秋から冬のさえずりの謎
1ヶ月前に引いた風邪の後遺症で、咳がなかなか抜けません。加えてぎっくり腰となり、咳をすると体中に痛みが走ります。会議やイベント、観察会の参加をキャンセルして皆さんには、ご迷惑をおかけいたしまして申しわけございません。当ブログが更新されないので、心配してメールをいただくなど、ご心配をおかけしております。
ということで、久しぶりの更新は日光野鳥研究会の会員限定BBSに書き込んだネタです。
野鳥録音をしていますと、秋から冬もけっこういろいろな鳥がさえずっているのに気がつきました。コゲラもドラミングをするなど、春を思わせる行動に出会います。なぜ、こうした行動をするのか、よく質問を受けますので私なりに考えてみました。
まず、秋から冬のさえずりについて総括的に解説された資料を見つけたことはありません。この手のネタ本の『鳥類生態学』(黒田長久・1982)でも、冬のなわばりについては、ジョウビタキとキクイタダキくらいしか解説されていません。
また、よく暖かい日にシジュウカラやホオジロがさえずるのは、春と間違えたためと言われることがあります。もう少し、科学的には秋の日差しを春と脳が判断して、繁殖に関わるホルモンが分泌されて、さえずると解説する先生もいるかもしれません。
私としては、下記のような理由があると思います。
1. 来年の繁殖期に向けて、冬もなわばりを守っておくため。なわばりに唾を付けておく感じ。たとえば、さえずりませんがハシブトガラスの場合、なわばりの占有歴の長いものは、なわばり内に冬も留まります。また、巣の上で鳴いたりして宣言をすることがよくあります。こうすることで繁殖期が始まってからなわばりの隙間を見つけて、劣悪ななわばりを確保するより、繁殖の成功率は高いことになります。
加えてハシブトガラスの場合、貯食場所を守らなくてはならないので、貯食ポイントのあるなわばりを冬も守っていると思います。ホシガラス、カケスも同じだと思います。同じようなことが小鳥類にもあるかもしれません。
2. 繁殖期が早いために、秋から冬もなわばりを守り番形成しているタイプ。たとえば、よく聞かれるのはセグロセキレイやハクセキレイ、水鳥ではカイツブリがそうだと思います。夏鳥が来る前に巣作り、育雛をしているような留鳥に多いと思います。このほか、フクロウもそうです。ミソサザイ、カワガラスも、このタイプではと思っています。
3. 秋から冬に番形成を行うタイプ。たとえば、カワラヒワがそうです。これは長野県のカワラヒワでこの習性が発見されました。秋から番うことで、結びつきが強くなり、繁殖率を高めるのではと思います。また、別の地方のカワラヒワを調べたら、春に番形成がされることがわかり地方によって違いがあることもわかりました。東京地方でも、秋に追いかけ合いが見られるなど、長野タイプかもしれません。カワラヒワと同じように、秋に番形成をする種、あるいは地方や個体によって、秋に番形成を行うタイプがいるのかもしれません。
ハシブトガラスを見ていると一年中、番でいます。同じようにヒヨドリも、冬も2羽で行動しています。スズメは群れもありますが、住宅地では2羽でいるのをよく見ます。シジュウカラの中には群れを作らず2羽でいるものもいます。こうした種類のなかには、なわばりを守るためや雌との結び付きを強くするためにさえずるものもいるのではないかと思います。
ただ、ヒバリもよく秋にさえずりますが、どのタイプかの判断は、難しいと思います。番2羽で行動していることも多いので雌に聞かせているのか、留鳥なのでそこでそのまま繁殖をするためのなわばり確保なのか、あるいは両方なのかの判断は難しいものもあります。
また、同じ種類のなかでも、さえずらないものもいます。なわばりに固執しないもの、番わないものもいるわけで、この違いは年齢なのか、地域差なのか、あるいはもっと他の理由があるのか、いろいろ考えることができると思います。
ただ、ここまでの話は、いろいろ検証されなくてはならないことが多いので、あくまでも推量です。これから、秋から冬のさえずりを聞く機会があると思います。その理由に思いをはせる材料にしていただければ幸いです。
アップした音源は、秋のホオジロのさえずりです。ヒヨドリとジョウビタキの声が秋を思わせます。栃木県日光市善法にて2001年10月22日にPCM-M1+AT825Nで録音、低音の軽減、ノイズリダクションをかけています。
「MeadowBunting011022.mp3」をダウンロード
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