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2015年4月 6日 (月)

野鳥録音がテーマ・松本清張の『二つの声』

 記憶の底にあって、どうしても確認できないことがいくつかあります。何かの本で読んだのだけど、どうしても出てこないという現象がありますね。
 その一つが、20代の頃に読んだ推理小説です。父から、鳥が好きならば読んでご覧と渡された本です。記憶しているのは、文庫本で筆者は松本清張。あらすじは、軽井沢で野鳥を録音していると男女の会話が録音されて、それがきっかけとなり殺人事件がわかるというような内容でした。以前、気になって「松本清張 軽井沢 野鳥録音 殺人事件」などのキーワードを入れて検索をしたことがありますが、タイトルを見つけることができませんでした。さらに、蒲谷鶴彦先生がご存命のときにおたずねしたことがありますが、ご存知ありませんでした。40年、歳月が経過して記憶の底に埋もれていました。
 そんな話を後輩のKさんにしたら、あっという間に調べてくれて『二つの声』というタイトルを見つけてくれました。この小説は、週刊朝日に連載され、その後文庫や新書、全集に収録されているとのことでした。私が読んだのは文庫と記憶していますので、文春文庫の『弱気の虫』(1977年発行)に入っているのを入手、さっそく読んでみました。
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 文庫本で214ページ、昔の文庫は活字が小さいので現在の1冊分くらいのボリュームがありました。記憶どおり、3人の男性が軽井沢に野鳥を録音に行きます。当時のことですから、パラボラとオープンリールの録音機です。パラボラを外に置いて、コードを別荘に引き、そこで一晩録音をすると設定です。この3人は、たいへん風流な方たちで野鳥の声を聞きながら連歌も詠みます。ヨタカ、フクロウ、ホトトギス、トラツグミが鳴いて、夜が深まるなか、男女の声が入ります。気になった3人は、放送局の知人を頼って、人の声を増幅してもらい内容を知ります。たいした会話ではなかったのですが、同時に3人が行きつけのバア(まま)のなじみの女性が行方不明に。あまり書くとネタバレになりますので、このあたりにしておきます。
 録音の手配をしてくれる軽井沢のタクシー会社の社長で土地持ち、野鳥の会幹事の名前が福地嘉六で、1文字同じ星野温泉の星野嘉助さんを彷彿、息子がどら息子という設定も、星野家からヒントを得ている可能性がありますね。
 野鳥の生態や鳴き声の表現には違和感がなく、清張さんがしっかりと取材されていることがわかります。録音のテクニックも書かれているのですが、これも間違いはありません。ただひとつ、パラボラから別荘まで300mのマイクコードを引く設定になっています。これは、無理ですね。途中に増幅器を入れてやらないと減衰してしまって、聞こえないでしょう。また、私が持っているモノラルのマイクコードは、1mで60gです。ですから、300mとなると18kgとなります。設定では、中軽井沢駅まで電車で行っていますので、他の装備も加えれば、持って行くのはたいへんです。男女の会話が聞こえても、夜の別荘地を歩いて行く気にならない距離として、300mは妥当な数字ですから、そこからの無理無理の設定なのかもしれません。
 また、くだんの音源を放送局に持ち込み、人の声だけを増幅してもらいます。同じ音域で鳴くフクロウの声が大きく響くなど、これも正しい記述です。野鳥と野鳥録音に興味のある者にとって、楽しめる内容でした。ただ、この小説の記憶のため、タイマー録音を仕掛けるたびに事件性のある音が入っていないか気になっています。
 Kさん、ありがとうございます。おかげで長年、喉に刺さった魚の骨が取れた思いをしています。

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