メボソムシクイ3亜種は別種
鳴き声に関わる者としてずうっと気になっていたのは、メボソムシクイとその亜種との関係です。「ジジロ」と鳴くのは多くの図鑑に書いてあるような亜種コメボソムシクイではなく、千島カムチャッカに分布するオオムシクイであるというのは、もう通説になったといっても良いでしょう。
その決定打となったのはDNAから取り組んで来た山階鳥類研究所の齋藤武馬さんのご研究です。これについては、経緯を含めて拙ブログ「うれしいニュース」で記事にしています。
このたび、この齋藤さんから新しい論文が発表されたと、またまたうれしいニュースをいただきました。スウェーデンの研究者Per Alstromと齋藤さんらの共著論文がIBISに採用されたとのことです。IBISはイギリスの学会誌で鳥の世界では、もっとも権威のある雑誌です。
これまでの種メボソムシクイPhylloscopus borealisは、いくつかの亜種に分けられていましたが、3つの種であるという内容です。すなわち、Arctic Warbler/ P. borealis(旧亜種コメボソムシクイ)、Kamchatka Leaf Warber/P. examinandus (旧亜種オオムシクイ)、Japanese Leaf Warbler/P. xanthodryas(旧亜種メボソムシクイ)となります。これまで、亜種レベルとしていたものを種として扱うべきだという内容です。その論拠になったのはDNAと鳴き声の声紋です。実は、私が日光で録音したメボソムシクイの声紋もこの論文に掲載されています。私の名前がIBISに載るなんてなんともうれしいかぎりです。
なお、齋藤さんからは「種和名は現在検討中ですが、従来のものにあまり変更を加えないようにと考えています。和名については、現在それをまとめた論文を執筆中です」とのこと。まだまだメボソムシクイの研究は続いているようです。
なお、論文タイトルは下記です。
PER ALSTROM, TAKEMA SAITOH, DAWN WILLIAMS, ISAO NISHIUMI, YOSHIMITSU SHIGETA, KEISUKE UEDA, MARTIN IRESTEDT, MATS BJORKLUND & URBA NOLSSON 2011 TheArcticWarblerPhylloscopusborealis–three ancientlyseparatedcrypticspeciesrevealed.Ibis,153,395–41
IBISのWebサイトで要約を読むことができます。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1474-919X.2011.01116.x/abstract
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