保町
神田神保町のスズラン通り、三省堂の裏に「三慶商店」があります。私にとっては、初めて双眼鏡を手に入れた思い出の古道具屋なのです。写真は、今の店舗です。楽器関係の古道具屋になっています。
今では、店舗は1軒だけですが、昔は西側の角(現在は居酒屋)もお店で、こちらのほうが大きい店舗、カメラや双眼鏡もありました。路地を入って見えるガラスのショーケースには、何台もの双眼鏡が並んでいて、いつかこの双眼鏡が欲しいと眺めていたものです。鳥の本を探して古本屋街を歩いて見つけた古道具屋、高くて手の出ない双眼鏡が並んでいる三慶商店は、高級ブランドの並ぶブティックのように見えました。街には、まだ東京オリンピックの興奮と活気が残っていた時代の頃です。
幸いなことに、父が高校の入学祝いに双眼鏡を買ってくれることになりました。それも三慶商店で。父はすでに亡くなってしまったので、今となってはどういう関係か分かりませんが、三慶商店の主人と父は知古の仲で、行くと近所のレストランからオムライスを取ってくれました。ですから、多少は負けてくれたもの思います。
双眼鏡を買いに来たと言ったら主人が「競馬をするのか?」と言ったのも覚えています。当時は、双眼鏡の用途と言えば競馬鑑賞ぐらいしか思い付かなかったでしょう。バードウォッチングなんて言葉も知らなかった時ですから、私は「野鳥観察です。」と憮然と答えたと思います。
当時は野鳥を見るための双眼鏡は何が良いかという情報はまったくなく、お店の主人が進めるままに大きな双眼鏡を買ってしまいました。たしかメーカー名は、テレスターという名前で7×45くらいのタイプでした。金額は覚えていませんが、5,000円くらいだったでしょうか。私の小遣いが1ヶ月500円の時代ですから、今ならば50,000円くらいになると思います。
口径が大きい双眼鏡だったので、明るくて見やすかった印象があります。双眼鏡を手に入れて鳥を見ると、今まで不明種Aであったのかツグミであることがわかったり、コミミズクを見つけるなどし、どんどんこの世界にはまり込んでしまいました。
ある意味、三慶商店で買った双眼鏡が私の人生を変えたことになります。そして、古本屋で買った野鳥の本が、それを増幅させたことになります。そんなことを思い出しながら、この通りを歩くと懐かしい気持ちと感謝の気持ちで、胸がいっぱいになりました。
« 細密画を楽しむ | トップページ | 『探鳥見聞録』発行 »
「徒然」カテゴリの記事
- Syrinx本編を終了いたしますー予告(2023.08.17)
- 大浜清さん・追悼(2023.06.26)
- ブログを休載いたします(2023.06.05)
- 迷彩のジャマーが欲しい(2023.05.29)
- 細尾菜を食べる-日光(2023.05.15)
コメント