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2016年11月

2016年11月27日 (日)

亜種ウソと亜種アカウソの鳴き声は違うか?

 録音仲間では、亜種ウソと亜種アカウソに違いがあるかが課題です。ウソのさえずりを聞くことは少なく、違いは存在を確認する声によるものです。「フィ、フィ」と聞こえる柔らな声のことです。
 近くの公園で、ここ1週間ばかりウソが滞在してくれています。最初、雌1羽だったのですが、このところ数羽の群れとなり公園のあちこちで会っています。同じ群れが、移動をしているのだと思いますが、うれしい長期滞在です。
 写真を撮りながら見ていたら、胸がほんのり赤く見えて亜種アカウソでした。

Bullfinch161127


  胸の赤みは、日が当たると飛んでしまいわかりにくくなります。近くにいた雌の尾羽を確認すると、羽軸の白が見えましたので間違いないでしょう。幸いなことに鳴いてくれました。
 PCM-D100で録音。ボリュームのアップ、3.000Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

「Bullfinch161123.mp3」をダウンロード

 これで、違いがわかるでしょうか。
 だいたい冬に公園で会えるのは亜種アカウソのほうが多い傾向にあります。春から夏の繁殖期に日光で会えるのは亜種ウソです。出会うのが、越冬期と繁殖期の違いがあるのですから、鳴き方も違うかもしれませんね。鳴き方の違いを検討するのは、季節を合わせないといけないと思いました。でも、こうやって聞くかぎり声の違いはわかりませんでした。
 

2016年11月24日 (木)

謎の声は、ツツドリ

  当ブログで今年の5月、「なんだべ?-謎の声の正体は?」という記事を掲載しました。
 http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2016/05/post-ee30.html
 これは、日本野鳥の会山形支部のY川さんが山形県飛島で小犬が鳴くような謎の声を録音し、それが私がオオコノハズクと思っていた三宅島の録音と一致、でもオオコノハズクがこのような声で鳴いた記録はないので「なんだべ?」と言う記事です。
 鳴き声は、こちらです。

「JapaneseScops-Owl07052800.mp3」をダウンロード

 インターネットというのはありがたいもので、この記事の掲載のあとすぐに新潟県の方から、夜にこの声で鳴きながら飛んで行くのを聞いたという報告、しばらくして福岡県の方からも同様の報告をいただきました。実は、コンピュータが壊れて5年分のメールが霧散してしまいましたので、このお二方の報告は記憶で書いています。さらにその後、新潟県のF川さんから、ツツドリがこの声で鳴いていたのを見たことがあるとの報告をいただきました。
 今回、大阪自然史フェスティバルの講演にて謎の声として紹介したところ、O西さんとそのお仲間から「舳倉島で、ツツドリが同じ声で鳴いていた。」との情報をいただきました。くわえて、M井さんから四国でホトトギスの仲間赤色型がこの声で鳴いているのを録画したと報告をいただきました。画像を見ると大きさからツツドリであると判断できます。なんとも、実り多い大阪自然史フェスティバルでした。これだけ目撃例がそろえば、謎の声はツツドリと言ってもよろしいかと思います。
 私の三宅島の録音を除いて、ほとんどが日本海側で西日本から新潟県あたりの記録となります。ただ、いずれもその後、聞くことはないので通過していったものと思われます。
 私のフィールドの栃木県日光には、ツツドリがたくさんいます。しかし、この声で鳴いているのを聞いたことはありません。北海道でもツツドリの録音がありますが、同じく聞いたことはありません。全国の録音仲間からも情報はありません。どうも、この鳴き方をするツツドリは、日本を通過するだけでのようです。
 ツツドリの分布は、ユーラシア大陸のヨーロッパ東部から日本までと中国南部から台湾までの南北2つに分かれています。そのため、この2つを亜種か別種か2説あります。xeno-cantoにアップされているフィンランドからロシア、日本のツツドリを聞く限り、大きな違いはなく、小犬のような鳴き方をしているものはありませんでした。
 ちなみに、図鑑によっては北のものは2音、南のものは4音で鳴くと書かれているものがありますが、xeno-cantoにアップされている中国、台湾のツツドリも2音で鳴いています。そのため、小犬鳴きをするツツドリが亜種ということもなさそうです。さらに、目撃例からノーマルタイプと赤色型どちらも行うようで、その違いもなさそうです。
 いずれにしても、鳥というのはいろいろな鳴き方をするもので、固定観念で思い込みは禁物と改めて思い知らされました。
 この謎の解明も、皆さまのご協力のおかげです。ありがとうございました。

