出水のツルに鳥インフルエンザ
昨日、文化放送で番組収録後、以前『朝の小鳥』でシナリオを読んでいた高橋小枝子さんがスタジオに顔を見せ「出水のナベヅルの鳥インフルエンザの件でインタビューを」ということで、コメントを求められました。今日の朝と夜のニュースで、流れていると思います。
出水のツル類渡来地で鳥インフルエンザが蔓延したらどうなるは、以前から警鐘が鳴らされていました。しかし、今まで対策らしい対策は講じられてきませんでした。
まず問題はツル類の集中化です。写真は、5年前に出水に行った時の写真です。給餌場に集まったマナヅルとナベヅルです。どう見ても、自然なツルの生態とは思えない風景です。
集中するツル類を分散させるために行われた対策では、伊万里の水田にツルのデコイを置き、そこでツルの声を流しての誘致作戦があります。私もこの音源を提供することで協力いたしました。1万羽以上もいるのですからすぐに数千羽程度は舞い降りるのではないかと思いましたが、残念ながら数羽程度の誘致しかできませんでした。歴史的に長い給餌を行っている出水の魅力には勝てないのでしょう。今や保護から観光目的となった出水の給餌をやめない限り、ツル類の分散化は難しいものがあったのです。
では、今からどうしたら良いのでしょうか。
ひとつは、出水の給餌をただちに止めて物理的に追い払い強制的に分散させる作戦です。給餌とととも出水に集まるのは、狩猟を避けていることもあります。そのため九州全域と行くであろう四国を全面禁猟にして受け入れ体制を作らなくてはなりません。こうして、少しでも感染を逃れた群れの生き残りをはかる方法です。この分散作戦の問題は、感染したツルを拡散させてしまうことになり、さらに他の野鳥への感性と広がっていく恐れがあります。
もうひとつは、このまま給餌を続け留め置いておき感染は出水のツル類でとどめる方法です。その結果、すべてのツル類が感染し、激減する可能性があります。とくにナベヅルは、この出水に集まる群が世界の7~8割と言われていますから絶滅してしまう可能性が極めて高くなります。
さあどちらが良いでしょうか。これは、究極の選択です。
ウィルスや細菌と戦う海外テレビドラマ”Re:Genesis”の主人公デビッド・サンドストロム博士ならばどう考えるでしょうか。おそらく前者ですね。分散化して少しでもツル類を生き残させるという方向に行くでしょう。いつものエピソードのように行政や世論と戦いながら艱難辛苦を乗り越えて少しでも多くのツルたちの命を救うということになると思います。
しかし、日本の現状を見ると、このまま思い切ったことはしないでズルズルと給餌を続け、すべてを失ってしまうことになりかねません。
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