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2012年3月13日 (火)

今日は上機嫌-『満州鳥類原色大図鑑』を入手

 今日は、とても機嫌が良いのです。なんと『満州鳥類原色大図鑑』(水野馨・1940)を入手することができたからです。このところ、図鑑の歴史の話をする機会がありましたので、いろいろ調べていると『満州鳥類原色大図鑑』が幻の図鑑であることがわかりました。この本は、まず市場に出ることはありません。少なくとも私は古書店の棚に並んでいるのを見たことはありません。専門の古書店のカタログに載ることはありますが、とても高価です。そのため、装丁はもとより内容が不明でした。そのあこがれの本を入手できたのですから、今日は上機嫌なのです。
Mansyuzukan

 実際に手にしてみて、凄い本であることがわかりました。429種が収録され、A4変形版323ページの大著です。タイトルどおり鳥の図版は、すべてカラー。当時、オールカラーの図鑑は黒田図鑑のみ。それだけに、レイアウトや造りは6年前に出版された黒田図鑑に良く似ています。そして、戦前に出版された黒田、山階、内田の大図鑑に次ぐ規模の図鑑となります。
 著者の水野馨については、よくわかりません。1960年代の『野鳥』誌に毎月、ロシア(当時ソビエト)の鳥の分布図を載せていた方だと思うのですが、これは記憶です。
 絵は、松永南楽となっていますが、他の鳥の絵は知りません。ググると、鹿児島県の高校の校長室に彼が書いた鳥瞰図が残っているので、画家であることは間違いないようです。気になったのは、これだけの大著でありながら小林重三の絵ではないのです。私の持論、小林重三は戦前は貴族の仕事しかしなかった、平民は使えなかったことがここでも立証されました。
 それにしても、太平洋戦争が始まる前の年に、よくこれだけの本が出版されたものです。その答えは、前書きと奥付にありました。前書きに「満鉄奨学資金財団」の援助を得たとあり、奥付にも同様に書かれています。要するに満州鉄道が援助したことで、この本の出版が可能になったのです。当時の満州鉄道は、今のJRどころではない大企業です。たとえば、満鉄の病院の装備は本土より良かったと言われています。当時の最新技術の粋が集まっていた王国です。この大企業の株を山階家や黒田家は所有していました。敗戦後、満鉄株は紙切れになってしまい両家とも経済的に窮地に陥ったと言われています。なんとも、歴史の皮肉がここにもあります。
 感動したのは水野の前書き、「余は渡満以来十年の間、鳥類の蒐集研究に従事し來つた。時には討伐隊に加わりて先人未踏の地を往き降るが如き匪弾を犯し、時には山頂の寒寺に山僧と狼聲に脅え、或いは又、人跡稀なる原野に一二の苦力と起居を共にし」と書かれています。なんと、この図鑑の制作には命をかけた記録が収録されているのです。現在では、想像もできない図鑑作りが日本の野鳥史のなかにあったのです。

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コメント

素晴らしい図鑑の入手、大変おめでとうございます。戦火間近の時期に、野鳥観察を続けられた先人に敬意を払いたいと思いますし、江戸時代の野鳥観察事情にお詳しい方の手元に入られたことは、大変素晴らしいことと思います。

滝沢馬琴が野鳥飼養のスペシャリストであったことは周知のことですが、南総里見八犬伝に出てくる野鳥を全部確認しようと、ネットで購入しましたが、大失敗。届けられたのは、子供向けの「全巻」。鳥が少しも出てきませんでした。笑うに笑えないネットでの書籍購入の大失敗でした。

石渡様
 本との出会いも野鳥と同じで、一期一会だと思います。
 私も八犬伝は、読みたいと思っています。いろいろなバージョンがあるのですね。私も買うときに注意いたします。

まつ様
 こんばんは、超貴重本の入手おめでとうございます。図鑑名でネットでググっても まつ様のブログに戻って来るだけです。 満州の鳥が429種も図解で書かれているとはすごい図鑑ですね、それも初めて聞く名前の著者と画家です。
まつ様も書かれているように、こんな時代によくこんな図鑑ができたと思います。
 大変苦労してできた図鑑なのに発行部数が少ないと言うのは製作者側からしてみれば残念でしょうね。

すごい図鑑があるものですね。存在そのものを私は知りませんでした。

古本屋さんをじっくり見ていても見つかるものではなさそうですし、こういう本との出会いの喜びは、ネット書籍になってしまったら、味わえないものでしょう。。。

やはり紙媒体で残す意義を強く感じます

ヒヨ吉様
 先日は、お会いできて幸いでした。
 私が以前、購入した東南アジアのCD-ROMの図鑑はWindow7では、動きませんでした。かつてMS-DOSの時代にCD-ROMの図鑑を作りましたが、いつまで使えるのでしょう。
 やはり紙媒体は、永遠ですね。

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