2016年11月23日 (水)

暗視スコープ・エクイノクスZ6R-ファーストインプレ

 夜の鳥は、謎だらけです。夜間のバードウォッチングに行けば、必ず発見があるし謎が生まれます。何度、声の主の姿を確認したい、彼らの姿を見てみたいと思ったことでしょう。
 ところで、世の中にはナイトスコープとか暗視スコープという製品があります。ネットで探せば、1万円台から数10万円するものまでピンキリです。おそらく、値段相応のものだと思いますが、安いからと言って買っても使えなくては意味がありません。それに、多くが1倍なので、少しは倍率が欲しいところです。
 前回の我孫子のジャパンバードフェスティバルで、阪神交易さんがナイトスコープを出品していました。型落ちした6倍の性能のある暗視スコープを割引して販売していました。お話をうかがうと、どうせならば画像と動画を保存できる新機種のほうが良いとのこと。試してみたいと言っていたら、今回の大阪自然史フェスティバルでお借りすることができました。
 機種は、BushnellのエクイノクスZ6R。下記のURLで機能と仕様が紹介されています。
   http://www.hanshinco.com/anshi-digital.html
Equinox1

 まずは、準備。この機種は、単3電池4本が必要です。確認すると入っていました。また、この機種の最大の特徴は画像と動画を保存できることです。保存先のマイクロSDカードを入れます。手持ちの2Gをとりあえず挿入しました。カタログによれば、2Gで静止画6,500枚、動画30分を記録することができるとありますので十分です。
 ときあたかも、六義園はライトアップ中です。夜の六義園に入ることができますので、さっそく試しに行きました。日没後の六義園はかなりの混雑、ライトアップ中ですから池の周りは真っ暗ではありません。そのため、池にカモが浮かんでいるはわかりますが、種類までわかりません。エクイノクスZ6Rで覗くと、くちばしの先が白く見え、次列風切り羽の白い部分も見えるので、カルガモと確認できます。
 暗い中、カモを見つけて6倍の視野の中に入れるのは、ちょっと苦労します。いつもの癖で、肉眼で見つけて視野に捕らえるということをしてしまいます。しかし、風景をなめるようにスコープで探すと、肉眼では見つけられない暗い場所にカルガモがいるのを見つけることができました。
 この間、画像を保存しましたが、手ぶれのため、見ているようなきれいな画像には撮れませんでした。実際は、これよりはっきりと見えています。
Equinox6

  さらに、暗いところを探しました。かすかにベンチがあるのが、わかる場所です。私はベンチがあるのを知っていますが、知らなければ見えない暗さです。私と位置とベンチとは25mほど離れています。ベンチの縁は明るすぎて反射していますが、下まで見えます。この撮影は杭の上に置いて保存した画像です。落ちている木の葉1枚1枚がわかると思います。
Equinox3

 なお、エクイノクスZ6Rは光を増幅させるだけではなく、暗い場合は赤外線を当てて見ることができます。今回のように街の明かりがあるような場合は、赤外線なしで十分です。前掲のベンチは、赤外線の強さが3段階あるうちのLowです。それでも、ベンチが反射しています。試しに赤外線がどこまで届いているか発光しているライトを手で隠すことでチェックしてみたところ、Highで5,60mは間違いなく届いているように見えました。
 電池の重さを含めて750gとなります。およそ双眼鏡1台分の重さですが、ブレを軽減させてゆっくりと鳥を探すということになると、6倍といえども三脚が必要だと思いました。また、ピント合わせは胴鏡の前、そのほかのスイッチの操作がありますので、なおさら固定して見たいと思いました。ただ、六義園はライトアップ中は三脚禁止です。そのため、次に三脚を使ってベランダから六義園の森を覗いてみました。
 およそ30m先にあるエノキの梢の6倍画像です。ハト大の鳥がとまっていれば、十分識別ができそうです。赤外線は照射していません。
Equinox5

