小林重三の原画「ケリ」
以前、小林重三の原画「イワシャコ」を入手したことを記事にしました。その記事を読んだ方から、原画を所蔵しているとのメールをいただきました。なんでも、伯父さんからお父さんへ、そしてご自身へ受け継いだものと出所がしっかりしています。写真を送っていだいたところ、描かれているのはケリでした。私自身どこかで見た記憶がある絵です。私は、日本鳥類保護連盟が山階鳥類研究所のなかにあった頃、職員だったのですが、林野庁のカレンダーのバックナンバーがあって、それを見たのではないかと思います。
メールをやりとりしているうちに、譲っていただけることになりました。なんとも、ありがたいことです。
先日、手元に届き原画をじっくりと見ることができました。原画には、草原に佇むケリの端正な姿が描かれています。絵は、板に描かれています。絵の具は盛り上がっているところから油絵の具を用いていると思います。アクリル絵の具が日本で普及するのは1960年代以降のことですから、油でよろしいかと思います。
そのため、風景はさらっと描いています。しかし、ケリ自体は丁寧に描かれ、くちばしから目にかけての表現は細かく描写されています。原画は、縦21.5×横27cmですから、鳥は小さく油絵の具で細い描写は難しいそうです。
なお、絵の裏には伯父さんが書いた一文が貼ってありました。これには「農林省林野庁の依頼で小林重三画伯が描いたもので小林氏は鳥類の生態を得意とし、右に出るものはないと言われています。適当な額に入れて書斎に飾って下さい。鳥はケリという種類です。」と署名が書かれていました。
その後、小林重三さんのお孫さんからもメールをいただき、現存するカレンダーの絵はすべて板に描かれているとのこと。私の記憶もまんざらでもなかったことになります。
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松さま
ケリの原画良いですねぇ。風の音やケリの声が聞こえてくるようです。
1994年に小林重三展が平塚市博物館で行われたときの資料冊子に園部浩一郎さんがまとめられた小林重三目録がありましたので、ケリを探してみました。
ケリは1957年(昭和32年)の5月に発行された林野庁野鳥カレンダー第八集(1957年5月~1958年4月)にありました。
表記の鳥名のトップにあるので、1957年5月のページにあるのかもしれないと思います。
こうなるとカレンダーのほうも見て確かめたくなりますね。
投稿: S木♂ | 2015年8月23日 (日) 10時25分
S木♂様
お久しぶりです。
ケリ掲載のカレンダーをお調べいただきありがとうございます。私も園部さんから資料集をいただいていますが、本の山の中に埋もれてしまっています。おかげで、戦後の作であることがわかり、日本鳥類保護連盟にあった可能性が高いこともわかりました。たぶん、それで見ることができたのでしょう。
まずは、お礼まで・・・
投稿: まつ | 2015年8月23日 (日) 12時04分