小林重三-イワシャコの原画
ネットオークションで、小林重三の原画が出ていました。A井さんのご協力もあって、ちょっとの競りでゲットできました。この間、町田市で行われた小林重三展に行くことができませんでした。その分、今回の原画購入で重三の絵を堪能いたしました。
以下、「開運なんでも鑑定団」の銀河万丈さんのナレーション風に解説します。
小林重三の原画である。サインはもとより画風、時代を感じさせる紙質から間違いはない。
描かれているのは、イワシャコである。日本の鳥ではない。ユーラシア大陸に広く分布するウズラの仲間である。そのため中国の一部が日本の領土であった時代、戦前の作と思われる。
原画は額装に隠れているが、上にあと数cmある。そのため、実際には天地がもっとあり、雑誌や本の比率と一致する。額装された状態でも空の部分が広いが、さらに上に空間があるのは不自然である。これは、空の部分にタイトルを入れるためのスペースを取っているものと思われる。そのため、表紙や扉のために描かれた可能性がある。いずれ、印刷物が見つかるであろう。
改めて原画を見ると、絵のタッチや表現の仕方がわかる。全体には、さほど描き込んではいないのだが、ポイントポイントで細かく描くことで、精密感を醸しだしている。たとえば、最初に目が行く顔は、細かく描かれ、目は生き生きと表現されている。また、脇腹の模様は一筋黒く塗り、面相で白を入れる事で、細かい羽毛を表現している。
左の雌、遠景の群、さらに風景は思いのほか、あっさりと描いている。そのため、緊張感を与えることのない、癒やされる風景の絵となっている。額装し壁に掛ければ、そこに自然への窓が開かれたような錯覚さえ与える絵である。
額装は、きわめて質素である。額に絵の具が飛び散っていることから、以前の持ち主も絵に関わっていた可能性がある。
イワシャコの顔はていねいに描かれている。目にスポットを入れることで生き生きとした表情になっている。
脇腹の模様の表現、黒地に白を入れることで羽毛を表現している。印刷されると、このタッチはわかりにくい。
雌と遠景の群は簡単に描いているが、動きや表情は見事である。
« ネコに襲われたハクセキレイ-六義園 | トップページ | 夏鳥が来てしまった-オオルリ »
「考証」カテゴリの記事
- 地震の時に謎の声ー六義園(2023.05.11)
- サブソングはコルリかも-訂正(2023.04.07)
- オオダイサギの鳴き声-芝川第一調節池(2023.02.01)
- 黒田長久さんのことーその5(2023.01.11)
- 黒田長久さんのことーその4(2023.01.10)
はじめまして。結城と申します。突然、書き込みをいたしまして申し訳ありません。実は私も小林重三氏の「ケリ」という鳥の原画を持っております。少し前から手放すことを考えておりますが、小林氏の絵は一般に流通していないので、どうしたものか考えておりました。偶然このブログを見つけ拝見したところ、ネットオークションで小林氏の絵を購入されたとのこと。出来ましたら、どこのオークションか教えていただけないでしょうか?参考までに落札価格はいかほどだったのか教えていただければ幸いです。
投稿: ユウキ | 2015年7月 8日 (水) 00時53分
>まつ様
ご存知だろうと思いますが・・。
先日「第一次満州学術調査研究団報告」という昭和十年の本を恩師からいただきまして、見ましたら、その中にこのイワシャコの絵がありました。
当時としては最高の印刷技術で印刷されたものだと思います。絵もかなりきれいですすが、さすがに繊細なタッチまでは見えません。
別ページで「ちょうげんぼう」となっている絵が、どう見てもハヤブサなので、鷹司さん、蜂須賀さん、黒田さん、山階さん、内田さんという早々たるメンバーが作っているのになぜ?!と思いました。
たとえば、黒田さん、山階さん、内田さんはハヤブサだと気が付いていたけど、鷹司さんが「ちょうげんぼうだ!」と言い張るので、みんな忖度して言い出せなかった、なんてことがあったのかなぁ?と無駄に想像しています・・・。
投稿: S木♂ | 2019年9月 8日 (日) 23時46分
S木♂様
「第一次満州学術調査研究団報告」の挿絵と言うことは、他の方からご教授いただいております。当時の満州開発には、相当お金がつぎ込まれたので、報告書も豪華だったのですね。
「チョウゲンボウ」の間違い、大先生方も当時は、30才台かな。剥製中心で研究していた人たちですから、猛禽類の識別は弱かったことになりますね。図鑑でもシギチドリは、ミスが多いです。いろいろ想像できて面白いです。いずれ、ブログネタにしてください。
投稿: まつ | 2019年9月 9日 (月) 19時30分