 同じ部分をデジタルズームで3倍。本来の6倍×デジタルズームの3倍で18倍の画像です。スズメ大の鳥でも識別できそうです。
Equinox2_2

 私たちが双眼鏡で鳥を捕らえるのは、まず肉眼で見つけて、そっと双眼鏡を目に当てて捕らえます。夜は暗いため、この肉眼で見つけるという作業ができません。最初からスコープに捕らえなくてはならないことになります。そのため、明るいスコープの視野と夜の闇を交互に行き来するので、瞳孔が閉じたり開いたりしなくてはならず、目が疲れることはしかたないですが、注意が必要でしょう。
 なお、昼間は6倍の単眼鏡として使うことができて、その場合はカラーで見えて、画像と動画ともカラーで保存できます。
 ファーストインブレですのですので、まずはここまで。これから、機会を見て夜の生き物たちの観察にどれだけ有効であるか、報告ができたらと思っています。
 便宜を図っていただきました阪神交易の竹内さんに、お礼申しあげます。

2016年11月20日 (日)

大阪自然史フェスティバル

 大阪自然史フェスティバルに行ってきました。初めての参加です。
 どうしても、我孫子で行われるジャパンバードフェスティバルと比較してしまいますが、おもしろかったです。まず、良いのは飼い鳥グッズのお店、フクロウカフェなどペットをテーマにした展示やお店がほとんど無いことです。自然と野生にこだわったブースばかりです。
 そして、とにかく出展数が多いのに圧倒されます。まるで、学会のポスター発表の会場のような一角もあって見きれません。我孫子ですと、自然保護の活動紹介のブースは出展数が少ない上に関係者同士がおしゃべりしていて暇そうだなあと思ってしまうところもあるのです。しかし、こちらは自然保護系のブースのほうが多いのです。そして、どんどん呼び込んで解説してくれます。ですから、かなり専門的な発表でも人だかりがしているのですから驚きです。そのおかげで、会場全体が熱気に包まれているのを感じます。写真は、その会場です。
Onf2016161120

 我孫子だと光学系のブースに人だかりができるのですが、こちらはそれほどでもありません。写真は、外の会場です。
Onf2016161119

  集まっているのは、子供が遊んで学べるブースなのです。あの手この手で、子供が興味を引くように工夫をしていて、大人もおもしろい展示となります。ですから、参加者は親子で、全体に平均年齢は若いと思いました。首から双眼鏡をぶら下げたバードウォッチャーも若めでした。大阪城公園にいるような迷彩服を着たカメラマンのオジさんたちは、このイベントには来ていないようです。
 それに、欲しいものがたくさんありました。Tシャツの柄も、あれもこれも欲しいと思うものばかり。ハシブトガラスの卵の形をしたスマホ拭きは、3つも買ってしまいました。迷ったのは、芋虫の形をした箸置きですね。
 講演にお集まりの皆さん、ありがとうございます。おかげさまで、持っていた『鳴き声ガイド日本の野鳥』は完売となりました。
 また、大阪自然史博物館のスタッフの皆さん、お世話になりました。重ねてお礼申し上げます。
 

2016年11月16日 (水)

『朝の小鳥』スタジオ収録-外来種の鳥たち

 来年の1月1日は日曜日、そのため地方局では前日に放送を行うところもあるため、今日のスタジオ収録は、来年の1月1日放送分を合わせて5本録りました。テーマは、外来種の鳥たちです。
 『野鳥』誌の先月号の書評で『外来種は本当に悪者か?』を取り上げるにあたり「外来種を良しとしている」と誤解されるのではないかという懸念がありました。この本の主題は、原題の”The New Wild”であって生態系の新しい考え方を示しています。もし言葉があるのでしたら、生態系観の提示といえるでしょうか。少なくとも、自然保護運動で自然を元に戻すという元とはどこなかという議論は考えるべき課題です。
 だいたいクレームをする人は、本も読まないで思い込みでクレームしますので、その対応まで編集担当のK島さんと考えていたくらいです。幸いなことに、今のところ編集部に意見も含めてクレームはないとのこと。ということで、「朝の小鳥」も外来種の鳥たちで構成しました。
 来年1月のテーマは、絶滅に瀕している鳥たちなのですが、12月のテーマとかぶせて、トキです。元旦は、めでたくトキの声で迎えていただければと思います。

