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2012年4月

2012年4月30日 (月)

夜の干潟-谷津干潟

 前から気になっていたのが、夜の干潟のようすです。シギやチドリは、干潟の満ち干によって食べ物を捕っているはずです。ですから、たとえ夜でも干潟が出ていれば活動して鳴き合っているはずです。また、江戸時代のチドリを楽しむ遊山は、夜に行われていました。品川や行徳の海辺の料理屋に夜に赴き、お酒を飲みながらチドリの声を楽しむという、なんとも風流なたのしみです。これも夜なのですから、夜も鳴き合っているはずなのです。
 ということで昨夜、谷津干潟に録音機を3台、置いて夜の音を録ってみました。連休のは晴れは今日まで。今夜は一部、雨の予報が出ています。昨夜は、数少ないチャンスでした。谷津干潟自然観察センターのレンジャー・S原さんのご協力と情報をいただき、熟考して録音機を置きました。
 とにかく、3台を15時間ほど録音したのですから、凄いデータ量となりました。そのため、ざっと音源を聞きましたが、たしかに夜もにぎやかです。とくに、午前2時から4時頃はとてもにぎやかでした。下掲した音源の一部は、午前2時45分頃のようすです。YAMAHA W24で録音、ボリュームのアップ、低音ノイズの軽減、ノイズリダクションを軽くかけています。

「brog120429_2351.mp3」をダウンロード

 ダイゼン、ハマシギ、キアシシギの声がわかると思います。このほかのところでは、チュウシャクシギ、キョウジョシギ、セイタカシギなどが鳴いていました。このにぎやかさは、昼間よりも車の音や電車の音のない分、鳥たちの声が良く聞こえます。
   谷津干潟自然観察センターのスタッフの皆さん、そしてS原さん、ご協力ありがとうございました。

2012年4月28日 (土)

歓迎・オオヨシキリご一行様

 そろそろオオヨシキリを出迎える頃と思い、今日は芝川第一調整池に行きました。
 着いたとたん上空をヒメアマツバメが飛び交い、オオヨシキリのにぎやかなさえずりが出迎えてくれました。PCM-D1で録音。ボリュームの増幅、低音ノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

「oriental_reedwarbler12042806.mp3」をダウンロード

 昔は、オオヨシキリの初認は5月に入ってからだったと思います。近年、早くなった傾向にあります。芝川のアシ原の広さからは、オオヨシキリのさえずりは少なめでしたから、まだ本隊は未着。先発隊が到着したところでしょう。
 野鳥のさえずりは、ホオジロ、ウグイス、セッカがメイン。ときどきクイナらしい声も聞こえて、芝川のアシ原には初夏の音が広がっていました。 

2012年4月26日 (木)

笑うフクロウ

 今回の日光では、夜も録音しました。霧降では夕方、録音機を置きに行ったときに、すぐそばでフクロウが鳴いてくれてびっくりしました。このシーズンは、フクロウがにぎやかです。
 また、このシーズンならではのフクロウの鳴き方があるのではと思っています。それは、まるで笑い声のような鳴き方です。今回は、かなりしっかりと録音することができました。OLYMPUS LS-7でタイマー録音したなかの午後5時30分頃です。ボリュームの増幅、低音ノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

「ural_owl120424.mp3」をダウンロード

 いかがですか。まるで、身体を震わせて笑っているような声に聞こえませんか。
 この前や後に「ゴロスケ、ホーホー」と鳴くことがあるので雄の声だと思っています。ここにアップした音源では、後ろのほうで「ギャ」という雌の声がかぶっているので、やはり雄の声の可能性が高いと思います。
 この声は、春に聞いたり録音をしています。ちょうど去年、同じ時期に行った北海道温根沼でも亜種エゾフクロウもさかんにこの声で鳴いていました。本州の亜種でも、だいたい4~5月です。6月に聞いたことは今のところありません。ただ、フクロウがこのように鳴くことを知ったのも、タイマー録音ができるようになってからのこと。まだ、いろいろサンプルを集めて検証が必要です。
 もし、この季節限定の声であれば、「ホホホホ」はラブソングの意味があるのかもしれません。

2012年4月25日 (水)

ノーマル録音とバイノーラル録音の比較-日光

  今週は、昨日と今日しか晴れないという予報なので急遽、日光に行きました。この季節の録音のチャンスは、今週くらいしかありませんので6台の録音機を投入。思っていたとおり、早朝は素晴らしいコーラスが形成されるほど夏鳥が揃っていました。このなかで、バイノーラル録音の実験もいたしました。
 かねてより、さえずりの季節になったら置いてみたいと思っていたポイントです。ここは、山の際で水が湧いて水音が良い感じです。今回は、バイノーラル録音と同時に並べてノーマルを録音してみました。アップした音源では、クロツグミ、ヤブサメが遠くで鳴き、手前でウグイス、エゾムシクイが鳴いています。
 ノーマル録音は、YAMAHA W24のみ。バイノーラル録音は、マイクのPrimo EM4201とYAMAHA W24との組み合わせ。午前4~7時のタイマー録音の同じ所です。ノーマルのボリュームが低いので、同じくらいに聞こえるように増幅している以外、編集加工はしていません。ヘッドフォーン、またはイヤーフォーンで聞いて比べてみてください。
 まず、ノーマル録音。

「chorus120425_0400-N.mp3」をダウンロード

 つぎに、バイノーラル録音。

「chorus120425_0400-B.mp3」をダウンロード

  違いが解るでしょうか。バイノーラル録音では、ウグイスがより右で鳴いていることがわかり立体的に感じると思います。いかがでしょうか。
 これからも、いろいろな状況、条件によってどう聞こえ録音できるのか試していきたいと思います。  

2012年4月24日 (火)

