本のおまけ
本を買うときにもっとも気を付けているのは、内容や値段ではありません。いかに同じ本を買わないようにするか、なのです。とりあえず買っておいたり、資料として役にたつだろうと思って買っておくとブッキングしてしまいます。ちゃんと読んでいれば、もちろんそんなことは起きないはずなのですが、買ったという満足感だけで本の山に埋もれさせてしまうと、やります。興味があり必要な本なのですから当然といえば当然、同じ本を3冊買ったこともあります。
先日、竹野家立の『野鳥随想』(1936年・橡書房)でやりました。著者の竹野さんは、日本で最初に野鳥と入ったタイトルの本を出版し、野鳥を飼うだけではなく繁殖させる名人であり、日本野鳥の会の創立に関わった一人です。そのため、この本にはコノハズクの飼育記録が収録されており鳴き声についての記述もあるので購入しました。それも1年の間をおいて2冊。せっかくなので、コノハズクの声について興味を持っているA部♂さんに差し上げました。
A部♂さんから「本のおまけ」というタイトルのメールとともに、本の間に古い新聞のスクラップが挟まれていましたと、画像が添付されていました。
この切り抜きは、昭和12年の東京朝日新聞、仏法僧の鳴き声をラジオ中継するという予告の記事です。当時のラジオ局はNHKしかなく、各地の地方局が独自の番組作りをしていました。そのなかで、愛知県鳳来寺山からのコノハズクの生中継は、画期的な番組として注目を浴びました。なにせ、テープによる録音機すらない時代、生中継をせざるをえないわけです。それにしても、なんとリスキーな企画でしょう。
ちなみに、この中継された声を聞いて飼われていたコノハズクが「ブッポウソウ」と鳴き、ブッポウソウが「ブッポウソウ」と鳴かないことがわかったのですからセンセーショナルなことでした。それから3年目たっての中継にもかかわらず新聞が取り上げています。このことからも、当時の関心の高さがうかがえます。
この元の蔵書者は、コノハズクに興味を持っていて、この本を買いラジオを聞いたのでしょう。などなど、いろいろ想像をかき立てられるます。これも古書の楽しみの一つ、2冊買ってしまったことを正当化できますね。
A部♂さん、ありがとうございました。
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