暑いところ、冬の話で恐縮です。BIRDER誌から先シーズンの冬鳥の状況と來シーズンの予想というアンケートが来たので、冬鳥について考えてみました。先シーズン、冬鳥が少ない、とくにツグミが少ないというのが話題になりました。「今年はツグミが少ないね」がバードウォッチャーの挨拶がわり、多くのバードウォッチャーが気づくほど少なかったです。
私は、1984年から六義園においてセンサス調査を行っています。その経験から申し上げます。じつは、六義園のツグミは1980~1990年代にかけては1~2羽が越冬しているだけでした。ところが、近年5~6羽になり増えた鳥となっています。それが、先シーズンは1羽、ようするに昔と同じになったという印象です。昔の数を知っている者としては、昔に戻った感じでそれほど特殊な感じはいたしません。
面白いのは、1羽しかいなかったツグミが、1988~1989年はとても多かったのです。渡って来たばかりの頃は、100羽もの群れが入りました。ところが、この年はツグミばかりではなく、シロハラ、ジョウビタキも多く、これらの鳥が連動して増減していました。増加も連動しているのですから、減少も同じ傾向にあり、先シーズンはシロハラ、ジョウビタキも多くありませんでした。
もうひとつ、先シーズン六義園のツグミで面白いと思ったことがあります。近年、増えたツグミは、警戒心が極めて薄く芝生のような環境でもすぐ近くまでやってきます。また、身体の色がはっきりしているきれいなツグミが多いのです。写真は、まず2010年4月14日に撮影したツグミです。顔や胸の黒が濃くて、全体に濃淡がはっきりしています。そして、こちらに向かってきています。レンズの焦点距離は、450mm相当です。
つぎは、今年2012年4月3日に撮影したものです。顔や胸の黒が淡く、全体にくすんだ感じです。レンズの焦点距離は、300mm相当です。
これは、六義園ばかりではなく、都内の公園や近郊の緑地で出会ったツグミでも同じような印象を受けました。どうも、今年東京周辺にやってきたツグミは、いつもの年の個体群とは違う群れが入ったのではないかと思います。
アンケートでは、原因についても聞かれましたが、私にはわかりません。繁殖地の気候や環境の変化と想像ができますが、検証する手立てがありません。
2000年頃だったと思いますが、ホトトギスやカッコウが激減したことがあります。本当にホトトギスやカッコウの声が日本の山野から消えてしまいました。この時、これからどうなるのだろうと、いろいろ憶測が語られましたが、3年ほどで昔に戻りました。少なくとも日光ではもどっています。いったい、あのときの騒ぎはなんだったんだろうと思います。ツグミの減少も同じように何事もなく、元に戻ることを祈ります。
また、ホトトギス=夏鳥、ツグミ=冬鳥の違いは大きいですが、長年鳥を見ていると、いくつかの種や仲間の単位で、増減をしています。ある意味、鳥は増減するのが普通だと思います。それが、数年、あるいは数10年単位なのか、あるいは100年単位なのかの違いはあると思います。また、人の影響から種の勢いなどもあると思います。いずれにしても、長い目で見ないとそう簡単に減った増えたは言えないと思います。
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