新しい高級双眼鏡-MINOX APO HG8×43

 日本のバードウォッチャーが、外国製の高級な双眼鏡を持つようになったのは、バブルの1990年頃からでしょうか。当時は、ツアイスの10×40が一世風靡いたしました。その頃、ボーナス時期には日本野鳥の会のショップでは、売り切れ状態が続きました。戦場ヶ原で3人組の女性のバードウォッチャーとすれ違ったら、3人が揃ってツアイス10×40を首からぶら下げていたのには驚いたものです。それが、今ではツアイスはもとよりスワロフスキー、ライカと20万円台の双眼鏡をぶら下げている人を見るのは当たり前になりました。日本のメーカーのニコンも負けじとEDGシリーズをリリースするなど、バードウォッチャーが素晴らしい双眼鏡を手にすることができるようになりました。高性能の双眼鏡を手にすることで野鳥の魅力をたっぷりと楽しむことができる、実に良い時代になったと思います。
 先日の東京港野鳥公園で開催された『東京バード&スカイフェスティバル2012』では、多くの光学器機メーカーがブースを出展しておりました。野外の風景を見て、いろいろな双眼鏡を試すことができる滅多にない機会でした。このなかで、気になったのはMINOXのAPO HG8×43です。MINOXは、ドイツの老舗のカメラメーカーとして知っておりましたが、双眼鏡を作っているとは知りませんでした。
 今回、阪神交易のブースで木の箱に入って麗々しく置いてあったので、とても触りにくい雰囲気でした。それでも、気になって仕方なかったので担当者の方に断って触らせてもらいました。手にしてみると私の手にしっくりくるバランス、快い手触りでした。覗くと視野の隅々までくっきり見え、シャープな見え味です。暗いところを見ると実際に見るより明るく見え、悪条件でも威力を発揮しそうです。他にない性能としては、ピント合わせに距離計が付いていて50mまではおおよその距離は測れます。調査で活用する場面があるかもしれません。価格は20万円台です。

Minoxapohg

 双眼鏡の評価は、暑さ寒さを経験させないと判断できません。展示会でちょっと手にしたぐらいではなんとも言えませんので、ここまでにしておきます。
 いずれにしても、またひとつバードウォッチャーのための素晴らしい双眼鏡が登場したことになります。希望としては、担当の方々がもっとバードウォッチングを経験してほしいと思いました。バードウォッチャーに売り込むならば、バードウォッチャーの心を掴む販売戦略が必要でしょう。そのためには、バードウォッチングを極めて欲しいものです。それにしても次から次に登場する高級双眼鏡が、今後どのように展開していくのか楽しみです。
 阪神交易のMINOX APO HGのURL。
 http://www.hanshinco.com/minox-sougankyo-apo-hg.html

2012年4月23日 (月)

オオルリ三昧-日光植物園

 昨日の日曜日は、日光野鳥研究会の自然観察会でした。市内の日光植物園です。駅からバスで10分、歩いても行ける植物園です。ここは、道路と渓流に挟まれ騒音が多いので録音をするようになってからとんとご無沙汰でした。久しぶりの来訪です。
 植物園は開園したばかりです。ふだんですと開園してすぐに行ってもミズバショウの花は終わっています。しかし、昨日はちょうど写真のように見頃でした。今年は、寒く植物は2週間ほど遅れているそうです。

Sukubutuen1

 ところが、鳥のほうは順当に夏鳥が来ていました。オオルリは雌雄とも5、6羽。1シーズン分のオオルリを1日で見た感じです。以前、粟島に行ったときに島中、オオルリがいたことがあります。ただ、さえずりは一声もありませんでした。昨日の日光も粟島と同じ状態で、近くで良く見られるのですが、さえずってくれませんでした。まだ、渡り途中なのか、渡ってきたばかりでお腹が空いてさえずるどころではないのでしょう。
 このほか、夏鳥ではキビタキ、サンショウクイに加え、アオバトも姿をじっくり見ることができました。留鳥では、カワガラスの雛が見られ、地付きの鳥たちはもう巣立ちの季節を迎えていました。
 昨日の日光は、冬の装備でちょうど良いくらいの温度でした。なんとか、連休に天候を持ち直してくれないと、今年の早春はなかったことになってしまいます。
 

2012年4月22日 (日)

江戸家子猫さんとトークショー

 週末土曜日は、東京港野鳥公園の『東京バード&スカイフェスティバル2012』で、江戸家子猫さんとトークショーでした。寒くて曇天という悪条件にも関わらず会場は満席。担当のK下さんから、この日のイベントで最高の入りだったと報告を受けて、まずはほっといたしました。
 私は初めての子猫さんとの共演ですから緊張をいたしましたし、いつもになく準備もいたしました。たとえば、打ち合わせのときに録音させていただいた物まねの声紋と本物の声紋の比較をして、ネタにすることにしました。実はこれはドキドキもので、もし違っていたらネタになりませんし子猫さんに失礼です。しかし、これは杞憂。心配はいりませんでした。比較した江戸家秘伝のウグイスはもとより、アカショウビンやライチョウの声紋もそっくりでした。
 たとえば、子猫さんが大好きな動物園で物まねを習得されたライチョウの声です。子猫さんによれば、スバールバルライチョウという亜種とのこと。この声と私が立山室堂で録音した日本の亜種ライチョウとの声を見てください。
 まずは本物の声紋です。横軸は3秒、縦軸は22,000Hzです。

Ptarmigantateyama

 つぎに、子猫さんの物まねの声紋です。

Ptarmigankoneko


 音の高さ、音の間隔、櫛の歯のような波形のパターンがそっくりです。画像ファイルを作っていて、うっかりすると間違えて名前を付けてしまいそうでした。なんとか、本物のほうが音が途切れていることで区別をすることができました。これだけ声紋が似ているのですから、聞けばそっくりでした。
 トークショーは、あっという間の1時間。私も楽しませていただきました。

