以前、ヤブサメの研究家K沖さんに日光で録音したヤブサメのさえずりをお聞かせしたところ「関東弁ですね」と言われたことがあります。彼によると、関西では長く鳴き、さらに渡って来たばかりの頃や夜は鳴き方が異なり、いくつもパターンがあるとのことでした。
ヤブサメのさえずりは、虫のように「ジジジ・・・」と多少尻上がりに鳴くことしか知りませんでしたので、目からウロコでした。ということで、私の音源をチェックしたら一昨年、山形県羽黒山で録音したヤブサメのさえずりが、関東のものとは違うパターンであることに気がつきました。
さえずりをアップしたいのですが、ヤブサメの声は8,000Hzを越えています。このブログは、mp3でないと受け付けてくれません。mp3は、高い音がカットされてしまうために音でお伝えすることができません。ここでは、声紋をアップいたします。この図の左右は時間で10秒間。天地は音の高さで、0~22,000Hzです。
栃木県日光、2015年5月23日に録音。
山形県羽黒山、2014年7月1日に録音。
いずれも、8,000Hzに音の中心があり、160,000Hzあたりにうっすらと倍音があることが共通しています。違いは、関東のものは「チリチリチリーッ」と尻上がりなのですが、羽黒山のものは「リッ、リッ、リッ」と区切って鳴き平坦に聞こえます。声紋で見ると、羽黒山のものははっきり節が見えて、一節が10音の連続であることがわかります。しかし、関東のものは不明瞭です。関東では、日光や箱根で録音しており音源は複数あります。いずれも同じパターンです。しかし、羽黒山では1例しか録音していませんので個体差の可能性もあります。
ということで、昨日行われた立教大学教授上田恵介先生の最終講義の会場で、K沖さんを見つけて聞くと、東北なまりで鳴くことはすでにご存知で、地方差ということでよろしいようです。
この違い、関東から東北にかけてグラディーションのように少しずつ違っていくのか、それともどこかに分水嶺があるのか、興味は尽きません。録音機が普及してサンプルがたくさん集まると、この課題も解決する日が来るかもしれません。
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