2016年12月 4日  ガビチョウ
         12月11日  ホンセイインコ
          12月18日  ハッカチョウ
          12月24日  ソウシチョウ
2017年 1月 1日  トキ

2016年11月13日 (日)

日本野鳥の会連携団体総会2016

 この週末は、千葉県幕張で日本野鳥の会の総会が開催されました。日本野鳥の会では年一回、総会が開かれます。会の運営は、理事と評議員が法律上は担っていることになり、役員には支部の代表や出身者がいることはいるのです。しかし、全国に90ある支部を網羅することはできません。それを補うために、年に1度1泊2日ではありますが、連携団体の代表者に集まっていただいて勉強会と意見交換会が行われます。意見交換会でも盛り上がり、懇親会でさらに盛り上がります。
 今年のプログラムでは、私の講演もありました。全国から支部の指導をされているベテランが集まる上に、柳生博会長が臨席されているので緊張しての講演でした。

Soukai161112

 総会に集まったのは、スタッフを入れれば100人を超えていました。もし、これ以上増えると、やっと見つけた幕張の会場もあふれてしまうと言う盛況ぶりです。参加される方のここ数年の傾向をみて、気がついたことがあります。以前は、70人集まっても女性は1人、京都支部の中村桂子さんと決まっていました。
 会員の男女比は、私が在職していた頃は7:3で男性が多い傾向にありました。最近では、6:4で女性が多くなっています。また、探鳥会での参加者を見ると男性より女性の方が多いことが多くて、ときには3:7と女性が圧倒的に多いこともあります。ところが、連携団体の代表は、ほとんど男性で90ある連携団体で女性が長なのは1つではないでしょうか。
 ですから、総会に来るのは男性ばかりとなります。ところが、今回は女性5人参加されていました。私が参加するようになって、もっとも多い参加者です。結果55:5となります。このほか、役員(評議員、理事、幹事)の男女比は12:2、事務局は21:9となります。ちなみに、事務局はもっと女性が多いのですが、管理職には少ないためです。
 連携団体のおもな活動である探鳥会ひとつ取って見ても、コースどりなどで女性の意見が取り入れられているかどうか気になります。今年の傾向が、より広がっていくことが日本野鳥の会の会員が増えるかどうかの命運がかかっているかもしれません。

2016年11月 6日 (日)

10年やればできる-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング

   CDに付属しているリーフレットには、録音された年月日が書かれています。私は1996年頃から録音を始めていますが、多くの音源が2006年以降であることに気づかれると思います。2006年は10年前、私がSONYのPCM-D1を購入した年です。初めてPCM-D1を日光に持って行き、木に寄りかかって録音していたら、ミソサザイがどんどん近づき、さえずってくれたにはびっくりしました。DAT録音機でマイクをつきだしコードをぶらぶらさせながら録音とは大違いでした。メモリー録音機の購入によって、野鳥録音の効率があがり良い音が録音できて、楽しみが倍増いたしました。
 さらに2010年以降は、YAMAHA W24を使うようになりました。この機種のタイマー録音という機能を利用することで、飛躍的にデータの収集が楽になりました。今回、九州を中心に録音をしている田中良介さんは、このタイマー録音の先駆者で今回も貴重な音源を貸していただきました。飛島で録音した珍鳥の声を多数、提供してくれた梁川さんもYAMAHA W24を使用、ですから録音歴は5年くらいとなります。収録されている飛島のムシクイ類などの録音を聞いていただくとわかりますが、これだけの録音ができてしまうのですから凄いですし楽しんでいます。
 現在、繁殖鳥類調査のためにパナソニックから寄付していただいた100台の録音機が全国で稼働しています。これにともないお手持ちの録音機も活用されていることと思います。これをきっかけに野鳥録音を始める方がいることでしょう。
 そして、これから10年、あるいは数年間かけてデータが収集されれば、各地で『鳴き声ガイド○○の野鳥』を作ることが可能となると思います。
 それにともにない『鳴き声ガイド日本の野鳥』の改訂もされて行くと良いなあと思っています。