2012年4月20日 (金)

ツグミ類のコーラス-六義園

 開園早々、六義園へ行くと森が小鳥のコーラスで満ちあふれていました。
 PCM-D1で録音、低音ノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

「thrush12042001e.mp3」をダウンロード

 姿が見えて確認できたのでは、ツグミ、アカハラ、シロハラです。全体で、2,30羽の群れです。パラパラと木の上の方を移動していきます。かなりの早さです。こちらも早足で、先回りをしての録音です。
 録音を聞くと、アカハラともシロハラとも違うさえずりがメインです。ツグミでしょうか。それとも、アカハラにはいろいろなバリエーションがありますから、そのひとつかもしれません。地鳴きは、ツグミとシロハラとアカハラとも区別付きにい声も入っています。いずれにしても、この3種類の群れです。少ない少ないと言われていた冬鳥たちですが、渡り途中、北へ向かう群れが六義園に立ち寄ってくれました。
 葉の茂った中にいるので、鳴いている姿を確認して種類を特定することができませんでした。毎年、この季節に見られることですが、いつも種類の特定ができないで困ります。それにしても群れ全体がさえずっているように聞こえ、森全体がこの声に包まれているようでした。

2012年4月18日 (水)

サンカノゴイは1羽だった

 今日も風邪気味なので、家でデータの整理です。気になったのは、以前紹介したサンカノゴイの話です。広いアシ原3ヶ所でサンカノゴイが鳴いていたので3羽いると思ったら、実は2ヶ所で2羽だったというのが以前の記事でした。B地点から聞こえる声を辿ったらA地点に行き着いていしまい結局AとBは同じ個体であったという報告です。低い声は遠くまで聞こえるためでした。これに加えて、C地点では早朝のタイマー録音に入っていたので、2ヶ所2羽いるとしていました。
 これも不安になってきました。実は、C地点でタイマー録音をしている同じ時間にB地点でも録音機を稼働させていました。C地点では録音機の近くで鳴いてくれ、大きな波形が出ています。300m離れたB地点でも波形は小さいもののサンカノゴイの声を捕らえていたのです。これも300mも離れているのですから別かと思っていたのですが、前回のことがありますから、鳴き声の波形を比べてみました。
 わかりにくいので、ABC地点が解る模式図も上げておきます。それぞれの地点は、だいたい300m離れています。ですから、地図全体の1辺が500mくらいになります。すみません。サンカノゴイは希少種なので場所の特定ができないように似た場所の地図を加工していますので、ご了承ください。

Abc1

 まず、C地点の波形です。YAMAHA W24で録音しています。録音開始は午前4時30分から37分あります。

Greatbitternhakeic

 B地点の波形です。OLYMPUS LS-7で録音。同じく午前4時30分から37分です。

Greatbitternhakeib

 波形を見ると短い間隔で約1分、長いと約2分間の間があります。この間隔のパターンがなんと同じなのです。ということは、1羽のサンカノゴイの声を同時に2ヶ所で捕らえていたことになります。
 昼間A地点とB地点が同じであることを確認しています。早朝のタイマー録音でB地点とC地点も同じことがわかりました。地図を見ていただくと、おわかりのようにABCが、3角形の頂点の位置関係にあります。ですので、このアシ原の中程で鳴いてくれれば、どの位置からでも聞こえて来ることになるわけです。ということで、ここには1羽のサンカノゴイしかいない可能性が高いことがわかりました。考えてみれば絶滅に瀕しているサンカノゴイがそんなにいるわけがありません。ぬか喜びでした。
 しかし、録音をすることで同一がどうかの判断、あるいはタイマー録音をすることでアシ原に隠れている種類の生息状況を把握することができることがわかりました。これは、工夫次第で面白いことがわかりそうですね。

2012年4月16日 (月)

ご紹介-『渡り鳥の世界―渡りの科学入門』

  1週間ほど前から花粉がスギからヒノキに変わって酷くなりました。昨日から花粉症にカゼが加わり、いちだんとひどくなりました。この違いを表現しようと思ったのですが、なかなか難しいですね。ハシブトガラスとハシボソガラスの違いから、ミヤマガラスになった感じと言えば分かっていただけるでしょうか。ということで、今日も書籍ネタです。
 中村司先生は、日本野鳥の会の全国大会、日本鳥学会の学会、日本鳥類保護連盟の愛鳥週間の集いによくお出でになっていました。挨拶をすると小柄な先生が、にこにこ笑って深々と頭を下げられるので、私は腰をさらに折らなくてはならず、いつも困ってしまいます。司先生の父上は、中村幸雄と言いコノハズクが「ブッポウソウ」と鳴くことを鉄砲で射て実証された方です。さらに、蜂須賀正氏(まさうじと読む。こう書かないと何で彼だけ”氏”を付けるのかと言われたことがある)と、ボルネオに有尾人を探しに探検に行き、新種の鳥を捕獲した採集人の一人でもあります。中村家は、2代続いて鳥類研究をおやりになっている由緒ある家系です。
 先日、樋口広芳先生の退官パーティでお会いしたら80歳を超えたとのこと。そうとは思えないかくしゃくとされた先生は、なんと英語でスピーチされていました。
 その中村先生のご研究のライフワークは”渡り鳥”です。その集大成とも言える本が、発行されました。『渡り鳥の世界―渡りの科学入門』です。先生は、渡り鳥を多方面から研究されています。ホルモンの作用から星座を見ているかの実験などをされています。この本では、ご自身の実験を軸に最新の研究を紹介し、渡り鳥の謎について解説しています。
 鳥の質問で多いが、渡り鳥についてです。なぜ渡りをするのか、どうやって渡りをするのか、野鳥に興味を持ったら誰でも生じる疑問です。この本では、謎の一つひとつを解説されています。中村先生はある意味、渡り鳥を極めた方です。それだけに、解らないことは解らないとおっしゃっています。そして、とてもわかりやすいのです。解っている方が書けばわかりやすく書けるのは当たり前のことなのですが、それがなかなかできません。論文も一般書も書ける方は、凄いと思います。
 そして何よりも、渡り鳥を単なる研究対象としてではなく、敬意を持って鳥たちを扱っています。その鳥へ向ける温かいまなざしは、挨拶される先生そのものです。
 ときあたかも渡り鳥の季節、ご興味のある方はぜひご一読いただければと思います。

