続・尾の両側が白いアカハラ
イラストレイターのM輪さんから、先日の「尾の両側が白いアカハラ」の記事についてメールをいただきました。M輪さんによれば、
「山階図鑑を見たところ、(アカハラ)雄成鳥について『最外側尾羽の内弁の先には狭き灰白色の縁を有するもの多きも、これ無きものもある』、と書かれています。雌成鳥については『外側尾羽の内弁の先端の灰白色斑はこれ無きものの方が多い』とあり、雄とはちょっとニュアンスが違うようにも読めます。いずれにしても、外側尾羽の内弁先端に『灰白色の斑』を持つ個体がいるようです。」
とのこと。アカハラの尾の両側に白い部分があることは、すでに事実として記載されていました。さすが山階芳麿先生です。困った時の山階図鑑です。それに尾に白い部分があるのは、雄に多く雌は少ないというところまでわかっていたのです。
そして、さらにM輪さんは、
「たまたま、千葉中央博物館に行った折、標本を見る機会がありました。アカハラをざっと見たところ、2個体について『灰白色の斑』を確認できました。上面はコントラストもあって、白く見えます(下面は分かりづらいです)。」
と、標本によるチェックもしていただきました。おかげで、アカハラの尾に白斑があることは珍しいことでないことわかりました。お忙しいなか、お調べいただきありがとうございました。
私が、シロハラの”尾の両側は白い”と強く印象を持っているのは『フィールドガイド日本の野鳥』のおかげです。このシロハラの絵には、尾の両側が明確に白く描かれています。そのため、この白斑の有無がアカハラとシロハラの識別のポイントひとつと理解してしまったのです。思い込みとは恐ろしいもので、探鳥会の解説も調査のおりの識別ポイントもこれでやってきていました。
しかし、実際に白い部分はもっとも外側の羽の内側であるために尾を広げないと見えない特徴です。今日、六義園で撮影したシロハラの写真です。尾を閉じていると白い部分は見えません。図鑑の絵のようには、白い部分が目立たないです。
念のために、尾の両側が白かったアカハラの同じようなアングルもあげておきます。
どちらも種類も、後ろから見ただけでは尾に特徴はでないことがわかります。ロシアの図鑑では、アカハラ、シロハラ、マミチャジナイは同じ種として扱われ亜種関係とされています。それだけに中間の模様のものがいてもおかしくありません。これからは、お腹の色を見ない限り軽々に判断しないようにいたします。
そして、今度は逆に尾に白斑のないシロハラがいるのか気になります。
M輪さん、貴重な情報ありがとうございました。お礼申し上げます。
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ロシアの図鑑のお話興味深く拝見しました。カラ類の混群やツグミ類の混群はありますが、ホオジロ類の混群は見たことがありません。
カラ類の混群は餌場の場所や採り方をずらして譲り合っているのに、奥日光で渡りの時に観察するマミチャジナイ、シロハラ、アカハラ、ツグミの混群は同じ餌を同時に採っています。
またアカハラとシロハラは越冬地の餌場が同じで大きさも同じ、警戒音まで同じというのはどういうことでしょうか?
でも交雑はないですよね。
それとツグミの個体変異(羽の色など)は多すぎると思うのですが、いかがでしょうか?
日頃観察してとりとめもなく思っています。
投稿: つな | 2011年3月21日 (月) 13時47分
つな様
分類については、これからDNAで調べられて行くと思いますので、いろいろ変わると思います。今話題にしていることが、将来には解明されるかもしれませんね。
亜種は繁殖地の分布が違うことが要素の一つになると思います。別亜種が越冬地ではいっしょにいることはあると思います。
ツグミの個体差も気になる課題ですね。最近、模様ばかりではなく大きさが極端に違うものがいて、注意して見ているようにしています。これも繁殖地で、どのように分かれているのか、わかるとおもしろいのですね。
投稿: まつ | 2011年3月21日 (月) 14時25分
まつ様 こんにちは。
この記事を拝見しまして、早速アカハラの画像探しました。
尾の両側が白い個体も見つかりました。
尾羽の表側は解説どおり、外側尾羽の内弁の先端の灰白色斑が良くわかり、裏側は全体的に白いのがわかりました。
個体によっては違うかもしれませんね。
まつ様のこの記事、今日の私のブログにも便乗させていただきました。
投稿: kochan | 2011年3月21日 (月) 15時46分
きっと、この記事を拝見しなければ一生気付かずにいた事でしょう
ありがとうございました。
投稿: kochan | 2011年3月21日 (月) 16時15分
kochan様
私も自分の写真や画像検索をして数100枚のアカハラの写真を調べましたが、良いアングルがなく見つけることはできませんでした。
このアカハラの白斑は小さく見えますが、暗い森のなかで広がるとかなり目立つのではないかとおもいました。
じつのところ、これに気がついた時はショックでした。私だけが知らなかったらどうしようと思ったのです。kochanさんも鳥歴はかなりと思います。その kochanさんもご存じなかったのですから、知らなかったのが私だけでなくてほっとしています。
このような思い込みが、いくらでもあるでしょうね。
投稿: まつ | 2011年3月21日 (月) 17時00分
まつ様 早速返信ありがとうございます。シロハラ、アカハラ、マミチャジナイ、ツグミがなわばり争いをしたらどんな順位になると思われますか?
投稿: つな | 2011年3月21日 (月) 20時15分
つな様
難しい質問ですね。シロハラ、アカハラ、ツグミは、追いかけ合いを見たことがありますが、マミチャジナイは少ない鳥なので見たことがないのでなんとも言えません。
力の差は大きさですが、個体差の多い種類なので、ケースバイケースではないでしょうか。
また、いずれの場合も、冬なわばりに対する執着の強さ(渡来初期で縄張りを守ろうとする意欲が強いなど)、あるはお腹が空いていて食べ物を確保したいという気持ちの強い個体が、結果として勝つのではないかと思いますが、いかがでしょう。
投稿: まつ | 2011年3月22日 (火) 08時52分
まつ様 お忙しいところご回答ありがとうございます。改めてツグミの仲間の面白さを見つけたよな気持ちです。
尾羽の両側の白斑と併せて観察に勤しみたいと思います。
投稿: つな | 2011年3月22日 (火) 17時57分