石沢慈鳥と鳥類-山形県立博物館
石沢慈鳥の聞きなしや俗説の考証などの文献は、『野鳥大鑑』執筆の折、おおいに参考にさせてもらいました。その石沢が、山形出身とは知りませんでした。日本野鳥の会山形支部のY川さんから、山形県立博物館で「石沢慈鳥と鳥類」の展示会が開催されていると聞いて、今回の山形行きのスケジュールに入れました。
中西悟堂も山階芳麿も知らないバードウォッチャーがいるなかで、石沢慈鳥を知っている人がいるのでしょうか。そんな時代に、石沢の企画展を開催した山形県立博物館には、感謝です。
石沢は、悟堂が日本野鳥の会を中心に活動を開始する以前の鳥業界を担った一人です。悟堂の存在が大きいだけに、それ以前の鳥業界の活動は目立ちませんが、石沢など多くの研究者が鳥業界を支え、そのおかげで日本野鳥の会の発足に至るのです。
石沢は、林野庁の鳥獣調査室に勤務し研究をしました。この調査室は内田清之助が礎を築いたものです。その事業は林業試験場、そして現在の森林総研へと連綿と受け継がれている国政のなかの研究機関です。石沢の歩んだ道は、いわば日本の鳥類研究の王道であったのです。また、戦中戦後の動乱期にも関わらず鳥類研究を続け、現在こうして私たちが安穏とバードウォッチングを楽しめるのも、彼のような人がいたおかげだと思います。
展示の多くは、石沢のコレクションの剥製と卵です。剥製と卵が並んでいるので、ミソサザイは体の大きさのわりに大きな卵を産んでいることがわかるなど、新鮮な発見があります。また、剥製のラベルと見るとタマシギが千葉県松戸で採集されていたなど、昔の生息地を知ることができました。
石沢の出身地は、山形県東村山郡長崎町(現在の中山町)です。前日、Y川さんに田んぼにコハクチョウの群れが下りていると案内してもらったところでした。広大な田んぼがひろがり、東に蔵王、西に朝日岳などの山々が望めるのどかな風景が広がっていました。ここで、石沢少年が野鳥に目覚め、自然に親しんだかと思うと感慨無量です。
「石沢慈鳥と鳥類」展は、2013年5月12日まで。詳しくは、下記URLでお確かめください。
http://www.yamagata-museum.jp/event/schedule/h24/ishizawa_jichou/
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