2016年11月 5日 (土)

皆さまのおかげです-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング

  今回の企画では、たくさんの方々に助けられました。
 なかでも苦労をしてくれたのは、日本野鳥の会で直接担当した清水久さんです。出版社ならば、作る人と売る人、編集と営業は別ですが、日本野鳥の会のような小さな組織では同じです。清水さんは、自分で作って売らなくてはならないです。ですから、作っても売れなければすべて自分の責任、売れないからといって営業が「売れない物を作りやがって」と編集の責任にするようなわけにはいかないです。それだけに、彼の真剣さに答えなくてはと思って制作にあたりました。今日は、我孫子で開催されているジャパンバードフェスティバルの日本野鳥の会のブースで販売しているはずです。
 CDの制作では、野鳥の鳴き声の知識、音の知識、リーフレットがありますから文字編集という3拍子そろった知識が必要です。この3拍子そろった能力を持った人が、一般の会社にいるわけがありません。日本野鳥の会と言えども、音を扱える人はないので2拍子までです。今回、編集協力してくれた竹森彰さんは、編集畑を歩いてきた方でBirder誌の編集長をしていたこともあり、私とは野鳥の図鑑を作った仲です。鳥歴も長く録音は、蒲谷鶴彦先生仕込みですから心強い味方です。今回、音源のチェックからリーフレットの校正までお願いいたしました。校正では、胃が痛くなるほどのアカが入ってもどってきます。実際は、鉛筆で書かれていますが、その指摘にはいつも納得です。
 今回、多くの人から音源をお借りいたしました。前出の竹森さんはじめ、北海道は日本野鳥の会オホーツク支部の花田行博さん。東北、とくに飛島を山形県支部の梁川堅治さん。九州と韓国、台湾で録音している田中良介さんと、まずは全国的な布陣です。他の方からも、1点2点とお借りしました。しかし、いずれも面識があって心やすいおつきあいをさせていただいている方々です。というのは、お借りした音源をそのまま使うことはできません。他の音源に合わせて、ボリュームやノイズを調整しなくてはならないのです。私自身、自分の音源をいじられるのは嫌です。それがわかっているだけに、私を信頼して編集加工を任せてくれる人でないとお願いできないです。また、借りた音源が間違っている可能性もあります。じつは、ありましたし私の間違いの指摘もありました。お互い頭をポリポリ掻いて、訂正できる関係でないと仕事をしたあとに遺恨を残します。
 さらに、安西英明さんはじめ、日本野鳥の会の職員の方々。忙しい中、チェックをしてくれたのは頭がさがります。鳥の声を聞いていると眠くなるのですから、仕事中のチェックは眠らなかったか気になります。
 制作は、光村印刷です。スタジオからナレーターの手配、そして製作、印刷とすべておまかせ。けっこう苦労したのが、6枚CDの入るケースです。良いものを見つけてくれました。
 こうした多くの方々のご協力、ご尽力のおかげで完成にいたしました。ぜひ、その努力の成果をお楽しみいただければ幸いです。

2016年11月 4日 (金)

『フィールドガイド日本の野鳥』との対応-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング

 図鑑の『フィールドガイド日本の野鳥』が増補改訂新版になったとき「なぜ、新しい分類順にしないのか?」という意見というかクレームが、日本野鳥の会にけっこうあったそうです。私も新分類にすれば、以前の版を持っている人も買ってくれるのではと思ったものです。
 今回、T岡さんからCDは『フィールドガイド日本の野鳥』に対応させたいと言われたときは正直、悩みました。途中で変わるかもしれないと、最初は新分類の順序でリストを作っていたほどです。
 ところが、『フィールドガイド日本の野鳥』の順序に並べて音源を作っていくと、これが絶妙な順序であることがわかりました。実際に野外で識別し野外で指導していた高野伸二さんの体験に基づいた配列であると実感いたしました。この順序は、当時の『日本産鳥類目録第7版』に準じているようで、いません。たとえば、本来カモメの仲間はシギのあとですが、いっしょにみられることの多いミズナギドリ類の近く、前の方にあります。そのため、比較のために離れたページをめくって探さなくてもすみます。
 今回の新分類にすると、ワシタカ類とハヤブサ類は離れてしまい比較しづらくなります。野外識別のためには、別に分類順である必要はないです。野外で名前がわかるように、わかりやすさと調べやすさを優先すべきであって、むしろ別の方が使いやすいことになります。
 鳴き声も同じことで、同じような姿形をした種類が近くに並んでいた方が聞き比べるのが楽です。ということで、拙CD『鳴き声ガイド日本の野鳥』は『フィールドガイド日本の野鳥』に対応させました。私としては、大先輩の高野伸二さんのふんどしで相撲をとらせていただくことになり、ありがたいという気持ちでいっぱいです。
追記:増補改訂新版『フィールドガイド日本の野鳥』では新記録の鳥は、ページの後ろの方に載っています。CDでは、比較しやすいように同じ仲間の近くに収録しています。リーフレットには、図鑑のページ数を明記してありますので、そのページから図鑑に飛んで記述を読むことができます。

