アルジェリアの被害者はバードウォッチャー
アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による人質事件で死亡が確認された日本人の一人、伊藤文博さん(59)がバードウォッチャーであると報道されています。Facebookで、日本野鳥の会のT岡さんからの情報です。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130122/t10014981601000.html
はるかアフリカの事件として遠い存在であった事件が、同年代のバードウォッチャーが巻き込まれたことで急に身近なものになりました。異国の地で、不幸に会われたことはたいへん痛ましい出来事、言葉がありません。
報道によれば「愛鳥会」となっていますが、宮城県南三陸町の愛鳥会といえば、故・田中完一さんが1953年に創立させた「志津川愛鳥会」ということになります。田中さんは、日本野鳥の会の宮城県での活動の礎となった方で、地元の友人知人が指導を乞い、宮城県はもとより日本の自然保護の場で活躍されている方々が多数おります。亡くなられた伊藤さんは、30年前の文集に原稿を寄せたとありますから、少なくとも田中さんの教えを直接受けたことになります。
私はかつて「鳥と兵隊」という小文を書いています。
http://homepage2.nifty.com/t-michikusa/bird&soldier.htm
太平洋戦争当時、海外旅行がままならない中、外国へ行けるのは出兵した兵隊で、そのなかにはバードウォッチャーがいてバードウォッチングを楽しんでいたという報告です。今や世界中でバードウォッチングを楽しめますが、サハラ砂漠という辺境の地へのバードウォッチング・ツアーは無いでしょう。伊藤さんが志津川愛鳥会に寄せた文章には、アルジェリアやマレーシアなどで見た鳥のことを「このときほど鳥を見る楽しみに感謝したことはない。日本ではたまにしかお目にかかれない鳥も見たし、また、当然、日本では見られない鳥も見た。外国製の図鑑が鉛筆やボールペンの書き込みで、少しずつ賑やかになっていく」と、お書きになっています。このあたりの心情は戦中、海外派兵されたバードウォッチャーと変わりありません。伊藤さんは、企業戦士とも言える厳しい環境と政情のなかでのお仕事、野鳥との出会いが支えになっていたことと思います。
ちなみに、田中完一さんの剥製や資料などのコレクションは、山階鳥類研究所に寄贈される予定でしたが、3.11の津波により消失してしまいました。バードウォッチング界においては、2重の不幸ということになります。
重ねて伊藤文博さんのご冥福を心からお祈りいたします。
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