花子が訳した『小鳥のさヽやき』
今日は神保町、小学館での打ち合わせでした。帰りに久しぶりに鳥海書房に立ち寄りました。あいかわらず、本のジャングルのような店内です。鳥の本の充実ぶりには、見ていてあきません。店長と話しながら本を見ていると、あっという間に小1時間経ってしまいます。
今日、ジャングルの中から見つけたのは『小鳥のさヽやき』です。大正15(1926)年に教文館から発行されています。著者は、マーガレット・イー・アームストングです。
実は、日本でいちばん古い鳥の翻訳本は、何か探しているときにこのタイトルに行き着きました。入手しようとWebサイト「日本の古本屋」などを探すと、1万円以上しており驚きました。古いとは言え大正時代、たかだか四六版86ページの本が、なんでこんな高値が付いているのか不思議です。いろいろ検索してみると、なんと朝ドラのおかげでした。
なんでもNHKの連続テレビ小説『花子とアン』で村岡花子が翻訳をした本ということで、ドラマのなかに出てきたそうです。家のテレビは、この時間はワイドショーとなっているので、ブログなどに書かれていることからの情報です。
なお、著者のアームストロングさんは、カナダ・メソジスト教会婦人宣教師。そのため、キリスト教官関係の出版社である教文館から本が発行されたのでしょう。教文館は、今でも書店として銀座の中央通りにあります。
私は、タイトルから外国の鳥の話かと思っていましたが、今日初めて内容を見ると日本の鳥のことでした。アームストロングさんが見た日本の鳥の特徴や習性が書かれています。メモ的な内容ではありますが、図鑑的な記述がされています。また、挿絵は当時としては珍しいカラーで印刷されています。なお、日本の鳥の知識は「内田氏の日本鳥類図説という新刊の詳しい書物を手に入れる事ができました。」とあり、内田清之助著の『日本鳥類図説上・下』が1914年に発行されているので符合します。
バードウォッチングは、居住した富山県が中心のようで、ときおり軽井沢の地名も出てきます。ただ、軽井沢でカッコウの巣を見たなど、怪しい記録もあります。いずれにしても、大正時代の鳥の状況を知ることができる貴重な記録であることがわかりました。ただ、イラストの作者の名前はもとより翻訳者の名前も見当たりませんでした。
ちなみに鳥海書房の価格は、この本の装丁とコンディションとしては妥当な3,000円でした。
« ヘルメット考 | トップページ | ハシビロガモのディスプレイ »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『鳥屋の本読み』卒業(2023.01.24)
- 1960年代のAudubon Magazine-アメリカの録音事情(2022.12.30)
- 小林重三の『狩猟鳥類掛図』(2022.12.04)
- 柳沼俊之さんの野鳥カレンダー2023-ご案内(2022.11.07)
- まぼろしの図鑑刊行-ご案内(2022.09.28)
コメント