« オオコノハズクの鳴く頃-その1 | トップページ | オオコノハズクの鳴く頃-その3 »

2014年4月29日 (火)

オオコノハズクの鳴く頃-その2

 日光野鳥研究会の日光植物園の自然観察会は花吹雪のなか、オオルリとキビタキの姿と声、鳴きながら飛び交うサンショウクイなどをたっぷり楽しむことができました。
  そして夕方、阿部♂♀さんと再度あのダム湖へ向かいます。まずは、コンビニで買ってきたお弁当を食べて待機です。少し寒いけれど気持ちの良い夕暮れの中、クロツグミとツツドリの声だけが聞こえてきます。
 ところで、オオコノハズクの声が聞こえるのはA部♀さんだけ、彼女の耳がたよりです。「鳴いている」と言ったら、その声が録音されてしまいますから、声で教えてもらうわけには行きません。以前、高音で聞こえないエゾライチョウが鳴いているのを教えてもらうために手を上げてもらいましたが、この衣擦れの音が入ってしまったことがあります。それに、まっくらなのですから手を上げても見えません。
 そこでA部♀さんから、鳴いたらヘッドランプの赤色灯を点けるのはどうかとの提案、グッドアイディアです。これならば、音はしません。それにしても、耳を澄まし音が聞こえたらボタンを押すのは、まるで人間ドックの聴力検査のようです。
 あたりが暗くなると、コノハズクが鳴き始めました。今日は、離れた山とダム湖を挟んだ対岸でも鳴いています。少なくとも、3羽が鳴き合っていることになります。昨日に引き続いて2羽が到着したようです。
 コノハズクの声に聞き惚れていると、視野のすみに赤い光が入りました。A部♀さんの合図です。慌てて録音機のスイッチを入れ耳を澄ましますが、聞こえません。しかし、赤いランプはつきっぱなしです。さらにじっと耳を澄ますと、かすかに聞こえてきました。確かに鳴いています。木魚のテンポですから、私の心臓の鼓動に似ています。自分の心臓の音かオオコノハズクの音なのか、迷うほどかすかな低い音が伝わってきます。
 オオコノハズクの声が聞こえてくるのは、目の前の山の斜面です。目測で、頂上までは100mくらい。その中腹の森から聞こえて来るのですから、30~50mは離れているでしょうか。コノハズクの声が、ダム湖の対岸、あるいは2つ3つ超えた山からでも聞こえるのに、なんと小さな声でしょう。
 アップするのは、YAMAHA W24のタイマー録音に入っていた音源です。こちらのほうが、少しボリュームがありました。オオコノハズクの声の音域100~350Hzの音を増幅、ノイズリダクションをかけています。

「JapaneseScops-Owl140426.mp3」をダウンロード

 実際は、このようにはっきりとは聞こえません。音はかすかな感じで、わずかに耳に音圧を感じるという鳴き方なのです。ですから、隣の部屋にスピーカーを置いて耳をすませたら聞こえるくらいのボリュームにして流したら、実際の音に近くなるかもしれません。
 タイマー録音のデータは、12時間×3台=36時間あります。ざっとしたチェックですが、オオコノハズクは一晩中、断続的に鳴いていました。鳴き始めると、数分鳴き続けます。また、イヌのような声、ネコのような声も入っています。イヌのような声が聞こえた後に木魚鳴きをするなど、彼らなりにルールがあるようですが、意味は不明です。
 オオコノハズクのさえずりは、100~350Hzが中心です。人が聞こえる低い音の限界に近い音域です。鳥同士は私たち以上に聞こえている可能性がありますが、それにしても音量の低さは驚異的です。日本の鳥のなかで、地味なさえずりベスト1でしょう。どうりで、オオコノハズクのさえずりを聞いた人がいないはずです。これでは、頭の上で鳴いてくれない限りわかりません。
 トラフズクも同じように音量が低いさえずりでしたが、飛びながら翼を打ち鳴らし音と動作で補います。オオコノハズクも、さえずり以外に何か動作をしているのでしょうか。課題はつきません。
 今、日本全国でオオコノハズクが、この声で鳴いていることでしょう。ただ、この季節に日没後、山でじっと耳を澄ませている人なんていないですから、出会えないだけなのかもしれません。オオコノハズクは、思っている以上に数の多い鳥なのかもしれません。
 A部♂♀さん、ありがとうございます。お陰さまで、念願のオオコノハズクのさえずりを聞くことができました。

« オオコノハズクの鳴く頃-その1 | トップページ | オオコノハズクの鳴く頃-その3 »

観察記録」カテゴリの記事

コメント

いやぁ素晴らしいです。
本当に木魚のようですね。オオコノハズクの喉もとがこの木魚のリズムで動いて、音量は小さいけど体全体に音を響かせてさえずっている姿を想像しながら聴きました。
いつか聞いてみたいです。

S木♂様
 あまり知られていない声だけに、見つかっていない可能性がありますね。
鳴き声を聞きつけるコツさえ把握できれば、きっと聞くことができると思います。がんばってください。

おめでとうございます!
自分も生で聞いてみたかったです。

音源データを聞きながら般若心経を読んでみたところ
実にしっくりときました。
正に天然の木魚ですねぇ。

いつか生のさえずりで
アウトドア読経してみたいです。

月之座様
 聞こえなくて残念でした。
 フィールドで読経は、私が録音していないときにしてくださいね。それより、怖いかも。

おはようございます。
皆さんが仰っているように本当に木魚と変わらないですね。私も生で聞くことができたらと思いました。

それにしてもこれほど規則的なリズムで鳴く鳥も珍しいのではないでしょうか?
「大自然のメトロノーム」と私は命名します(笑)

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オオコノハズクの鳴く頃-その2:

« オオコノハズクの鳴く頃-その1 | トップページ | オオコノハズクの鳴く頃-その3 »