Wataridorinakamura

『渡り鳥の世界―渡りの科学入門』 (山日ライブラリー)
定価:1,260円(税込)
著者:中村 司
装丁:新書版200ページ
出版社: 山梨日日新聞社 (2012/02)
ISBN-10: 4897107261
ISBN-13: 978-4897107264
 なぜか、アマゾンでは新刊書あつかいされていません。他の書籍販売サイトを検索していただくか、大型書店で探してみてください。

2012年4月15日 (日)

質問に答える

 今日は「足立自然にふれあう会」の谷津干潟探鳥会におじゃまいたしました。春の日差しのなか、いろいろな人に会ってたくさんの野鳥たちに会えました。私がこの会に参加すると最後に質問コーナーが設けられるようになりました。M沢会長は「老人野鳥相談」と言っています。
 今日は「ユリカモメの頭の黒い羽毛は、抜け替わるのか?」「シギは塩分を取りすぎると思うが、腎臓の機能は?」などなど、今日見られた鳥に関連しての質問でした。冬羽から夏羽への移行の多くは、摺り減り。塩分を濾すのは顔にある塩腺、濾された塩分は鼻から排出されると、お答えいたしました。野鳥を見ていれば、いろいろな疑問が生まれるのは当然のことです。少しでもお役に立てれば幸いです。
 質問と言えば、今月号のBIRDER誌のツバメ特集でも「ツバメ質問箱・素朴な質問編」に寄稿しています。編集者から私が出演しているNHKラジオ「夏休み子供電話相談」にように答えて欲しいという希望でした。しかし、せっかくのBIRDER誌からの原稿依頼ですから大人向きに答えました。
 たとえば、巣が落ちたらどうしたら良いか→落ちるような巣を作る親鳥は子孫を残す資格はない、ほおっておけ。巣(雛)をカラスから守るのは→カラスから身を守れないものは都会では生きていく資格はない。糞対策は→人の好みで特定の種を守るならばそのくらいのリスクは我慢しろ。巣から雛が落ちてしまったら→継父が前夫の雛を殺すことがあるので、ほっておけ等々。子供向きではない解答の数々、ボツになるかと思いましたが、通りました。現在発売中、ご高覧いただければ幸いです。
Birder201205

2012年4月14日 (土)

ご紹介-『名前がわかる野鳥大図鑑』

 真木広造さんの『名前がわかる野鳥大図鑑 』が出版されました。私は、この本に付いているCDの制作をいたしました。
 真木さんは前著『日本の野鳥590』(2000・平凡社)でも、写真はすべてご自身で撮影されたものだけで構成いたしました。今回も同様で、すべて真木さん撮影です。このこだわりは、他のカメラマンの追随を許しません。そのような企画に参画できるとは、とても光栄です。
 この図鑑には400種類が載っています。多くの鳥で、雌雄や成鳥、幼鳥などのバリエーションの写真が収録されていますから、その情報量はかなりのものです。また、文字も大きく読みやすい編集がされています。ですから、他のハンディな図鑑に比べると大判の装丁です。そしてさらに、音楽CDにめいっぱい収録できるトラック数の99種類の声が収録されたCDが付いて1,800(+税)円です。CDだけでも、この値段で売っているのですから、どうしてと思うような価格となっています。
 苦労話をしておきます。音源ひとつ一つは、さまざまボリューム(音量)で録音しています。1枚のCDに収録するためには、同じボリュームに聞こえるようにしなくてはなりません。鳥によって音が大きくなったり小さくなったりしては、いちいち聞いている人がボリュームのつまみを調整しなくてはならないからです。また、それぞれの音源のバックノイスの大きさが違います。メインの音が小さいからと言ってボリュームを上げればノイズも大きくなってしまいます。写真で言えば、小さく鳥が写っているのを拡大してトリミングするとザラザラの粒子が出てきてしまうのと同じです。真木さんの素晴らしい写真の図鑑ですから、音も頑張らなくてはならないのです。
 だいたい、波形を見ると音の大きさがわかります。しかし、鳥の声は100Hzの低い音から10,000Hzの高い音まで幅があります。さらに複雑、単純な節などさまざまです。ですから、波形で見て同じ音量にしたつもりでも複雑で高い音は大きく聞こえ、単純で低い音は小さく聞こえることがあります。数トラックならば、2、3回聞いて調整することはさほどたいへんではありません。しかし、99トラックとなるととてもたいへんでした。何度も聞いて微調整を行いました。問題は、聞いていると気持ちが良くなって寝てしまうことでした。
 今週末から書店に並ぶ予定です。見つけられたら、ぜひ手にとってご覧いただき、この価値をご確認いただければ幸いです。

