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2015年6月 1日 (月)

コサメビタキとサメビタキのさえずりの区別-大巌寺高原

 コサメビタキとサメビタキ、姿による識別は胸の模様で区別できます。では、この2種類、さえずりで区別できるでしょうか。
 『野鳥大鑑鳴き声420』(2001)の執筆のおり、この2種類の解説には苦労しました。今、解説を読み返すと、なんとなく違いがあるもののできるともできないとも書かれていない歯切れの悪い文章になっています。15年前は、コサメビタキのさえずりは聞いたことがあるものの、サメビタキのさえずりは聞いたこともありませんでした。さらに、声紋を簡単で表示できるソフトもなかったのですから、いろいろ検証することができず、お許し願いたいと思います。
 今回、大巌寺高原で仕掛けた録音機に、サメビタキらしいさえずりが入っていました。そのため、コサメビタキとサメビタキのさえずりによる区別ができるか、考えてみました。
 コサメビタキのさえずりは聞く機会があり、音源も多数あります。まず、コサメビタキのさえずりです。2012年5月19日栃木県日光市で録音したものです。PCM-D1で録音、2,500Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。
「asian_brownflycatchers120519.mp3」をダウンロード

 しかし、サメビタキは今回が初めてです。なお現在、公表されているサメビタキのさえずりの音源は、蒲谷鶴彦先生の『野鳥大鑑鳴き声420』、上田秀雄さんの『野鳥の声283』(1999)、バードリサーチのwebサイト内にある「鳴き声図鑑」の平野敏明さんのものくらいです。公開されている平野さんの録音をお聞きいただければと思います。
 http://www.bird-research.jp/1_shiryo/nakigoe.html
 今回の音源です。YAMAHA W24でタイマー録音。3,000Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。
「darksided_flycatcher150528.mp3」をダウンロード

 公開されている音源や私のつたないコレクションの音を比較してみると、いずれも小刻みな鳴き方な上に次から次に節が変化して行き、とても複雑な節回しであることが似ています。また、基音は3,000Hz以上と小鳥類のさえずりとしては高い方で、さらに20,000Hzぎりぎりまで音が伸び、高音で鳴いていることがわかります。加えて、どちらも声量は低く聞きづらいさえずりであることが共通しています。
 違いとしては、コサメビタキのほうがより小刻みに鳴き、節のバリエーションが豊富、音が高く聞こえます。サメビタキのほうが比較してゆっくりとした節回しで、低めといった違いを感じます。また、声紋で見るとコサメビタキのほうが幾重にも重なった倍音のある音が多く、サメビタキは倍音があっても層が少ないという違いあります。このあたりが、音質の違いにつながっていくのでは思います。
 まだ、数点の音源による検証です。今後、これ以外の識別点を見出すことができるかもしれません。これからの課題として、検討材料になれば幸いです。

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