2016年11月 3日 (木)

講演会のご案内-『鳴き声ガイド日本の野鳥』がらみ

  大きな仕事を終えるとガクッと来る怖さがあります。1年近くかけた仕事は久しぶり、それに年も取ってきましたから、その反動は命にかかわるかもしれません。そうならないためなのか、今回『鳴き声ガイド日本の野鳥』の制作担当である日本野鳥の会のS水さんは、次から次に仕事を入れてきます。
 とうことで、講演会のお知らせです。

○ジャパン・バード・フェスティバル2016
松田道生トークショー「野鳥の鳴き声の魅力と聞き分け方」
2016年11月6日(日)  午前11時~12時
会場:アビスタ1F ホール  JR我孫子駅から徒歩10分 
参加費 無料
申込み  申込みは不要です
詳しくは、下記URL
http://www.birdfesta.net/jbf/area-abista.html#abista_Matsuda

○大阪自然史フェスティバル2016
松田道生トークショー「野鳥の鳴き声の魅力と聞き分け方」
開催日 11月20日(日) 午前10時30分~12時
会場 自然史博物館本館 講堂
参加費 無料
申込み  申込みは不要です
詳しくは、下記URL
http://www3.mus-nh.city.osaka.jp/scripts/Event.exe?C=0&G=%93%C1%95%CA%83C%83x%83%93%83g&T=%91%E5%8D%E3%8E%A9%91R%8Ej%83t%83F%83X%83e%83B%83o%83%8B2016%83g%81%5B%83N%83V%83%87%81%5B%81u%96%EC%92%B9%82%CC%96%C2%82%AB%90%BA%82%CC%96%A3%97%CD%82%C6%95%B7%82%AB%95%AA%82%AF%95%FB%81v&D=2016%2F11%2F20&M=1

 実は、このほかにも12日に幕張で行われる日本野鳥の会総会、12月11日には日光野鳥研究会でも同じような話をすることになっています。
 普通、出版社では編集と営業は別です。しかし、日本野鳥の会のようなところでは、作って売る人が同じです。S水さんも、その一人。売れなければ彼の責任になってしまわないよう、とうぶん私もガックリしてはいられません。

2016年11月 2日 (水)

