枯れ野を楽しむ-日光戦場ヶ原
この間の日曜日は、日光野鳥研究会の自然観察会で戦場ヶ原に行きました。
この季節としては暖かく、絶好のコンディション。戦場ヶ原は、初冬の青空のもと草原はキツネ色に染まり、このシーズンならではの風景が広がっていました。鳥影は少なめでしたが、気持ちの良いバードウォッチングを楽しめました。
この戦場ヶ原を歩きながら、江戸時代に「枯れ野」を歩くという花鳥風月を楽しみがあったことを思い出しました。今も残る花見や雪見、紅葉狩りと言った季節を楽しむイベントと同じように枯れ野があったです。枯れ野があると知ったのは、『江戸名所花暦』を読んだときでした。江戸の花鳥風月のガイドブックとも言える『江戸名所花暦』によれば、枯れ野の名所は雑司ヶ谷から落合など。この本の「枯れ野」の項の挿し絵には、野道を歩く大店の女将さんと使用人らしい人物が描かれ、遠景にはタンチョウらしいツルが2羽佇んでいます。
晩秋から初冬の何もない枯れた野原を歩く。いったい何が楽しいのか、最初は不思議に思いました。しかし、侘び寂びというキーワードから見たら、枯れ野こそ日本人の自然への思いを知ることができるイベントではないかと思いました。いわば日本人の自然観を解く、キーワードの一つが枯れ野かもしれません。
現在では、平地の草原は少なくなりましたから、今となってはほんとうの枯れ野を楽しむことは難しいでしょう。ただ今頃の戦場ヶ原を歩けば、枯れた草原がどこまでも広がり、澄んだ青空はどこまでも高く、そして小鳥のささやきが聞こえて来るなかを歩くことができます。江戸時代の風流人が楽しんだ枯れ野はおそらくこんな感じだったと、その片鱗を体験することができます。そして「いったい何が楽しいのか」と思った自分が無風流な人間であったが思い知られされました。
日曜日の戦場ヶ原では、珍鳥を求めて急ぎ足で歩くバードウォッチャーに何人か会いました。きっと、この風景を楽しむことなく戦場ヶ原を後にすることでしょう。野暮なバードウォッチングでなく粋で風流に自然を楽しんで欲しいものです。
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