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2016年10月28日 (金)

鳥の名は。-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング

  『鳴き声ガイド日本の野鳥』の売りは、バリエーションの多さです。野鳥には、地方によって鳴き方の違うものがいます。より多くの地方のパターンを収録することで、各地の初心者にもわかりやすい声の図鑑にしようと意図しました。ところが、野鳥の名前にも地方差があったのです。
 それぞれのトラックの最初には、プロのナレーターに読んでもらった野鳥の名前が入っています。これは、鳥の名前を確認しながら聞けばおぼえるやすいこと、CDプレイヤーに表示されるトラック番号の見えない目の不自由な方のためです。ところが、鳥の名前を読み始めるとアクセントがどこにあるのか、議論になりました。
 以前、関西のバードウォッチャーが鳥の名前を言うとアクセントが、「エナガ」の”エ”、「オナガ」の”オ”にありました。関東では”ナ”にアクセントを置くか、どこにも置かない平坦な言い方をしてますので、訂正をしたことがあります。また、メジロは”メ”に置くと地名、”ジ”か平坦だと鳥の名前だと思っていました。しかし、関西では違うと思います。クイナやカケスも同じでしょう。だいたい3文字の名前の鳥では、アクセントがかなり違い、さらにそれにつられてヒクイナやシマエナガもどこに置いて良いのかわからなくなりました。スタジオにいた私やT岡さん、S水さんも関東出身です。自分たちで何度か言っているうちに、どれが正しいのかわからくなってしまい、困りました。そのため、2パターン読んでもらって後で選ぶ種類がいくつかでました。
 また、私たちが標準和名で話していないことにお気づきでしょうか。たとえば、和名では「ホオジロ」ですが、話しているときは「ホージロ」と音引きに近い言い方をしています。「オオジシギ」も「オージシギ」と言っています。そのため、初心者は「王子鴫」に聞こえてしまい「それは、どんなに素敵な鳥なのか」と聞かれたことがあります。
 また、名前の中に「がぎぐげご」がある場合の多くは鼻濁音になります。前出のエナガ、オナガの”ガ”は鼻濁音で言っています。でも、頭に”ガ”のあるガビチョウ、ガチョウは、そのままです。
 ですから、鳥の名前が列記されたシナリオは標準和名のままなので、とりあえず数10種続けて読んでもらい、気になるところを再度読んでもらいました。これを377種でやったのですから、手間と時間がかかりました。
 今回、もうひとつわかったことがあります。長い名前は、どう読んで良いのかわからないのです。たとえば、キンクロハジロは、カタカナが並んでいるとどこで切って良いのわかりにくいのです。しかし、「金と黒、そして羽に白いところがあるのでキンクロハジロです」と説明して意味がわかると、切れ目がわかってすらすらと読めます。カタカナはあくまでも記号であり、意味が伝わらないのです。これは、バードウォッチングの初心者に鳥の名前を教えるときも同じことだと改めてわかりました。
 このように鳥の名前のアクセントは地方によって異なるため、まえがきには「これが標準ではありません」と明記しました。

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