ツミの子育てを見る-アクシデント
ツミの産卵数は4~5個。「ツミ 雛」などで画像検索すると、写真に撮られている巣の上にいる雛の数は3~4羽で、高い繁殖率を誇っているようです。私が調べた周辺のハシブトガラスの繁殖率が、1.93羽であることを考えると、カラスより高いことになります。それだけに、増えたことになっとくができます。
観察していたツミは、4羽の雛を孵し2羽が巣立ちました。数字で言えば、50%なのですから、まずまずの成績と言えます。しかし、現実に2羽の雛が死んで行くのをまのあたりにするのはたいへん辛いものがありました。この雛たちは、思いもよらぬアクシデントに見舞われ命を落としたのです。
雛が大きくなり巣の中で羽ばたきの練習をする頃、1羽の雛が近くのサクラの木のなかにいるのをカミさんが見つけました。まだ、頭が白く産毛のある状態です。
巣から木までの距離は5,6mあります。その間は、飛べたことになります。見ていると、枝渡りをして木の中を移動しているので、元気は元気です。
普通、鳥は巣立つと2度と巣には戻りません。あとで知ったのですが、ツミは巣から出た後にも巣に戻り、巣の中にいたり、巣の近くで過ごします。ですから、この雛も巣から出ても巣に戻るつもりだったのでしょう。
ところが、この日の夕方、運の悪いことに東京地方は大雨に見舞われました。隅田川の花火が中止になったあのゲリラ豪雨です。翌日朝一で見に行きましたが、雛が見当たりません。周辺の藪や木陰も探しましたがいません。巣の中には3羽だけ、とにかく見づらい巣なので、これを確認するだけでも午前中いっぱいかかりました。
その後も、親鳥と幼鳥たちは17日間、巣の周りにいましたが、雛の数が4羽になることはありませんでした。たぶん、雨に打たれ木から落ちたところをネコやハクビシンに捕まったのではないかと想像しています。もし、あの豪雨さえなければ生きていたかもしれないと思うと、雨が恨めしいと思ってしまいます。
雛たちが巣立ち、巣の周りで飛ぶようになった1週間後、私がNHKラジオ『夏休み子供科学電話相談』が終わり携帯電話の電源を入れると、留守伝とショートメールがたくさん入っています。これは何事と思って留守伝を聞くと、K藤さんとS根さんから「幼鳥が、ヘビに襲われた」とのメッセージです。2人ともかなり気が動転しているようです。まず、私は飛べるまで成長した幼鳥がヘビにやられるなんて何かの間違いでないと思いました。後で、いろいろ状況をうかがうと、こういうことでした。
まず、巣のそばにいた幼鳥の1羽がばたばたしているのに気がつきます。しばらくすると、ツミが頭からアオダイショウに飲み込まれ状態で、ぶら下がっていることがわかりました。ヘビの大きさは1m50cmくらい。この公園では、大きなほうです。ヘビは、頭を飲み込んだものの雛の重さに耐えかねて、ぶら下がってしまいます。巣のそばですから、高さは25mもあります。助けようがありません。そして、ヘビは雛の重さに耐えかねて落下。2人の目の前に落ちてきたそうです。勇敢にもS根さんが、木の枝でヘビを追い払いツミを助け出しましたが、ときすでに遅く幼鳥は死んでいたそうです。普通ならば武勇伝となる話ですが、2人とも幼鳥を助けることができなかったことで言葉少なでした。
S根さんの撮った写真を見ると、ヘビは大きいとは言え、ツミの頭くらいまでしか飲み込めないサイズです。それなのに、なぜという思いがあります。また、幼鳥もいくら生まれたばかりで経験がないとは言え、なんとか避けられなかったものか思います。さらに、この事件の前後、親鳥のうち雄が姿を消しています。月之座さんちのツミも、幼鳥が飛びまわる頃に雄がいなくなっており、これはツミのスケジュールどおりの行動のようです。いずれにしても、雄がいなくなって防衛能力が落ちたところでだったのです。もし、雄がまだいたらと思うと悔やまれます。
なお、この幼鳥の死体は、山階鳥類研究所に送られ保存されることになりました。
続きます。
« ツミの子育てを見る-鳴き声 | トップページ | ツミの子育てを見る-情報管理 »
「観察記録」カテゴリの記事
- 新年おめでとうございます(2025.01.11)
- 戦場ヶ原に冬が来ました(2024.12.28)
- 伊豆沼のガン(2024.12.10)
- 冬のルリビタキ(2024.11.26)
- 秋の深まり(2024.11.10)
はじめまして。google検索から偶然たどり着きました。この記事へのコメントでなくてすみません。
日頃お茶の水を歩いていて、朝晩見慣れない鳥の群れに、何だろうとずっと思っていました。鳴き声を頼りにネット掲示板で質問しても、「かご抜けしたワカケホンセイインコだろう」と言われて、でも遙か上空を飛ぶシルエットはイワツバメに似ていました。しかも冬でもいるし。本日、たまたま三井住友海上ビルの近くを通ったら、群れがビルの屋上に降りるのでなく、壁面のでっぱりの裏側に入り込むような飛び方をしていたので、もしやはじめて目にするアマツバメの類ではと思い、ヒメアマツバメで検索して、「2011年7月31日 (日)ヒメアマツバメの声をゲット」という記事にたどりついた次第です。数年来の疑問が氷解して、へたり込みそうなくらい感激しました。ありがとうございました。
投稿: 月 | 2013年8月23日 (金) 23時44分
月様
拙ブログがお目にとまり恐縮です。その後、お茶の水には行ってませんが、ヒメアマツバメは健在なのですね。安心いたしました。
情報ありがとうございます。
投稿: まつ | 2013年8月24日 (土) 11時46分
鳴き声とても勉強になりました。
2016年3ヶ月半ほぼ毎日営巣を観察しました。
2017年同じ場所で観察して1ヶ月半になります。
雄と雌が同時に威嚇の声で鳴くのですね。雄は攻撃の際も声を出すことはなく、聞いたことがなかったです。今後気をつけて観察してみます。
投稿: Isekipark | 2017年4月25日 (火) 21時33分
Isekipark様
コメント、ありがとうございます。
ツミは、猛禽類のなかでは比較的よく鳴く鳥だと思います。それだけに、いろいろ意味がわかると思っています。
今がちょうど良いシーズンですね。お楽しみください。
投稿: まつ | 2017年4月25日 (火) 22時22分