オオコノハズクの課題
皆さまのおかげで謎の木魚鳥がオオコノハズクであろうという見通しが付きました。
では、私が三宅島で録音したオオコノハズクとの声の違いは、何なのでしょう。まず、その声をお聞きください。
「japanese_scopsowl070528002.mp3」をダウンロード
「キャン、キャン」と聞こえる声です。まるで小型犬の鳴き声のように甲高く聞こえます。はじめ大路池で聞いた時は、イヌが遠くで鳴いているのだと思ったほどです。
木魚鳥とされた声は、100~250Hzとたいへん低い声です。それに対して三宅島のオオコノハズクは、400~650Hzと800~1200Hzという高めの2つの音が重なっています。そのため、単純な節なのですが深みのある音に聞こえます。この声紋のパターンは、下記の論文でも掲載されていますので、これがオオコノハズクであることは間違いないのです。下記URLで読むことができます。
この論文のタイトルは「日本にすむオオコノハズクの鳴き声について」となっていますが、実際は三宅島のオオコノハズクの声についての報告です。
つぎに”三宅島のオオコノハズクは木魚鳴きをしないのか”という疑問が生じます。さっそく、元三宅島のアカコッコ館のレンジャーであったY本さんに聞いてみました。すぐにご返事をいただきましたが、返事は意外なものでした。
「三宅島で繁殖期に聞いた声は、今回添付いただいた周波数の高い声(注:上にアップした音源)で、木魚鳥のような低い声は聞いたことがありません。」
三宅島では、木魚鳴きをするオオコノハズクの声は聞いたことがないというのです。Y本さんによれば、冬は個体数が増えるので本州から渡ってくるものがいることが予想できるのにかかわらずです。
三宅島はY本さんのような方がいらっしゃるので話が早いのですが、本州で三宅島のように「キャンキャン」鳴くオオコノハズクがいないという確認ができれば面白いことになります。
この鳴き声の違いは何なのでしょう。島と本土との違いならば、上田秀雄さんの『野鳥の声283』に収録されている木魚鳴きしている音源は長崎県対馬での録音ですから該当しません。
それとも本土と三宅島では亜種が異なり、鳴き声に差異が生じているのでしょうか。今までの分類は剥製主義です。姿形の違いを根拠に分類をしてきました。そのため、トラツグミとオオトラツグミ、コノハズクとリュウキュウコノハズク、メボソムシクイ3亜種などは鳴き声が異なることから種の検討が行われ、種として認められる方向性が見いだされました。
もし、三宅島のオオコノハズクと本土のオオコノハズクの鳴き声がこれだけ違うのであれば、検討すべき課題と言えるでしょう。
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