地鳴きをやめたらすっきり-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング

  さえずりの定義が混乱しているのと同じように、地鳴きも一言では言い表せません。よく言われている定義には「仲間同士の合図」という意味を表すもの、「短い鳴き方」と行動を示すもの、そして「さえずり以外」という定義さえあります。
 地鳴きには、仲間がどこにいるか、自分がどこにいるか鳴き合って確かめたり、敵がいるぞという警戒、敵に向かう威嚇や攻撃、ねぐらに入るときに特有の声を出すものもいます。それに、雛、幼鳥と鳴き方が変わっていくものがほとんどです。それを、地鳴きという言葉で、十把一絡げにしてはもったいし、意味が伝わらないことになります。
 ちなみに、野鳥録音では地鳴きはとても重要です。たとえば、ホオジロのさえずりを録音していて「チッ」という声が間に入れば警戒していることになり、それ以上は近づきません。また、カラ類がお互いの存在を確認し合う鳴き方で移動していくときは、安心して近づけます。ハシブトガラスが、アラートコールで鳴いたらオオタカが近くにいるかもしれません。などなど、地鳴きの意味がわかると鳥の気持ちがわかり、効率よく録音できるのです。野鳥録音のベテランは、これを習得していると思います。
 ですから、地鳴きと一言で片付けずに、それぞれの意味を明記して、バードウォッチャーにも理解してもらえたらバードウォッチングがより広がると思いました。
 ひとつ困ったのは、英語で言うIdentityCallです。おそらく、鳥の声でいちばん多い鳴き方です。姿が見えづらい森のなかで、お互いの存在を確認しあう鳴き方です。カラ類が移動しながら「チー、チー、チー」と鳴き合う声、ハシブトガラスがのんびりと「カア。カア」と鳴き、近くで「カア」と答えるものがいる鳴き方です。このIdentityCallの和訳に適切なものがないです。”鳴き合い”が一般的ですが、ケンカでも鳴き合います。”存在鳴き”とは日本語になっていません。造語は作りたくありませんので、「存在の確認」というやや説明的な言葉にしました。
 このほか、飛び立ち、飛翔中、群れ、警戒、威嚇、追いかけ合い、戦い、ねぐら入り、ねぐら立ち、コロニー、雛や幼鳥など、それぞれの状況や意味がわかるように明記しました。しかし、存在の確認と自己主張、警戒と威嚇など、区別や状況の判断が難しいものもあります。さらに、判断に迷うものは「~か」とし、状況がわからず判別できないものは憶測を加えず「不明」としたものも少しあります。
 でも地鳴きを使わないことで、かなりすっきりしました。

2016年11月 1日 (火)

さえずりの定義-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング

 音源ができたら、今度はリーフレットの制作にかかりました。リーフレットには、録音したときの行動を書くことで識別に役立つようにしたいと思いました。しかし、ここで思わぬ難題に遭遇、言葉の定義で悩みました。
 たとえば”さえずり”は、定義されているようで定義されていません。「繁殖期に雄が求愛となわばり宣言のために鳴くこと」や「雄が繁殖期に高らかに長く鳴くこと」と書かれていることがあります。前者は”意味と効果”を言い、後者は行動を言っていますが、これらの意味が混在して使われていることがあります。
 この2つの定義に合致する場合も、もちろんあるのですが、例外がたくさんあります。たとえば、秋のモズの高鳴きをさえずりと言って良いでしょうか。おそらく、縄張り宣言の意味と効果はあると思いますが、繁殖期に鳴くという定義から外れます。また、雌も鳴きますので雄だけの行動ではありません。同じように、シジュウカラやホオジロなどは秋に繁殖期のさえずりと同じような鳴き方をします。この意味は何なのでしょうか。これも、繁殖期でないので、定義からはずれてしまいます。
 では、繁殖期のオオルリやサンコウチョウなどの雌が雄と同じようにさえずるのはいかかがでしょうか。繁殖期ですが、雄限定とすると定義と合わなくなってしまいます。
 身近な鳥のスズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、カワラヒワのさえずりって?こうして、ちょっと考えただけでもいくらでも定義に当てはまらない例外があります。さらに、キツツキ類のドラミング、ヤマドリの母衣打ち、オオジシギのディスプレイ飛行の声や音、コウノトリの嘴を打ち鳴らすクラッタリングなど、さえずりと同じ意味と効果があるとされる行動も加えると、これらをすべてさえずりという言葉で一括するのが難しいことになります。
 また、一般的にはさえずりは「小鳥が鳴いていること、あるいはその声」のことで、国語的には小鳥、せいぜいハトまでの大きさの鳥のイメージです。ですから、「キジバトがさえずっている」はOKですが、「フクロウがさえずっている」は言葉として違和感があります。
 このあたりは、日本野鳥の会の安西英明さんとかなり議論をしたのですが、考えれば考えるほど、2人とも泥沼状態になりました。そのため、『鳴き声ガイド日本の野鳥』では、明確にさえずりと思われるものを英語のSongのSと記し、ディスプレイ、ドラミングなどは、その行動や状況を具体的に書くようにしました。
 これで、大きな鳥でも違和感がなく、行動と意味を分けられたと思います。しかし、まだちょっとすっきりしないですね。

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