Yatyodaizukan

『名前がわかる野鳥大図鑑』
定価;1,800円+税
装丁:B5版256ページ
出版社: 永岡書店
ISBN-10: 4522430868
ISBN-13: 978-4522430866
アマゾンのURLです。
http://www.amazon.co.jp/%E5%90%8D%E5%89%8D%E3%81%8C%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E9%87%8E%E9%B3%A5%E5%A4%A7%E5%9B%B3%E9%91%91-99%E7%A8%AE%E3%81%AE%E9%B3%B4%E3%81%8D%E5%A3%B0%E3%81%8C%E8%81%9E%E3%81%91%E3%82%8BCD%E4%BB%98%E3%81%8D-%E7%9C%9F%E6%9C%A8-%E5%BA%83%E9%80%A0/dp/4522430868/ref=sr_1_14?s=books&ie=UTF8&qid=1334478848&sr=1-14

2012年4月13日 (金)

花吹雪の中で-ツミ

  以前、ご紹介した鳴き真似コンテスト優勝者のS木さんから、ツミが鳴いているとの情報をいただきました。S木さんのバードウォッチングは、情報をたよりに鳥を見るのではなく自分で鳥を見つけるというこだわりです。そのS木さんの情報をたよりに行くというのは気が引けます。去年も、やはり彼から情報をいただき、6月に巣立ち前後の声を録りました。そのときの話では、巣作り前後が良く鳴いていたとのことでした。去年は、3.11震災の後遺症で遠出ができず、機会を逸していたのです。今年こそと昨夕にタイマー録音を設定した録音機3台をしかけておきました。
 本日、午前中に回収。S木さんとも会えて、バードウォッチング談義に花を咲かせました。ときあたかも、公園のサクラが花吹雪きとなって散っています。その中を、ツミの雄がせっせと枝を折っては巣に運んでいます。枝を折るとき、まわりのサクラの花びらがぱっと散って行きます。なんと贅沢な風景でしょう。これで鳴いてくれれば言うことはないのですが、午前の遅い時間のため1時間待っても鳴いてくれませんでした。しかし、タイマー録音は見事にツミの声をゲット。午前4時30分の録音開始時間には、もう鳴いています。なかでも5時前後に良く鳴き、近くに寄ってくれました。長年、ツミを追いかけているS木さんの観察の積み重ねのおかげです。S木さん、ありがとうございました。
 YAMAHA W24で録音。低音ノイズの軽減、ボリューム調整、ノイズリダクションを軽くかけています。
「Sparrowhawk120413.mp3」をダウンロード

2012年4月12日 (木)

鳥友、遠方より来る-T中さん来訪

 本日は、福岡から野鳥録音仲間のT中さんご夫妻がお出でになりました。上京されたついでとは言え、わざわざのご来訪、恐縮です。せっかくの良い天気なので六義園を探索のあと、我が家で録音談義。あっという間に3時間経ってしまいました。
 T中さんは、野鳥録音を楽しむだけではなく、ボランティアグループ「バードコール」を主幹し仲間といっしょに目の不自由な方たちに自作のCDを配布し野鳥の魅力を多くの方に知ってもらおうと活動をされています。私がサイトを立ち上げたのを機会にメールのやりとりが始まり、お互いに傑作選のCDで送り合うなど、お付き合いをしています。ですから、お会いしたのは今日が始めたなのですが、旧知の仲の感じで話が盛り上がりました。
 私が知る限り”タイマー録音”と言う言葉を使い実践されたのはT中さんが最初です。当時、タイマー録音できるメモリー録音機がありませんでしたので、私にはできず不思議に思っておりました。今日、お会いして謎が解けました。なんと彼の録音機は、ボイスレコーダーだったのです。タイマー録音機能が付いたのは、ボイスレコーダーが先でYAMAHAのW24にタイマー録音機能があるのは、ボイスレコーダーの機能を取り入れたためと担当者が言っていたのを思い出しました。
 具体的には、OLYMPUSのVoiceTrek DS-51に、この機種の別の機材から取り外したマイク部分をパイプに取り付け録音しているとのことでした。マイクには、奥さんのお手製のジャマーが取り付けてあって手作り感あふれる機材でした。
 いただいているCDを聞く限り、とてもクリアな録音でボイスレコーダーによる録音だとは思ってもみませんでした。お話を聞いていると、T中さんの野鳥の知識や思いも深く、野鳥の動きや習性を判断し、より近くにマイクを置くことで良い音をゲットしていることが分かりました。野鳥録音は、知識と経験がものを言う世界であることを改めて認識いたしました。
 T中さん、いろいろ教えていただきありがとうございました。

2012年4月11日 (水)

謎のゴキブリ-サツマゴキブリ

 先日、Tさんからゴキブリの語源を教わりました。江戸時代は食器にかぶりつくということで”ごきかぶり”と言われていた昆虫が、ゴキブリになったのはついこの間の明治時代のこと。それも、我が日本鳥学会の初代会長である飯島魁がからんでいるとか。明治22年に出版された飯島魁著の「中等教育・動物学教科書」にゴキブリの漢字である「飛蠊」にゴキカブリではなく、ミスプリントでゴキブリとルビを振ってしまったのが、この名前の始まりとなったそうです。編集者のTさんならではの情報でした。
 ところで先日、東京港野鳥公園へ打ち合わせに行く途中の道端で、見たことの無いゴキブリの死骸を2つ見つけました。写真です。

