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2012年9月 6日 (木)

障害者とバードウォッチング

 昨日、日本野鳥の会の事務所にて、目の不自由な方へのバードウォッチングをどのように展開するかの検討を行いました。今から20年前、日本野鳥の会では盲人用の図鑑『さわる図鑑』を作りました。当時、職員だった私も関わりました。とくに、この図鑑を使っての探鳥会の指導にたずさわりました。そのとき、レクチャーを受けたのが筑波大学の鳥山由子先生です。昨日も鳥山先生にお越しいただき、目の不自由な方を取り巻く環境の変化など実情をうかがいました。
 20年前、印象的だったのは鳥山先生に「赤い鳥を赤いと言って良いのか」という質問をしたら「かまわない。色が解らなくてもきれいな色をしているという感動が伝われば良い」と言われたことです。重ねて、伝える側が感動していなければその感動が伝わらないという主旨のことを言われました。これは、健常者への指導でも言えることだと思い、今までの指導の姿勢を大いに反省したしだいです。
 また探鳥会の当日、私が「コゲラいます」と参加者に教えたら「2羽いますね」と言われました。しばらくするともう1羽が顔を出し、本当に2羽いたのです。健常者の私には1羽しか最初は見つけられなかったショックは大きいものでした。このことは、鳥山先生も覚えていて、私が驚いていたことはもちろん、それを言った盲人の方の方の名前まで記憶されていたのには驚きました。かくも、いろいろ学ぶことの多い障害者向けのバードウォッチング企画、今後どのように展開できるかは担当のH田さんの手腕に期待をいたします。
 ところで、打ち合わせのあと安西英明さんが事務所のある敷地で、カネタタキがよく鳴いていると教えてくれました。見送りのついでに、鳴いている場所に案内してくれました。以前、記事にもしたように私にはカネタタキの音が聞こえません。私は、5,000Hz以上の音が聞こえません。カネタタキの声は、6,000~7,000Hzですから、かなり近くで鳴いてくれないと聞こえないのです。
 ですから、安西さんから「今、鳴いている」と教わっても残念ながら私には聞こえませんでした。安西さんは私より6歳若いのですが、私は6年前には聞こえなくなっていましたから、安西さんの耳は私よりはるかに若いことになります。
 言っておきますが、安西さんが私に意地悪をしているわけではありません。高齢者が多くなったバードウォッチャーにどのように指導をしていったら良いのかの情報交換なのです。たとえば、私はアオジの地鳴きが昔とは違って聞こえます。高い音が聞こえなくなり、低い部分だけが聞こえるからです。そうなると、高齢者には「チッ」と鳴くと教えるより「ツッ」や「ズッ」と鳴くと言った方が伝わるのです。このあたりのことがわからないと指導がうまくできないのです。
 年を取ると言うことは、少しずつ障害者になっていくことなのかもしれません。しかし、昨日の記事に書いた有田さんの活動、目の不自由な方の感性などを考えると、それほど悲観することはないと思っています。
 

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コメント

ボクは右耳が聞こえづらくなり去年2回目の手術をしました。鐙骨が動きにくくなったのをチタン製の部品に取り替えてもらったのですが、なんと高音がよく聞こえるようになりました!
これまでアオジの地鳴きがビシッとかブツッと聞こえていたのがチッと聞こえるようになったのですよ。
手術してくれたドクターは言語聴覚の研究者でもあり12年前の手術の時に蒲谷先生の「野鳥大鑑」がほしいと言われ斡旋したことがありました。
去年の手術後お話をしたら今はバイノーラル録音とかをしているそうです。

丹羽康勝様
 チタン製の鐙骨ですか。なんだかサイボーグになった感じですね。それで聞こえるようになるというのは、蝸牛管は老化していなかったのですね。
 音にこだわると行き着く先のひとつがバイノーラル録音なのですね。どんな音を録るのでしょう。

まつ様

 こんばんは。 カネタタキの声が聞こえないという事で、今盛んに庭の植木からチンチンチン♪と聞こえてくるのですが。 ためしに右耳を塞ぐと左耳は全く聞こえてないのに気づきました
今までヤブサメの囀りが聞こえていたのも右耳だけで聞いていたようです。
今年53になりますが、これが普通なのでしょうか。。
9割は耳に頼っている探鳥なので、聞こえなくなれば当然周波数の高い声の鳥を見つけるのは難しくなりますね。

kochan様
 私は50歳過ぎから自覚するようになりました。私の場合、右耳のほうが進行が早いです。
 おそらく、鳥や虫の声を聞いていなければ気がつかなかったでしょう。普通の生活には、今でも支障はないのですから。
 運良く長生きできれば、いずれはこうなるわけで、そのための準備できるか、あるいはしておくかは、録音をする者にとっては大きいと思います。
 

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