謎の木魚鳥
一昨年の6月、A部夫妻・義弟と連れだって群馬県黒滝山に行きました。道すがらA部旦那から「去年行った時に、お寺の和尚さんが木魚鳥が鳴いていると言っていた」との情報。何でも、木魚を叩く音に似た声で鳴く鳥がいるというのです。運の良いことに黒滝山を登ると和尚さんに出会い話を聞くことができました。和尚さんの話では、やはり木魚のように鳴く鳥がいるとのこと。「今年は檀家総代の方が亡くなったのだが、その晩はことのほかよく鳴いた。これも何かの因縁・・・」など、興味深い話をしてくれました。和尚さんの話を総合すると、木魚鳥は夜に鳴く。5月に鳴き始める。森のなかで鳴く。フクロウではないということになります。ではミゾゴイかと思い、携帯電話に入っている声を聞いたもらいましたが、これではないとのこと。それではいったい何なのか「もし鳴いたら連絡をください」と名刺を渡したものの去年は、連絡はありませんでした。
また、南牧村役場のWebサイトの黒瀧山不動寺のページには「黒瀧山の三霊鳥といわれる仏法僧、木魚鳥、慈悲心鳥の鳴く声が響き」とあり、木魚鳥は地元では知られている鳥になっています。また、黒瀧山不動寺の解説で「『ポクポク』と木魚のような音で鳴く木魚鳥(ツツドリ)」と書かれたWebサイトもありますが、ツツドリは夜鳴かないので和尚さんの話とは異なります。
ところが去年、日光の自然仲間のE村さんから「栃木県日光市湯西川の山奥に一晩おきっぱなしにした録音機に聞いたことのない声が入っていた、その声が木魚のように聞こえるのでこれは木魚鳥ではないか」と情報をいただきました。そして、聞くと確かに木魚のように聞こえます。今まで、私が聞いたことのない声です。今回、E村さんのサイトにその声がアップされましたので、皆さまにも聞きていただきたいと思い記事としました。合わせて、ご意見をいただければと思います。
下記URLで、SOUND→不明種→「5/ 16 2010 3:28日光市湯西川」で聞いてください。なお、録音はバイノーラル録音ですからヘッドフォーンで聞くと良いでしょう。
http://nikkotoday.com/
どうでしょうか。木魚のように聞こえませんか。
まず、鳥の声でしょうか。鳥の声だとすると何でしょう。
黒滝山の標高が870m、日光が約1000mですから、さほど違いのない高さです。また、植生は広葉樹とスギの人工林が入り交じった環境、渓流があり、どちらも比較的湿った森です。そして、時期もどちらも初夏です。時刻は、夜。E村さんの録音では、他の鳥は鳴いていません。
関東地方で、夜鳴く鳥となるとフクロウ類、ミゾゴイ、ヨタカ、トラツグミと限られています。低い声で繰り返して鳴くというとミゾゴイなのですが、ミゾゴイの鳴き声のバリエーションのなかにこのような声があるのでしょうか。『野鳥大鑑鳴き声420』に収録されている典型的なミゾゴイの声は200~400Hz。木魚鳥は、100~250Hzとより低い声です。鳥の鳴き声でもっとも低いのはサンカノゴイですが、100~400Hzですから、これより低い声となります。
いったい木魚鳥は、何でしょう。そもそも鳥なのでしょうか。謎解きのはじまりです。
« ブログ開設1年 | トップページ | キガシラシトドのさえずり録音成功 »
「観察記録」カテゴリの記事
- 8月の尾瀬ヶ原(2024.08.28)
- 六義園でヤマガラ繁殖(2024.08.18)
- オオセッカのお話(2024.08.07)
- ツミとオナガの関係は?(2024.07.28)
- 日光 白根山のルリビタキ(2024.07.17)
「考証」カテゴリの記事
- 地震の時に謎の声ー六義園(2023.05.11)
- サブソングはコルリかも-訂正(2023.04.07)
- オオダイサギの鳴き声-芝川第一調節池(2023.02.01)
- 黒田長久さんのことーその5(2023.01.11)
- 黒田長久さんのことーその4(2023.01.10)
まつ様 こんばんは
未だ生で聞いた事はありませんが
オオコノハズクの声かなと思われます
夜中、山の中で
この声が聞えると気味が悪いですね。
投稿: kochan | 2011年3月24日 (木) 22時29分
この声は5月~6月によく聞かれ、オオコノハズクの多様な声の一つだと思っています。
この声で鳴きながら飛んでいるのを見たこともあります。
投稿: 地下木 | 2011年3月24日 (木) 23時06分
kochan様
地下木様
さっそくの情報、ありがとうございます。このほかにもTさんからメールをいただくなど、反応の早さに驚いています。
消去法でオオコノハズクも考えたのですが、私が三宅島で録音した声とはまったく違うこと、声の高さが1000Hzまであることで疑問のままになっていました。ただ、声のバリエーションの多い鳥ですので、可能性はあると思っています。
また、Tさんからは下記サイトにオオコノハズクとして、同様の声がアップされているとの情報をいただきました。
該当ページ
http://infotori.web.fc2.com/index.html
ホーム
http://members.jcom.home.ne.jp/jijibaba/
この声をどうしてオオコノハズクとしたか不明ですが、ここ1年近くこのサイトは更新されていないのでおたずねしにくいところです。
今のところ、地下木さんの”見た”が、かなり強力な傍証です。とにかく、私自身、生で聞かなくてはと思っております。
投稿: まつ | 2011年3月25日 (金) 18時13分
まつ様 こんばんは
アオバズクやフクロウは月明かりや
街灯の灯りで、電線 電柱やアンテナに止まって鳴いているのを確認できる事があるのですが
オオコノハズクは林の中で鳴いているので、なかなか確認するのは困難かと思います、木魚音で鳴いている姿を確認したいですね。
地下木様の 鳴きながら飛んでいる
のを確認したと言うのは凄いです。
フクロウ類が警戒声以外に
飛びながら鳴くと言うのは
今まで見たこと無かったので、良い情報をいただきました。
投稿: kochan | 2011年3月25日 (金) 19時25分
灯台もと暗し。上田秀雄さんの『野鳥声283』のオオコノハズクは、近いです。E村さんのものに比較してテンポが速いのですが、似ています。音域は100~250Hzくらいにありますので、音域に関しては一致しています。
私が三宅島で録音したオオコノハズクは、800~1200Hzに音があります。このバリエーションの違いがまた課題となりますね。
投稿: まつ | 2011年3月25日 (金) 20時28分