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2010年12月 6日 (月)

怖い話-あるいは宮古島の珍鳥

 今日、カラス関連のメーリングリストでの話題です。まず、下記URLの宮古毎日新聞の報道を見てください。
   http://www.miyakomainichi.com/2010/11/9597/
 沖縄県宮古島でハシボソガラスが初めて記録されたという内容です。ハシボソガラスは日本では、九州から北に分布しています。希れに沖縄島で記録されているていどで、より南の宮古島では記録がない鳥、珍鳥ということになります。当たり前の鳥でも、ずいぶん地方によって異なるものです。
 ところが、このハシボソガラスの写真を良く見てください。どうもミヤマガラスではないかと話題になっています。私も写真を見て、嘴が尖っていること、体つきもシャープなことでミヤマガラスではないかと思いました。案の定、ミヤマガラスを追いかけているバードリサーチのT木さんから「ミヤマガラスの若鳥に見える」とコメントがありました。若鳥まで分かるとはさすがです。
 私はハシブトガラス専門、ハシボソガラスはもとよりミヤマガラスとなると心許ないので静観しておりましたが、その後おおかたの意見はミヤマガラスに傾いています。皆さんは、ご覧になっていかがでしょうか。
 私が困ったなあと思ったのは「野鳥研究の権威組織である山階鳥類研究所(千葉県)に鑑定を依頼した。9日、研究所が『ハシボソガラスに間違いない』と同定した」という記事の内容です。誰が同定したのかわかりませんが、後輩や知人が多いだけに、ご同情申し上げます。
 私自身も、この手の鑑定依頼をときおり受けますので、これは怖い話です。だいたい新聞社やTV局からの問い合わせは、まず時間がありません。すぐに答えて欲しいというものです。それもはっきりしない映像や写真を見せられることもあります。ぼけぼけのFAXの写真で、日本野鳥の会では他の職員が間違ったことがあります。
 また、会員からの問い合わせでは、珍しい鳥であって欲しいという願望のもと、たずねてきます。何枚かある写真でも、もっともそれらしい写真を見せられて「○○ですよね」と聞かれれば、つい「○○です」と言ってしまいます。同じく日本野鳥の会で、このパターンで誤認したことがあります。このような場合、「だと思います」や「可能性があります」といっても「~だ」になってしまう怖さもあります。
 ですので、今回の判断もどのような状況で、どのような資料で判断したのか、またどのように答えたのか分からない以上、いちがいに山階鳥類研究所を責めることはできません。それに、このようなマスコミからの問い合わせはノーギャラであることが多いことも書き添えておきます。
 それにしても、宮古島ではハシボソガラスの記録がないということを知っている本土のバードウォッチャーがどれだけいるでしょうか。もし、見つけてもなんだカラスかで、見過ごしてしまっていることでしょう。それも怖い話ですね。

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コメント

先月から、さいたま市から群馬県邑楽郡大泉町に事務所を移し、毎朝さいたまから2時間かけて通っております。近くの板倉町で、ミヤマガラスをよく観察する機会に恵まれました。

電線などにとまっている時には頭頂部が平らで分かりやすいのですが、地上に降りたり、柿の実を食べたりする時には丸みを帯びますので、ハシボソガラスとの差異は遠くからは非常に分かりづらいです。

http://www.cec-web.co.jp/siragiku/shira10-53/pages/cmiyamagarasu.html

ご紹介された写真は、ミヤマガラスをあまり見ない方であれば、まずハシボソガラスといわれるでしょう。ここ板倉町ですと、ちょっと考えさせてということになります。

新聞の写真は、ミヤマガラスの若鳥だと思います(頭頂部から嘴基部、先端のラインが滑らかです)が、決定的なのは、声です。どうか、板倉町の数百羽のミヤマガラスの録音においで下さい。また、大きさと採餌の方法がまるで異なります。静止状態の単独写真では判断が困難ですね。1年前後の若鳥は上嘴基部の本来露出部に羽毛があり、ハシボソそっくりです。ただ、それ以前の幼鳥ミヤマガラスの脚には、後ろの部分に黄色味があると観察してきております。


面白いことに板倉町のミヤマガラスは、ハシボソガラスとは一緒にいることがなく、ハシブトガラスが時々1,2羽まぎれています。

石渡様
 長距離通勤、お疲れ様です。しかし、転んでもただでは起きない、しっかりと野鳥をたのしんでおられるのはさすがですね。
 コメントありがとうございます。
>幼鳥ミヤマガラスの脚には、後ろの部分に黄色味があると観察してきております・
 このことは知りませんでした。今後の観察ポイントとさせていただきます。 
 かつて、ミヤマガラスは九州にいかなくては、見られない珍鳥でしたが、関東でもあたりまえになってしまいましたね。まだ、都心には入ってきていませんが、いずれネグラに集まってくるかもしれません。どうやって侵入してくるか、気にしています。
 ミヤマガラスの声は、単なるしゃがれ声ではなく、深みのあるしゃがれ声で好きです。1羽で鳴けば、わびしさを感じます。
 宮古島の記録も写真だけではなく録音もしていれば、議論にならずに済んだと思います。

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