« いちおうモミヤマフクロウの声か-山形 | トップページ | 1日40,000人-六義園 »

2013年3月27日 (水)

トラフズクのCourtship wing clap-山形

 先日のトラフズクの声は、アップしようか悩みました。というのは、実際に聞こえた声とかなり違うのです。野外では、ささやくように聞こえ耳を澄まさなくては聞こえません。その印象のまま、アップすればかなり聞きづらい音源となります。アップするためには、わかりやすく聞きやすくしなくてはならず困りました。いわば、迷彩服を「目立つように撮影しろ」と言われ、困ったカメラマンの気持ちです。
 トラフズクの小さな声を聞いた後、ご案内いただいたY川さんと話題になったのは、こんな小さな声でなわばり宣言になるのか、雌を呼べるのかという疑問です。「ホ。ホ。」はどう考えてもさえずりなのですから、その効果が無くてはなりません。
 山形のトラフズクの密度が高いとは言え、それぞれ数kmは離れています。雄同士が鳴き合ってなわばりの確認ができるとは思えません。また、雌にもどれだけ聞こえるのでしょう。だいたいお寺や神社の参道の並木ですから、境内の長いところでは100mほど。端にいたら聞こえないかもしれません。近くにやって来た雌へのアピール効果はあるかもしれませんが、離れた雌を呼ぶのは無理でしょう。
 ということで、いろいろ調べて見ました。
  Owl Pagesというフクロウ類のWebサイトに、トラフズクの声がアップされています。このURLの下の方です。
 http://www.owlpages.com/sounds.php
 スペインの方が録音しているので、おそらくスペイン産のトラフズクだと思いますが、 Courtship wing clapという音がアップされています。”求愛のために翼を叩く音”です。これを聞くと「パッチ」と聞こえます。
 さらに、”Long-eared Owl Courtship wing clap”で検索すると下記の論文がありました。
Hawley,Raymond G. 1966 Observation on the long-eared Owl. Sorby Record.Vol.2(3)95-114
 下記URLで読めます。
http://www.sorby.org.uk/pubs/downloads/Observations%20on%20the%20Long-eared%20Owl%20-%20Hawley%20-%20SR1966.pdf
 イギリスのサーフィールドにある協会の雑誌に掲載されたもので、1966年に発表されています。このほかも論文もあたりましたが、これがいちばん声についての記述が充実していました。これによると、雄はさえずりの合間に翼を叩きながら飛ぶ、翼は体の下で打ち鳴らさせる、音は大きくややこもった音の人の拍手に似ている、羽ばたきの間に行われるが非常に早く打ち鳴らすので高度が落ちることはない等々、Courtship wing clapは普通に行われ、よく聞かれるようです。
 ということで、Owl Pagesの音をたよりに今回の山形で録音した音源をチェックしてみました。すると、同じような音が録音されていましたのでお聞きください。YAMAHA W24で録音、低音ノイズの軽減、該当の音のアップ、ノイズリダクションをかけています。



 「ホ。ホ。」と鳴いた後に「パッチ」という音が聞こえます。1、2、3回目の音の間は1.8秒と等間隔です。また、音がだんだん遠ざかっていることがわかります。以前からY川さんもこの音を聞いており、枝にぶつかる音だと思っていたとのこと、山形のトラフズクもCourtship wing clapをけっこうやっていることになります。
 ただ、フクロウ類は嘴を叩いて威嚇する行動をよくやります。この場合、音が遠く鳴っていきますので、飛びながら音を立てているCourtship wing clapの可能性は高いと思いますが、いかんせん見ていないので確認できません。
 いずれにしても、翼を打ち鳴らす音でさえずりの声が小さいことをおぎなっていることがわかりました。翼を叩く音が大きく良い音がするということは、強い翼を持っているという雄のアピールになることは想像できます。
 闇夜のなかでのトラフズクの求愛行動、やはり音が勝負の世界でした。

« いちおうモミヤマフクロウの声か-山形 | トップページ | 1日40,000人-六義園 »

観察記録」カテゴリの記事

コメント

まつ様
サラッと書かれていますが、これはすごい発見ですね。
トラフズクが羽打ちするなんて、ワクワクします。

日本でこのことを書いたものは今まで無いのではないないでしょうか?

まさか、目が開いている写真を撮りたくて手を叩く、悪質カメラマンの音ではないですよね?(笑)。

フクロウの羽根は獲物を捕らえるだめに音が出ない構造になっているのに、求愛や縄張りのためには音を出さなければならないとしたら、ジレンマですね。
どんな風に音を出すのか?見てみたいものです。

S木様
 毎度です。
 トラフズクの翼を打って音を出すというのは、外国の文献やWebサイトには書かれていますが、おっしゃる通り日本での記録はなかなか見つかりません。私も気になって調べていたところです。
 見つけたのは『フクロウ-その生態と行動の神秘を解き明かす』(2007・Birder編集部)に大沢八洲男さんが育雛期の話として「飛びながら翼を打つ『パッ、パッ』という音が聞こえてきます。雛の存在を知られないように雛をなだめて鳴くのをやめさせるためなのか、それとも営巣林に入った人間に対しての威嚇の行動なのか」と書いています。求愛の行動とは認識はされていないようです。音だけの世界ですので意味まで判断するのは、難しいところだと思います。
 カメラマンの拍手、やっているようですね。ただ、求愛の音ですから反応するのは雌だけかもしれません(笑)。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/556172/57045696

この記事へのトラックバック一覧です: トラフズクのCourtship wing clap-山形:

« いちおうモミヤマフクロウの声か-山形 | トップページ | 1日40,000人-六義園 »

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック

無料ブログはココログ