新しい分類と『鳥NEO POKET』の紹介
今回の日本鳥学会では、新しい分類によるリストが発表になるというのが、ひとつのエポックでした。念のために書いておきます。日本の鳥の名前は、日本鳥学会によって統一されています。もちろん、勝手に名前を作っても良いのですが、それなりの根拠のある見識がなくては支持を得ることができません。私のように見識がなく図鑑の制作に関わる者にとっては、学会の発表するリストがどうなるのか、とても気になるのです。
リストは、正しくは『日本鳥類目録』と言い、日本鳥学会の創立10周年を記念して発行されて以来、今回は改訂第7版目となります。今回は、とくにDNAなどの研究の発展により、分類が大きく変わっています。たとえば、今までのリストはアビから始まってスズメの仲間になり、ワタリガラスで終わるというものでした。新しいリストでは、キジの仲間が最初になり、カイツブリよりカモが先に来るなど、大きく変わっています。そして、スズメ目の中も最後はホオジロの仲間となります。かなり前から欧米の図鑑では、この順序で整理されていたのですから、日本は遅きに失した感があります。
たとえば、今まではタカとハヤブサは隣同士の間柄でした。今回は、その間にフクロウ、キツツキなどが入り、ハヤブサはオウムに近い仲間となり、非スズメ目の最後となっています。ミフウズラもキジの近くにいましたが、カモメやチドリと並び、キジからはかなり離れた位置となります。
今までの分類は剥製から形態によって分類されてきましたが、DNAの解析からどの仲間からいつ分化したのか解るようになった結果です。アマツバメとツバメをいっしょにしてツバメと名前を付けた昔の人を分類の知識がなかったと言うのと同じように、今度は言われなくてはなりません。
なお、私の気にしていたオオムシクイは、コムシクイともども、独立した種となりました。しかし、蒲谷鶴彦先生が種として提唱されたオオトラツグミは亜種のまま。ちょっと残念です。
これからは、頭を切り換えて新しい分類順に馴れなくてはと思いながら、学会から帰ってきたら小学館から『鳥NEO POKET』が送られてきていました。
なんと、この本は新しい分類に従って作られています。NEOシリーズは、大判の子供用図鑑として定評のあるシリーズ、『鳥』は大人も楽しめる図鑑でした。それが、新書版のサイズとなり野外へ持っていけるようになりました。先日、お会いした小学館の編集者からポケット版を出すと聞いていましたが、まさかこのタイミングとはすごいものです。まずは、この本で新しい分類に慣れ親しむことができると思います。
鳥 (NEO POKET)
柚木 修・著、上田恵介・監修、水谷高英・イラスト
単行本: 192ページ
出版社: 小学館
ISBN-10: 4092172877
ISBN-13: 978-4092172876
« ”Forest Notes”という名のスピーカー | トップページ | 山階芳麿賞と70周年シンポジウム »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『鳥屋の本読み』卒業(2023.01.24)
- 1960年代のAudubon Magazine-アメリカの録音事情(2022.12.30)
- 小林重三の『狩猟鳥類掛図』(2022.12.04)
- 柳沼俊之さんの野鳥カレンダー2023-ご案内(2022.11.07)
- まぼろしの図鑑刊行-ご案内(2022.09.28)
「研究」カテゴリの記事
- 伊香保の謎の鳥-鳴き声をアップ(2021.12.11)
- アオバズクの鳴き声-倍音の課題(2021.10.13)
- コガラのさえずりの課題(2020.11.20)
- 一度に2つの声を出せる-クロツグミ(2019.12.30)
- 日本野鳥の会神奈川支部の「BINOS 第26集」(2019.12.05)
コメント