清棲幸保さんとカミさん
ネットオークションで、清棲幸保さんの『原色日本野鳥生態図鑑1-2』(1959年・保育社)を格安で落札することができました。この本には、思い出があります。中学校の図書室で見つけ、毎日見ていた本です。当時、写真だけの図鑑というのは珍しく、これからは写真の時代になると予兆させる本でした。2の巻末に「野鳥を撮影する」があり、コピーのない時代ですからノートに書き写しました。勉強もこれくらいやれば、成績も上がったことと思います。それにも関わらず、この本が手元になかったのは2冊で8,600円と高価だったことです。ちなみに当時、新入社員の給料は1~2万円です。
やっと手に入れた本を眺め至福の時を過ごしていると、カミさんがとんでもないことをいいだしました。なんと「清棲さんに会ったことがある、お宅にうかがった」と言うのです。今まで37年間、そんな大事なことを黙っているなんて驚きです。バードウォッチャーならば中西悟堂さん、野鳥録音を志す者ならば蒲谷鶴彦さんにお会いしたことがあるのと同じくらい研究者ならば思う方です。その方に会ったばかりではなく、お宅にうかがっているなんて、なんとも光栄なことです。ところが、お宅に行ったこと以外、記憶が曖昧なのです。過去にこだわらないカミさんならではのことなのですが、なんと罰あたりなことでしょう。
カミさんが中学生か高校生の頃のこと、どうしてお宅に行くことになったのか覚えていません。お宅は、当時は珍しいマンションで、奥さんにお茶とお菓子を出してもらい、野鳥の写真をたくさん見せてもらったそうです。清棲さんは優しい感じの方で、その後お亡くなりになったを知ったと言うことくらいしか記憶していません。
清棲さんは1975年に74歳でお亡くなりなっていますから、カミさんが中学生の時ならば、お亡くなりなる数年前のことになります。また、当時のお住まいは目黒区のマンションですから間違いないでしょう。
私がなぜ清棲さんの住所を知っているかというと、高校生だった私は中西悟堂、山階芳麿、そして清棲さんなどに年賀状を出したことがあるです。当時の本には、筆者の住所が奥付に載っていたので可能だったのです。そして、返事をくれたのは清棲さんだけで、感動したことを覚えています。
一流の鳥類学者であり元貴族という家柄にも関わらず気さくな人柄であったことが、一介の高校生に年賀状の返事くれ、カミさんを自宅に招待してくれたエピソードからもうかがえます。
私と時代を生きた大御所でお会いできなかったのは、清棲幸保さんと内田清之助さんくらいなのですから、珍鳥をカミさん一人で見てしまった以上に悔しいですね。
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コメント
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まつ様、こんばんは
私も同じ名前で昭和34年発行の図鑑を持っていますが、私のは当時2冊で3000円でした。
この図鑑の発行した年に私が生まれたので、記念の図鑑として買っていました。
私のは表・裏の写真はイワヒバリとモズが巣で育雛中の写真でした。
値段にこれだけ差があるという事は
まつ様が購入されたものとは中身が違うのでしょうかね。
奥様が清棲先生とお知り合いだったとはびっくりしました
先生の顔は写真を見ましてもお優しそうな顔をしていますね。
投稿: kochan | 2012年7月14日 (土) 18時15分
kochan様
奥付を見たら、1は13刷、2は10刷となっていました。仮に1刷3000部としても、3万部を売り上げたことになります。当時としては、すごいことだったのではと思います。いずれにしても、刷によって、カバー写真、価格が改定されたのでしょう。3000円でも、当時の1ヶ月の小遣いが500円ですから高値の花でしたね。
カミさんの追加情報です。高校時代のクラスメートに内田清之助さんのお孫さんがいたそうです。これで、2ポイント負けてしまいました。
投稿: まつ | 2012年7月14日 (土) 20時50分
松様、こんばんは。
そんな事ってあるのですね
内田先生と言えば日本三大鳥類図鑑の発行前の大正二年に日本鳥類図説を出版してますが
その上巻と大正六年に発行された鳥類講話を持ってます。
当時は漢字とカタカナが多く使われていたようで、読み難いのですが
内田図鑑も詳しく解説が書かれていますね。
今の時代は、分野で詳しい人は居ても
内田先生や清棲先生、黒田先生のように鳥、全般的に詳しい人は居ませんね。。
投稿: kochan | 2012年7月15日 (日) 19時03分
kochan様
内田図鑑は、亜種や初期の分類の仕方を確認するのはなくてはならない本です。たしかに、読みにくいですが。
誰かが、鳥類学者はいるけれど鳥学者がいないと言っていたのを思い出しました。
kochanさんも幅広く鳥に取り組んでおられますが、そういう姿勢の方は少なくなりましたね。
投稿: まつ | 2012年7月15日 (日) 21時08分