『有田一郎著作別刷集 2012年』をいただく
高校時代、日本野鳥の会東京支部の探鳥会に行くと、ぽっちゃりとした体型でいつでもニコニコしながら鳥を見ている同年代の男の子がいました。それが有田一郎さんです。鳥へ情熱は柔和な印象とは異なり、探鳥会の終わった後も鳥を探し、次の会で「あの後、○○がいた」と私を悔しがらせました。
その有田さんから『有田一郎著作別刷集 2012年』が送られてきました。還暦を記念し、今まで発表した論文をまとめたものです。厚さがわかるように撮ってみました。
有田さんとは年代が同じであるばかりではなく、私が日本野鳥の会の職員のときに職員でした。また、都市の鳥とくにスズメやカラスへの取り組み、そして江戸の野鳥、さらには野鳥録音と、野鳥への嗜好がよく似ているのです。ただ、彼の目の付け所というか、研究眼のすごいのは、人のやらないことで必要なことをちゃんと押さえていることです。たとえば、鳥との距離など、今から調べようもないことをちゃんと18年前に調べています。ですから、相変わらず私を悔しがらせてくれます。
ただ、たいへん残念なことに6前に脳内出血で倒れ、後遺症で目も耳も聞こえづらくなり、フィールドに出ることが思うようにできなったと聞いています。それでも、箱根でスズメのセンサス調査を行い、自身の32年目のデータと比較しているのですから凄いものです。
私自身、年取るとできなくなることがたくさんあることを実感しています。今になれば、年取って耳が悪くなるのは当然のことと思うのですが、若い頃はこれがわからないのです。幸いにして私は、蒲谷鶴彦先生から年取るとヤブサメなどの声が聞こえなくなると、アドバイスを早くからいただいておりました。おかげで、聞こえるうちに録音をしておくことができました。しかし、バードウォッチングや研究については、諸先輩から助言をもらいそこねています。今になって、もっといろいろアドバイスを受けていれば良かったと思うことしきりです。
有田さんの論文集を見ると、年取ってもできなくなることばかりでなく、できることもけっこうあることがわかります。運良く長生きできれば、長生きしたなりバードウォッチングの楽しみ方があり研究論文が書けることがわかります。ある意味、若い研究者が将来を見据えて研究計画を考える上で参考になると思います。
この先も、まだまだ有田さんには悔しい思いをさせられそうです
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