Gokiburi

 大きさは家のなかで見るクロゴキブリと同じくらい、しかし幅はかなり広く、大きく見えます。また、翅は見えず節がたくさんつながっているようで、宮崎アニメのキャラで出てきそうなかっこうをしています。そして、頭にはクリーム色の縁取りがあって、全体的にはとてもきれいです。
 ネットで「ゴキブリ」と検索しても出てきませんでした。日本のゴキブリではないようなので「ゴキブリ 外国産」と入れた探したところ、サツマゴキブリに良く似ていることが分かりました。専門外のことなので、間違っていたらごめんなさい。ご存知の方がいらっしゃいましたらフォローしていただければ幸いです。
 もし、サツマゴキブリならば、世界的にはインドや台湾、国内では四国、九州に分布しているゴキブリです。いずれにしても暖かい地方です。ところが最近、紀伊半島、東海地方、房総半島など、温暖な地域で見つかっているとのこと。本来はいないはずの伊豆諸島から小笠原諸島にも侵入しているとか。人の活動と温暖化の影響で、生息域を広げている生き物です。
 ただ、東京地方にいるという情報は見つけられませんでした。ゴキブリの死骸のあった横をコンテナを積んだトラックが行き交っています。場所が場所だけに、外国からの荷物に紛れて、入り込んだサツマゴキブリがこの冬の寒さで死んでしまったのかもしれません。いずれにしても、いつ東京に侵入してきてもおかしくない状態であることにかわりありませんね。

2012年4月10日 (火)

スワロフスキー双眼鏡の新機種-EL32 SWAROVISION

 今日は、オーストリア大使館に行ってきました。スワロフスキーの新製品の発表会に招待されました。スワロフスキーはオーストリアの重要な企業とのことで、大使も列席され挨拶されました。私としては、ベストセラー機のEL32がより進化して、EL32 SWAROVISION(以下、新EL)として新登場だというのですから興味津々です。
 EL8×32は、素晴らしい双眼鏡です。小型、標準の口径(32mm)でありながら大口径並の解像力というか、明るい視野です。バードウォッチャーならば、一度見たら欲しくなる一品です。それだけに発売以来8年、野外で首からこの機種を下げているバードウォッチャーに会うことが多くなりました。
 今回、このELを大改訂したとのことでの発表会です。デザインは、スワロフスキー特有の中央軸のない形は変わりません。SWAROVISIONであるために、接眼部の斜めのカットライン、筐体の黒いラインが入っています。性能の大きな違いは、アイレリーフが15mmから20mmに伸びたこと、ピントの合う最短距離が3.0mから1.9mに縮んだこと、重さが610gから580gと軽くなったこと、手触りがつるっとした感じからしっとりして手に吸い付くような感じになったなどの違いがあります。実際、手に取ってみると、軽さを少し感じます。アイレリーフが長いため、見やすさを感じます。今日は、大使館の屋上に上がり風景や飛んでいるツバメを見ましたが、違いがなかなか難しいのです。
 今日、参加された方々も異口同音におっしゃるのは、旧ELで十分満足しているので、これ以上、良いと言われても分かりにくいという感想です。しかし、暗いところを見ると確かに新ELのほうが、より細かいところまで見えることがわかりました。良い双眼鏡というのは、条件が悪ければ悪いほどその差がわかります。
 SWAROVISIONがかなり高い値段設定でしたので、新ELもどうなるのか心配していました。しかし、旧タイプよりちょっと安い値段設定で、8×32が220,500円、10×32が225,750円とのことでした。
 実質、旧ELは生産中止となり、これからは新ELのみとなります。また、5月下旬には入荷できるだろうとのこと、今年の初夏のバードウォッチングにかろうじて間に合います。問題は、今ある旧ELをどうしようかという悩みですね。
 デザインを8×32で、比べた写真。右が新EL、左が旧ELです。

Swaronewel2

 接眼レンズを10×32で比較してみると、大きさが違っているのがよくわかります。下が新EL、上が旧ELです。

Swaronewel1

  しかし、麻布の住宅地の屋上で20人ほどの人間が皆、双眼鏡を持ってあちこち覗いているのは不思議な風景でした。近所のマンションから見下ろしたら、いったい何をしていると思ったことでしょう。

2012年4月 9日 (月)

ワイルドライフアート4人展

  日光からの帰り、京橋で開催されている『ワイルドライフアート4人展』に行ってきました。ワイルドライフアート協会には友人知人がたくさんいるので、展示会の時は案内葉書がたくさん来ます。そして、いつの間にかカミさんが入ってしまいました。そして、今回はこの協会に所属する4人の展示会の開催です。
 関さんの磁器上絵付けはとても上品な雰囲気です。この紅茶茶碗で、杉下右京さんのように上等の紅茶を飲みたくなります。井上さんはアクリル画は、鳥を抽象的に表現したら「やはりこうだよな」と思うイメージ、鳥を知っていればいるほど理解できる力作です。福原さんは手描き友禅という限られた表現でこれだけ多彩に生き物たちを描き出しているのは驚きました。カミさんは日本画で、今までなく大きな作品を展示しています。4人4色、それぞれまったく違う手法なのですが、鳥や生き物たちが生き生きと表現されていています。なにしろ、それぞれの作家が制作を楽しんでいる雰囲気が伝わってくる展示会でした。お近くの方、またお近くまでお出でになるようなことがありましたら、お立ち寄りいただければと思います。たまには女房孝行で宣伝させていただきました。

Fourcolor

タイトル:FOUR COLORS 
出展:関くみ子・井上忠司・福原勝一・由井蘭子
開催日時:2012年4月9日~15日 11:00~18:00(15日は14:00まで)
会場:ギャラリーくぼた別館
   〒104-0031 東京都中央区京橋2-7-11 電話03-3563-0007

2012年4月 7日 (土)

