『高尾山野鳥観察史-75年の記録と思い出 』のご紹介
高校時代、新浜探鳥会に行くと日本野鳥の会東京支部(当時)の幹事の方々が難しいと言われているシギやチドリの識別方法を教えてくれました。そんな幹事は、同年代の私たちから見ると雲上人でした。その一人に清水徹男さんがいました。幹事同士では”しみてつさん”と呼ばれ、難しい鳥や解らない鳥がでると清水さんが呼ばれていたのを覚えています。そのうえ、清水さんは私たち初心者にも丁寧に教えてくれる信頼のおけるオジさんでした。
実は、清水さんのフィールドが高尾山であることを知ったのはだいぶ後です。板橋区の奥のほうに住んでいた私にとって、高尾山探鳥会の集合時間には始発のバスに乗っても間に合いません。そのため、今の軽井沢や日光以上に遠い存在、あこがれの探鳥地でした。今思えば、その高尾山をフィールドにして、バードウォッチングの技術を磨いていたのですから、名幹事として信頼され親しまれていたのもなっとくできます。その清水さんが高尾山の本を出版されたましたのでご紹介いたします。『高尾山野鳥観察史-75年の記録と思い出 』です。
高尾山は、今や一大観光地になってしまいましたが、本来は信仰の山。探鳥地として知られるようなったのはそれほど昔ではありません。といっても戦前のことで、その一人の開発者が蒲谷鶴彦先生であることも知りました。1940~1948年の間、なんと300回も高尾山に行った記録をつけ『武州高尾山の鳥』として発表されています。蒲谷先生は戦前に高尾山でバードウォッチングを極め、戦後に野鳥録音を始めたことがわかります。先生からは「当時は京王線の高尾山口駅はなく国鉄の高尾駅から歩いたので記録にハシボソガラス入った」「夜に野犬の群れに囲まれて怖い思いをした(この本で奥様が語っています)」などのエピソードはうかがっていましたが、先駆者の一人であることを改めて知りました。
こうして高尾山を語ることで戦前、戦後の日本野鳥の会の活動、バードウォッチングの歴史を知ることができます。また、野鳥の記録は自然の変化を把握する上で、貴重な資料として歴史的な価値もあります。それが、この本一冊に凝縮されているのですから読むしかありません。
ところで、カミさんが91ページの「1970.05.24(5) 全員でアカショウビンを充分に観察、ケーブル山上駅手前」を見て、「このとき、いっしょにいた」と言い出しました。(5)は月定例探鳥会5回目の意味で、まだ探鳥会として定着したばかりの頃です。それにしても、関東地方では珍鳥となっていまったアカショウビンが、高尾山でふつうに見られたのです。それを清水さんと共有できたなんて、なんも羨ましいことです。
タイトル:高尾山野鳥観察史-75年の記録と思い出
著者:清水徹男
出版社: けやき出版
ISBN-10: 487751483X
ISBN-13: 978-4877514839
発売日: 2012/11/21
装丁:四六判279ページ、ペーパーバック
アマゾンのURL
http://www.amazon.co.jp/%E9%AB%98%E5%B0%BE%E5%B1%B1%E9%87%8E%E9%B3%A5%E8%A6%B3%E5%AF%9F%E5%8F%B2%E2%80%95%E2%80%9575%E5%B9%B4%E3%81%AE%E8%A8%98%E9%8C%B2%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%84%E5%87%BA-%E6%B8%85%E6%B0%B4%E5%BE%B9%E7%94%B7/dp/487751483X/ref=sr_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1353896254&sr=1-2
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