« 日本野鳥の会の原発に対する考え方 | トップページ | 今日の仕事-バードカービングと『朝の小鳥』収録 »

2012年7月10日 (火)

アオバズク再び-六義園

 先週の2日、夕食後にNHKの『クローズアップ現代』を見ていると、かすかに「ホッホ、ホッホ」と聞こえます。前にもお話ししたことがありますが、この手の声は空耳であることが多いのです。念のためベランダに出て耳を澄ますと、確かに聞こえます。アオバズクのさえずりです。この季節の午後7時30分は、夜の鳥のゴールデンタイムです。
 その後、夜空を過ぎる姿が見え、近くでも鳴いてくれました。PCM-D1で録音、ボリューム調整、低音ノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

「brown_boobook12070202.mp3」をダウンロード

 この夜は一晩中、PCM-D50を稼働させておいたところ、断続的に鳴いているのが録音されていました。そして、翌3日の夜は本降りの雨で鳴き声は聞こえませんでしたが、4日~6日と、夜になるとアオバズクの声が聞こえてきました。7日は日光に行って不在、8日以降は確認できません。ということで、このアオバズクは少なくとも5日間滞在していたことになります。
 今年は、渡り途中と思われるアオバズクの声を5月18日に聞き、六義園では24年ぶりの記録になったと記事にいたしました。それから2ヶ月近くたっているので、別のアオバズクだと思います。ただ、4半世紀も記録のなかったアオバズクが今年に限って2回も続けて記録されるとは、面白い現象です。
 ところでこのアオバズク、7月ですから渡り途中とは思えません。といって、今まで声を聞くことはなったのですから繁殖をしているとも思えません。この季節、六義園では突然、ウグイスのさえずりが聞かれたりします。ホオジロの唯一の記録も、このシーズンです。どうも、相手を見つけることができなかった、あるいはなわばりを構えることのできなかった雄が、漂行して来て、最後のチャンスにかけているのという印象があります。
 そう思って録音を聞くと「ホッホ」の回数が3回や5回で終わっています。多いと10回程度鳴くのが普通です。また、声量も大きくありません。アップした音源も近くで鳴いてくれたわりには、大きく録音できませんでした。いずれにしても、鳴き声から力強さを感じませんでした。これが、理由で雌もなわばりも確保することができなかったのならば、声が命の夜の鳥としては致命的なことです。
 このアオバズクの声を編集していて感じたことがあります。都会の騒音のなかでは、フクロウ類の低音の声はノイズに埋もれてしまい、その声を遠くまで響かせることができないのではと思いました。都会のノイズは、主に自動車の音です。このノイズと同じ音域で鳴くアオバズクの声は、ノイズに埋没してしまうわけです。編集していてノイズと重なったアオバズクの声を聞こえるようにするためには、とても手間がかかりました。山の中のように静かな環境であれば、どこまでも聞こえるはずの声が、都会ではノイズと音域がかぶってしまい低音の効果を発揮することができないことになります。そのため雌に聞こえず、結果子孫を残せないということになり、都会から姿を消してしまったのかもしれませんね。

« 日本野鳥の会の原発に対する考え方 | トップページ | 今日の仕事-バードカービングと『朝の小鳥』収録 »

観察記録」カテゴリの記事

コメント

自動車のノイズと聞いて思い出したのが、以前、飛島へ渡る船で蒲谷鶴彦さんと一緒になったときのことです。
今回はシマゴマのさえずりを狙いに来ましたと言い、離島の良いところはクルマが走らないことですと、穏やかな笑顔で語ってくれました。
漂行してきたものが最後のチャンスにかける7月、という推理は、この時期の他のいろいろな意外な種の出現にもあてはまりそうです。探鳥会での解説に使わせていただきます^^。

ひろ様
 それは1998年5月10日前後のことではありませんか?蒲谷先生は、飛島にはこの時しか行っていないので間違いないと思います。実は、私と小学館の編集者は14日に先生と合流しています。先生と並んでウミネコの水浴びを録音したのは、貴重な体験でした。
 先生はこのとき、アカエリヒレアシシギの声を初録りして『野鳥大鑑鳴き声420』に収録することができました。
 私もひろさんと、どこかですれ違っていたかもしれませんね。

そうです!ノートを見たら8~10日までの旅程でした。
アカエリヒレアシは、8日酒田港で出航前の船から近くに小群が来たのを私が発見して先生に知らせました。そのときの録音でしたら私の大手柄になったんでしょうけど^^、ウミネコの水浴びは四谷ダムですね。

ひろ様
 やはりそうでしたか。先生は、アカエリヒレアシシギは飛島の港で録音できたと言っておりました。ひろさんが見つけていたので、ある程度のあたりを付けての録音だったのでしょう。
 ウミネコの水浴びは、四谷ダムです。静かで、ウミネコの声が周辺の丘に反響してとても良い音に録れました。

酒田港では出航間近でたしかエンジンがかかっていたと思います。飛んで来た群れが思いのほか近くに浮かんだので、先生も船室からデッキに飛び出して見ていたのは覚えていますが録音した形跡はありませんでした。その後飛島の港にも入ったんですね。
四谷ダムは静かな谷で面白いポイントですね。私たちはカラフトムジセッカに至近距離で会いました。声もよく聞けて識別できました。(そのときだけは^^)

酒田港では出航間近でたしかエンジンがかかっていたと思います。飛んで来た群れが思いのほか近くに浮かんだので、先生も船室からデッキに飛び出して見ていたのは覚えていますが録音した形跡はありませんでした。その後飛島の港にも入ったんですね。
四谷ダムは静かな谷で面白いポイントですね。私たちはカラフトムジセッカに至近距離で会いました。声もよく聞けて識別できました。(そのときだけは^^)

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アオバズク再び-六義園:

« 日本野鳥の会の原発に対する考え方 | トップページ | 今日の仕事-バードカービングと『朝の小鳥』収録 »