東京バードフェステバル打ち合わせ-江戸家子猫さん

 昨夕は、東京港野鳥公園で日本野鳥の会のK下さんと江戸家子猫さんとトークショーの打ち合わせでした。今まで猫八さんとのトークショーやテレビ出演をしてきましたが、息子さんの子猫さんとは初めてです。
 夕方の東京港野鳥公園は、この季節としては寒く夕焼けも冬の風景のようでした。オオタカの若鳥がいてコガモにアタックするなど、エキサイティングな自然のドラマを見ることができました。
 ところで打ち合わせは、このままトークショーになってしまうというほど盛り上がりました。何しろ子猫さんは、日本はもとより世界の動物園廻りをするほどの動物好き。檻の前で動物を前に物まねをしては、反応を確かめて腕を磨くという武者修行を重ねているのです。ですから、レパートリーは江戸家秘伝のウグイスはもとより、ペンギンからキリンまであるのですから楽しい限りです。
 また、お得意はアカショウビンとのこと。目の前で実演していただきましたが、目をつぶって聞いたら新緑の森が目の前に広がってきそうでした。この打ち合わせを元に、これから私の仕込みもあります。どうぞ、お楽しみに。

江戸家小猫・松田道生トークショー
場所:ネイチャーセンター視聴覚室
日時:4月21日土曜日 14:30~15:30(開始時刻15分前開場)
定員:80名 座席が無くなり次第締め切り
入場料:無料

主催者のURL
http://www.tptc.co.jp/park/birdfes11/tabid/995/Default.aspx
日本野鳥の会の関連URL.
http://www.wbsj.org/event/2012/tbf2012.html

2012年4月 6日 (金)

都心でハシボソガラスが巣作り

 3月初旬に、ご近所のカラス仲間のHさんから「もうカラスの巣があり巣ごもりしている」との電話をいただきました。ハシブトガラスの巣作りの最盛期は、お彼岸前後からお花見の今頃です。いくらなんでも早すぎます。場所をうかがうと、サッカーグラントと山手線の近くとのこと。比較的開けた環境からハシボソガラスの可能性があります。また、ハシボソガラスの繁殖は、ハシブトガラスより1ヶ月ほど早いので、よりハシボソガラスの可能性が高いと思いました。
 ただ、ここは私のカラスの営巣調査のエリアであったところです。2000~2004年の5年間、カラスの巣を延べ250巣の見ましたが、すべてハシブトガラスでした。ハシボソガラスはひとつもありません。ですから、ハシボソガラスの巣としたらとても珍しいことになります。
 ばたばたしている内に、あっという間に1ヶ月が経ち、本日やっと確認してまいりました。
 現地に行く途中、2ヶ所でハシブトガラスが巣作り中。今年も盛大に雛を生産しそうです。1組のハシブトガラスは、まだ枝下り行動の最中。巣は作りかけです。ですから、1ヶ月も前に巣作り巣ごもりというのは、とても早いのです。
 Hさんに教えてもらったところに行くと、カラスが1羽飛び立ち、そして一声「ガア」と鳴きました。なんとハシボソガラスです。姿も見ましたが、まちがいありません。2羽がいて、2羽ともハシボソガラスでした(写真)。
Carrioncrowinsugamo

 1970年代には、都心にもハシボソガラスがたくさんいました。明治神宮探鳥会では、どちらもいて、初心者にはどちらのカラスか識別させることがバードウォッチングの第一歩でした。また、当時の餌場であった夢の島にいたのはハシボソガラスの群れでした。それが、ハシボソガラスがいっそうされ、ハシブトガラスばかりになったのは、建物が森林の建ち並び、食べ物のゴミが大量に出されたバブル期以降です。
 今またハシボソガラスが都心への進出を試みているのでしょうか。本来、ハシボソガラスの巣のあるところは、もっと周辺が開けたところです。この巣は、サッカーグラントがあるとは言えハシボソガラスの巣作りの環境としては、まわりがとても混んでいます。食べ物がある限り、ハシボソガラスも臨機応変に順応しているのでしょうか。これが、東京の新しいカラスの傾向となるのでしょうか。相変わらず、カラスからは目を離せませんね。
 Hさん、興味深い情報ありがとうございました。お花見ついでの確認でした。

2012年4月 5日 (木)

ハイイロヒレアシシギとハマシギビール-谷津干潟

 谷津干潟観察センターのS原さんから、ハイイロヒレアシシギがいるとの情報をいただきました。ハイイロヒレアシシギは、10年以上前に日光の貯水池で1回会ったきりの鳥です。また、声は未聞。あわよくば、録音できないかと思い出かけました。
 ハイイロヒレアシシギは、3羽いました(谷津干潟全体では、もっといそうです)。それも足元まで来てじっくりと鰭足を観察することができるほど。ただ、風が強いのと見ている限り一言も鳴かず、録音はできませんでした。
 昨日、市川市の行徳野鳥観察舎ではケガをしたものが運び込まれ、仙台の蒲生干潟では1,000羽の群れが見られたという情報も寄せられています。一昨日の爆弾低気圧によって、いつも通る外洋から外れてしまったのでしょう。
 私が2度目の出会いなのですから、さぞカメラマンやバードウォッチャーが押し寄せているかと思ったら20人ほど。このシーズンならば通常の人出でした。ハイイロヒレアシシギは人気がないのか、貴重性が理解されていないのか、不思議でした。
 昼に谷津干潟観察センターの「干潟茶屋」に行くと、所長さんが「今日から解禁のビールを試してみてください。これが、最初の1本です」と、ごちそうしていただきました。その名もハマシギ・ビールです。ラベルには、長島充さんの版画のハマシギが描かれています。

 Dunlinbeer

  ハマシギの味がするのかと思いましたが、濃厚なエール系の味です。この手のビールにありがちな酸味はなく、こころよい苦みとコクがさわやかでした。味は、しいていえばハマシギの夏羽のイメージ、夏羽の背中の茶色に近い色をしていました。
 この後、ダイシャクシギ・ビールも登場するとか。谷津干潟でのバードウォッチングの楽しみがもうひとつ増えました。
   S原さん、情報ありがとうございました。所長さん、ごちそう様でした。

2012年4月 4日 (水)

