オススメ本『ミゾゴイ-その生態と習性』
暑くってどこにも行く気になりません。この暑さは、営業妨害です。ということで毎日、読書に明け暮れています。
文庫本ばかりでまずいと、今日は鳥の本に目を通しました。川名国男著の『ミゾゴイ-その生態と習性』です。イギリスやアメリカでは、1種類だけを扱った内容の専門書がたくさん出版されています。こういった本をモノグラフと言いますが、日本では多くありません。それだけ、1種類の鳥を1冊の本になるくらい極めている研究者が少ないということになります。ということで、川名さんはミゾゴイを極めています。
先日アマゾンで購入、奥付を見たら自費出版でした。どうりで、大型書店を探しても売っていないはずです。自費出版らしく製本もレイアウトも質素な造りです。しかし、ミゾゴイの繁殖生態を克明に記録しています。
以前、記事にしたように私のミゾゴイの音源は使用に耐えるものではありません。図鑑の企画で、ミゾゴイの音源が必要なときは、あきる野市在住のM上さんから「好きなように使って良い」と預かっている音を使っています。これは、M上さんが家に帰ったら玄関の前でミゾゴイが鳴いていたので、家にカセットテープの録音機を取りに行き、録音したというものです。家の前でミゾゴイが鳴くあきる野って、いったいどんなところだろう思ったのですが、川名さんの記録もあきる野でした。
本来ならば身近な自然であった里山に生息していたミゾゴイの詳しい生態は、ぜひこの本を読んでいただきたいと思います。ここでは、鳴き声についてのみ紹介させていただきます。記録では、鳴いたのは4月14日~24日のわずか11日間。ただし、ほぼ一晩中鳴いていたとのことです。どうも、鳥というのはさえずっても、反応する相手がいないと鳴く必要がないと判断して、鳴き止んでしまうようです。昔の記録を見ると、さえずりの期間も頻度も長いのです。それだけ、密度が高かく鳴き合う相手がいたのでしょう。他の鳥でも同様で、数が少なくなると鳴くのは渡来直後のみとなり野鳥録音を難しくしています。いずれにしても、現在では4月中旬にミゾゴイ作戦を実施しなくてはならないわけです。なお、鳴き始めるは日没後前後の夜の鳥のゴールデンタイムです。
なお、筆者の使用機材の紹介では、OLYMPUSのLS-10が記載されていました。メモリー録音機の発達と普及が、ミゾゴイの鳴き声の解明にも活躍したことでしょう。
『ミゾゴイ-その生態と習性』
川名国男・著
A5版168ページ
ISBN-10: 499064560X
ISBN-13: 978-4990645601
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