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2013年4月26日 (金)

Mさんに鳥に触れてもらう-行徳野鳥観察舎

 私の子供の頃、家にはブンチョウやジュウシマツがいました。ちょっと金持ちのお宅ではセキセイインコを飼っていたものです。それだけに、鳥に触れる機会もありました。捕まえると、手のひらのなかに鼓動と温もりを感じることができました。鳥についての知識はなくても、そこから生命を感じることができたのです。その体験のおかげで、もちろん飼ったことのないオオルリの声が聞こえてきても、脈動している小鳥が木の上でさえずっているというイメージをいだくことができます。
 ですから、目が見ないのに関わらず野鳥録音を楽しんでいるMさんに一度くらい鳥を触らせて上げたいとずっと思っていました。以前、記事にしたようにバードウォッチング展でタッチカービングに触れてもらいました。そのため、鳥の大きさや形を知ってもらうことはできたと思います。ただ、生の鳥の持つ、羽毛の柔らかさや軽さ、そして鼓動は未体験です。
 しかし、生きている鳥を触れる体験をさせたいと思っても、できる場所がありません。録音仲間の福岡在住のT中さんは、目の不自由な方と中国を旅行したときに、鳥を売っている市場で触ってもらったそうです。皆さん、感動し感謝されたそうです。しかし、飼い鳥を容認するのかと非難もされたとか、そのご苦労を伺いました。そして、鳥インフルエンザが蔓延している中国では、もうかなわぬことでしょう。
 そこで、傷病鳥の施設で触れることができないかと考えました。いつも、お世話になっている千葉県市川市にある行徳野鳥観察舎のN瀬さんに相談したところ、ご快諾いただき、本日来訪いたしました。
 全館掃除日という多忙な日にかからず貸し切り状態で、お世話いただきました。まず、Mさんには館内に置いてあるコブハクチョウやトビの羽毛、コガモ、セグロカモメ、ハシブトガラスの翼の剥製を触ってもらいました。1枚1枚の羽毛の仕組み、翼の構造を触って知ってもらうことができました。
 予習の済んだあと、いよいよ本物の鳥に触ります。まず登場してもらったのはオオコノハズクです。最初は、ちょっと機嫌が悪く嘴をパチパチならしていましたが、Mさんの手の上に乗ると静かになりました。Mさんの感想は「軽い、温かい」でした。そして、生命が手のひらにあると実感していただきました。そのほか、ドバト、オシドリ、ユリカモメ、アカエリヒレアシシギ、ムクドリ、カワラヒワを手にしてもらいました。
 大きな鳥は、翼をバタバタさせます。そのため、その風を頬に受けたMさんには鳥が飛ぶ時の勢いを感じてもらいました。はばたきがこんなに力強いことなのかと実感し、鳥はこんなふうにして飛んでいるのだと理解できたそうです。
 小さな鳥たちは、意外と手の上でじっとしてくれるので、軽さと温かさを感じてもらうことができました。なんでも、カワラヒワがいちばん温かく感じたそうです。
 最後にMさんにリクエストを聞いたところ「トビを触りたい」とのこと。Mさんは、トビの声がとても好きでしたがなかなか録音できず、今年の2月やっと録音できただけに、どんな鳥なのか触ってみたいという希望です。これにはM瀬さんも躊躇しましたが「やってみましょう」と、持って来てくれました。
 トビとは言え猛禽類なので、鋭い嘴が心配です。まず顔を布で覆いました。抱いてみての重さ、そして翼や尾の大きさを触ってもらいます。少し馴れたところで、布を取り嘴の鋭さも触ってもらいました。念願のトビが思っていたより、ずっと大きな鳥であったことに驚いたとのこと、感動が続きます。
 このような体験は私も初めてのことです。おかげで、鳥に触ることで伝わることの多くを知ることができました。目の不自由な方のさわり方、触らせ方もわかりました。N瀬さんは、Mさんの手の平に小鳥を乗せ、そのまわりをそっと手で覆い、鳥が逃げられないようにし、重さや温もりが伝わるように工夫してくれました。このほうが、掴むよりおとなしくしてくれるのです。こうして、少しでも鳥へのストレスを減らしてやる工夫や課題ががあることがわかりました。
 いずれにしても、目の不自由な方たちに鳥を体験してもらう一つの方法として”触る”経験ができました。目の不自由な人へのバードウォッチングの普及について光明が見えてきた感じがします。
 N瀬さん、お忙しいところお世話いただき、ありがとうごあいました。

 追加コメントです。
 目の不自由な方に生き物に触れてもらう授業は、普通に行われているそうです。Mさん自身、トカゲからヘビまで触ったことがあって、平気だったとのことでした。Mさん自身は、鳥は初めてですが、ニワトリなどに触らせることはあると聞いています。
 なお、このことから飼い鳥を容認するものではありません。野生生物を個人や組織の所有にすることには、反対です。ただ、傷病鳥の多くは翼を痛めたりして自然復帰が難しい個体です。飼い殺し状態の傷病鳥に、少し役だってもらうというスタンスです。
 また、傷病鳥であるため障害のある方にとって、気になるのではないかと思いました。たとえば、オオコノハズクは片目が見えません。カワラヒワはMさんと同じように両目とも見えない個体です。ただ、このカワラヒワは全盲にも関わらず自分で餌を取り、すでに数年生きています。このようなエピソードでフォローするというのもありかなと思いました。
 あと、鳥と接触するわけですから鳥インフルエンザの感染が心配でした。職員の方たちは毎日、触れていることですし、マスクもせず作業をしていましたので、現状では気にしないことにしました。ただ、念のために終了後にアルコールによる手の消毒を行ったことを書き添えておきます。

 

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