『朝の小鳥』5月分収録-奄美の野鳥

 今日は、文化放送『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。5月の放送分です。テーマは、鹿児島県奄美大島の野鳥たちです。2007年の初夏に訪れたときのものです。ついこの間、行ったばかりだと思っていたのですが、もう5年経ってしまいました。
 このときは、あまり天候に恵まれませんでしたが、目的のオオトラツグミ、ルリカケス、オーストンオオアカゲラなどを録音することができました。いちばん印象的だったのは、ナイトツアー。現地ガイドのTさんに林道を車で案内してもらいました。Tさんは、ネグラしているルリカケスから、アマミノクロウサギ、アマミヤマシギを次から次に見つけてくれます。それも、雨上がりの山道にたくさんいるカエルを轢かないように運転しながらです。音的には、カエルの合唱の中、リュウキュウコノハズクが鳴いてとてもにぎやか、そしてエキサイティングな夜の森でした。
 難題はオオトラツグミで、夜明け前の10数分しか鳴いてくれません。Tさんに夜明け前にオオトラツグミが鳴くという場所に連れて行ってもらいました。さすが、現地ガイドの強みで、薄明るくなるとオオトラツグミが鳴き始めました。鳴いたのは良いのですが、録音機を持って右往左往している内にあっという間に鳴き止んでしまいました。ですから、ちゃんと録音できたのは数分しかありません。ぎりぎり、番組に使える長さです。
 それに、そのときの小さな黒いブヨは最悪でした。小さな虫が手にとまって、チクチク刺すのですが録音中で動けません。小さいしチクチク程度ですから、オオトラツグミのため我慢していました。ところが、後で手がグローブにように腫れてしまいました。全身がだるくなって、何もする気がなくなってしまったのには困りました。地元の人に聞いたら、病院に担ぎ込まれて点滴を打った方もいたとのこと。自然の豊かなところは、それだけ厳しさもあることを身をもって体験した奄美大島でした。
  2012年5月放送予定
 5月6日 アカヒゲ
   13日 リュウキュウキビタキ
     20日 オオトラツグミ
   27日 リュウキュウコノハズク

2012年4月 3日 (火)

いちだんと増えた日光のシカ

 今回の日光行きで、驚いたことがあります。シカとの出会いがすごく増えたことです。写真は、日光市所野にある乗馬倶楽部の敷地です。写真には11頭写っていますが、全体では14頭まで数えました。

Dearinnikko_2

 ここでは、夜にシカの群れがいるのは何度も見ていますが、昼間の明るいなか身体をさらしているのを見たのは初めてです。地元も人も、珍しいと言っています。このほか、別荘地を行くと庭にシカがいました。それだけ、シカが増えて人を恐れなくなってしました。
 ハンターの減少、高齢化、そして放射性セシウムの検出が追い打ちをかけて、シカを狩ることなくなった効果でしょう。これに加え、今年3月の日光は雪が多く食べ物を求めて里に下りてきたことも考えられます。
 この写真でもわかりますが、本来林床にある下草がまったくなくなっています。昆虫によっては、根こそぎすみかを奪われたことになります。鳥にとっては、食べ物となる昆虫と身体をかくす場所がなくなりました。ウグイスなどの減少が心配です。
 昔、読んだ生態学の教科書で、ある島でシカを増やそうとハンターが天敵のコヨーテを排除したら、シカが爆発的に増えた。しかし、あるところから食べ物を食べ尽くし、以前の数より少なくなったという話を思い出しました。島のように閉鎖された環境であれば、この論理も通用すると思います。しかし、広大な地域では果てしなく破壊の連鎖が広がっていくことなるのでしょうか。
 

2012年4月 2日 (月)

早春のバイノーラル-霧降高原

   土曜日にTさんと巡り会って急遽、日光に行くことになりました。2人ともダミーヘッドを使ってのバイノーラル録音をしたくてうずうずしているのです。
 ということで、日曜日は久しぶりに早朝録音に出かけました。標高1,400m付近の霧降高原です。到着した午前4時45分は、東の空がかすかに白み始めていました。積雪が1mくらいのところもあり、寒い朝です。録音の準備をしているとフクロウが遠くで鳴いているのが聞こえました。これは、さい先の良い兆候です。
 しかし、昨夜に雪が降り路面には1~2cm雪が積もっています。まだ、0度以下の早朝ですからそれほど滑りませんが、これが溶けてくるとかなり滑りそうです。急なカーブ、急な坂道が続く霧降道路、私の運転では心許ないので、凍っているいるうちに下りることことにしました。そのため、録音は放置録音です。
 道端にダミーヘッドが2つ置いてあったら、かなり異様な風景です。しかし、雪が積もっているので隠すところがありません。やっと、雪の上に出たササの陰に置いておきました。そして、暖かくなり雪が溶けた頃を見計らった昼近く、回収に行きました。
 午後は、Tさんが再生する音を聞いて眠ってしまいました。ということで、やっと本日、音源のチェックしています。まだ、風景的には冬、早春の野鳥たちの密度が低いので、皆遠くで鳴いています。ときどき、マイクの近くで数声鳴いては離れていく様子が録音されていました。アップしたのはコガラの地鳴き。コガラは、右から左に移動しています。遠くでゴジュウカラが鳴いています。バイノーラル録音ですので、ヘッドフォーンかイヤーフォーンでお聞きください。ボリューム調整、低音ノイズの軽減をしています。

「WillowTit-C120401_0457.mp3」をダウンロード

  ところで、7時頃に通った車が、バックして戻ってきて一瞬ようすをうかがってまた走り去る様子が録音されていました。どうも、ダミーヘッドを見つけられてしまったようです。アップした音源は、バックして来る所からです。

「kirifuriincar.mp3」をダウンロード

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