念願の藤前干潟来訪
シギやチドリの渡りの季節です。この季節、名古屋で行くべきところは藤前干潟でしょう。実は、私はまだ訪れたことはなかったのです。
私が日本鳥類保護連盟に就職したときに、全国の干潟調査というのがありました。おかげで当時、日本でいちばん干潟を見た人になりました。この調査で、愛知県では木曽三川の河口に広がる干潟と干拓地が調査対象となっていました。また、木曽川河口に隣接する弥富干拓地が、日本で初めてソリハシセイタカシギが渡来し日本で初めてセイタカシギが繁殖したことで有名で、弥富も立ち寄りました。ところが、藤前干潟も庄内川河口も無名で訪れることはありませんでした。
ところが、木曽三川の干拓地が造成され干潟もなくなってしまい藤前干潟が注目をあびるようになり、それとともに名古屋市が増大するゴミの処理のために藤前干潟を埋め立ててゴミ処分場を作る計画が持ち上がり保護運動が行われます。1999年頃だったと思いますが、環境庁(当時)が主催して保護のためのシンポジウムが名古屋市内で行われました。私が、司会を仰せつかり進行役を務めました。シンポジウムは、名古屋市のゴミの担当者から干潟の研究者、鳥については東京大学の樋口広芳教授(当時)と豪華な顔ぶれで、けっこう緊張して司会を進行したのを覚えています。今、思うと名古屋市にゴミ処分場のための埋め立てを断念させた環境庁との手打ちといった意味合いがあったシンポジウムではなかったかと思います。しかし、私は多忙な時期で藤前干潟に行く時間が取れず、とんぼ返りしています。そのため、司会までした藤前干潟に一度は行ってみたいと思っていたのです。
F井教授に話すとご案内していただけることになり、セミナーのあと車で連れて行っていただきました。大学からカーナビに、あおなみ線の野跡駅を入れて1時間ほどで到着。クロマツの林を抜けると「名古屋市野鳥観察館」と「藤前干潟稲永ビジターセンター」が並んで建っていました。ただ、残念なことにまだ潮が満ちている上に昨日は小潮、あまり干潟は期待できない日でした。施設に置いてある望遠鏡で見ると、堤防の上にはカワウがずらっと並び、見渡せる範囲内だけでミサゴが5羽もいるのです。もし、これで潮が引いたらと思うと残念です。1時間ほどいると対岸の岸辺に少し干潟が出てきて、大型のシギが数羽舞い降りました。腰が白いので、ダイシャクシギだと思います。帰りの時間もあって、今日はここまで。それにしても、まわりを埋立地に囲まれたなかに干潟が忽然と現れてくるには不思議な感じです。東京湾にはない風景の中の干潟です。いずれまた藤前干潟に訪れ、シギやチドリたちの声を録音できればと思います。
F井教授におかげで懸案だった藤前干潟の来訪が叶い、車の運転から送り迎えまでお世話になりました。重ねてお礼申し上げます。
写真は堤防に並んでいるカワウ、なかにダイサギやアオサギもいる。手前の干潟にはウミネコ、ダイシャクシギも写っているはずの方向です。
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こんにちは
松田さんがいかれたのは、庄内川河口干潟で、正確には藤前干潟ではありません。
本来の藤前干潟は港区藤前地区の地先(青い大きな工場の煙突が見えていたと思いますが、そちら側)になります。
政治的な理由で、庄内川側を藤前干潟として宣伝するため、本来の場所を知らずその気になっている人が多いので、埋め立て問題の歴史があやふや化してきている印象があります。
次回来られる際は、ぜひ本来の藤前干潟へお越しください。
投稿: かにくん | 2013年9月15日 (日) 15時57分
かにくん
シンポのときは、狭義な意味の藤前干潟と広義な意味の藤前干潟という議論があったようにかすかに覚えています。
東京から行くと、あるいは紹介するのには、公共機関を使って行けるということが、条件になってしまいます。政治的な意図もそのほかの他意はありませんのでご理解ください。
投稿: まつ | 2013年9月15日 (日) 21時08分