マルハシの謎-『朝の小鳥』スタジオ収録
本日は、浜松町の文化放送にて『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。12月放送分です。12月の日曜日は5回あるので、5本録りとなりました。テーマは、6年前に行った台湾の鳥たちです。
今回、シナリオを書いていて困ったことがあります。取り上げたマルハシと言う鳥が分類的に正体不明だったのです。マルハシは、ガビチョウの仲間。ムクドリくらいの大きさの鳥で嘴が下に湾曲しているのが特徴であり、名前の由来になっています。声は、台湾の密林によく似合います。身体の模様は、頭は灰色がかった褐色、翼や背中から尾まで少し赤みのある茶色。喉から胸が白く、そこに黒い筋があります。そして、腹のほうが白くコントラストのはっきりした鳥に見えます。写真がアップされているURLです。
http://www.flickr.com/photos/mkuang/2470260579/
まず手元にある日本語の台湾の図鑑『台湾の野鳥300図鑑』(2009)を見ると、マルハシ(学名:Pomatorhinus erythrogenys erythrocnemis、英名:Rusty-cheeked Scimitar Babbler、台湾名:大彎嘴)となっています。台湾語の図鑑『台湾野鳥図鑑』(1991)も同じです。
しかし、Rusty-cheeked Scimitar Babblerを画像検索すると、この図鑑に載っている写真とは、どう見ても違う鳥が出てきます。頭から顔、脇胸がきれいなオレンジ色をしているのです。特徴である白い喉から胸にある黒い縦筋模様がありません。写真がアップされているURLです。
http://ibc.lynxeds.com/photo/rusty-cheeked-scimitar-babbler-pomatorhinus-erythrogenys/perched-branch-bushes
2つの画像を見ると、まるで別種のように違います。そして、こちらにホオアカマルハシという和名と表記されているものもありました。たしかに、ホオアカです。
そのため、マルハシと名前の付いた鳥を画像検索すると、この喉から胸に黒い筋があるのは、オオマルハシ(学名:Pomatorhinus hypoleucos、英名:Large Scimitar-Babbler)なのです。台湾の漢字名では同じになりますが、まさか種の学名まで違うはずはないだろうと、いろいろ調べて見ました。
まず、Pomatorhinus erythrogenysには、中国と台湾だけで8亜種あることがわかりました。脇喉が赤いものから黒い縦筋のあるものまでいることになります。ですから、喉の黒いものにBlack-necklaced Scimitar-Babblerという英名を表記したものがありました。ホオアカとノドグロの違いは亜種の違いだったです。
しかし、これだけ違いがあると亜種を種にする傾向のある”Birds of East Asia”(2009)ではどうなっているか見ると、やはり別種扱いになっていました。この場合、学名:Pomatorhinus erythrocnemisと種小名を種名に格上げして、Spot-breasted Scimitar-Babblerという英名が付けられていました。”Birds of East Asia”には、和名が載っていませんので、この学名と英名をキーワードに検索してみると、ムナフマルハシという和名が付いていました。結果、台湾のマルハシには、学名で2説あり、英名が3つ、和名が3つ付いていることになります。たぶん、これで良いと思いますが、調べ切れていない部分があって間違いがありましたらフォロー、よろしくお願いいたします。とにかく、これだけ確認するのに半日かかりました。
ということで、放送内容です。マルハシは4週目に登場いたします。
2013年12月の放送予定
12月1日 アオハウチワドリ
12月8日 ルリチョウ
12月15日 カノコバト
12月22日 マルハシ
12月29日 シロガシラ
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