日本野鳥の会の原発に対する考え方
今はボランティアという言葉は一般的になりました。しかし、1980年代はなじみのない言葉でした。当時、知床半島で木が切られるのを身体を鎖で木に結びつけて反対した運動がありました。これがボランティアという言葉が知られるきっかけになったと思っています。この時、住んでいたマンションにあった寿司屋の主人が「あれは絶対、裏があるに違いない、どこかの不動産屋が金を出している」と確信していました。自然を守るために、そのくらいのことをするのは、私には理解できますから「そんなことはないよ」と説明しても納得してもらませんでした。考えてみれば、北海道に1週間行くと、交通費や宿泊費で10万円はかかります。まして、寿司屋が1週間休業すれば、月の4分の1の収入がなくなるわけですから、実質相当の出費と言うことになり、どこかがお金を出して裏で画策しているに違いないという発想につながります。
このころ日本野鳥の会も、私の在職中にかなりのバッシングに会いました。平常の仕事に加えて、これに対応して行かなければならず、肉体的にも精神的にも疲れたことを思い出します。このバッシングの根底のひとつが、企業からお金をもらって自然保護運動の手を抜いているというもの。良いことをしているものには裏があるという考え方です。
今でも、日本野鳥の会が風力発電に反対するのは、原子力発電を推進するためのもので、裏で電力会社からお金をもらっているからではないかというものがあります。事実、電力会社のいくつかは法人会員になっていただいていますが、百数10社ある企業の内の数社にすぎません。会費は10万円です。日本野鳥の会は、年間8億円を超える事業経費で運営されています。毎年ぎりぎりの経営をしていますので10万円といえども貴重なお金です。しかし、だからといってその金額に影響されるようなヤワな運営はされていません。また、電力会社だって10万円くらいでどうこうできるとは思っていないでしょう。
「日本野鳥の会は電力会社からお金をもらっている」という一言からは、多くの人は億単位の金額を想像してしまうと思います。こうした発言をする人は、わざと曲解させ日本野鳥の会の活動を阻害するつもりなのか、あるいは裏も取らず勝手気ままに発言しているのか真意はわかりませんが、大いに迷惑です。
また、反原発についての積極的な反対運動をしていないは、少ない職員でいろいろな野鳥にかかわる問題に取り組んでいるため、そこまで手が回らないのが実情です。やらないのではなく、やれないのです。これには、内心忸怩たるものがありますが、現実として受け止めています。さらに批判されては活動が阻害され、より手が回らなくなります。
ところで日本野鳥の会では、原発についての考え方をまとめ公表いたしました。
http://www.wbsj.org/activity/conservation/law/nuclear-opinion/
基本は、省エネ型のライフスタイルの提案です。
理事会、評議員会の承認を得ての文章の作成と公表ですので、ここまでまとめるのには時間がかかりました。佐藤仁志理事長のご苦労のたまものですが、ひとつの指針で公表されたことで日本野鳥の会の考え方が明確になったと思います。
ところで先日、柳生博会長の講演会で参加者から「日本野鳥の会は原発に賛成か反対か」という質問がありました。会長の回答は明確でした。「野鳥にとってためにならないものは反対です」。
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