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2016年11月 1日 (火)

さえずりの定義-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング

 音源ができたら、今度はリーフレットの制作にかかりました。リーフレットには、録音したときの行動を書くことで識別に役立つようにしたいと思いました。しかし、ここで思わぬ難題に遭遇、言葉の定義で悩みました。
 たとえば”さえずり”は、定義されているようで定義されていません。「繁殖期に雄が求愛となわばり宣言のために鳴くこと」や「雄が繁殖期に高らかに長く鳴くこと」と書かれていることがあります。前者は”意味と効果”を言い、後者は行動を言っていますが、これらの意味が混在して使われていることがあります。
 この2つの定義に合致する場合も、もちろんあるのですが、例外がたくさんあります。たとえば、秋のモズの高鳴きをさえずりと言って良いでしょうか。おそらく、縄張り宣言の意味と効果はあると思いますが、繁殖期に鳴くという定義から外れます。また、雌も鳴きますので雄だけの行動ではありません。同じように、シジュウカラやホオジロなどは秋に繁殖期のさえずりと同じような鳴き方をします。この意味は何なのでしょうか。これも、繁殖期でないので、定義からはずれてしまいます。
 では、繁殖期のオオルリやサンコウチョウなどの雌が雄と同じようにさえずるのはいかかがでしょうか。繁殖期ですが、雄限定とすると定義と合わなくなってしまいます。
 身近な鳥のスズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、カワラヒワのさえずりって?こうして、ちょっと考えただけでもいくらでも定義に当てはまらない例外があります。さらに、キツツキ類のドラミング、ヤマドリの母衣打ち、オオジシギのディスプレイ飛行の声や音、コウノトリの嘴を打ち鳴らすクラッタリングなど、さえずりと同じ意味と効果があるとされる行動も加えると、これらをすべてさえずりという言葉で一括するのが難しいことになります。
 また、一般的にはさえずりは「小鳥が鳴いていること、あるいはその声」のことで、国語的には小鳥、せいぜいハトまでの大きさの鳥のイメージです。ですから、「キジバトがさえずっている」はOKですが、「フクロウがさえずっている」は言葉として違和感があります。
 このあたりは、日本野鳥の会の安西英明さんとかなり議論をしたのですが、考えれば考えるほど、2人とも泥沼状態になりました。そのため、『鳴き声ガイド日本の野鳥』では、明確にさえずりと思われるものを英語のSongのSと記し、ディスプレイ、ドラミングなどは、その行動や状況を具体的に書くようにしました。
 これで、大きな鳥でも違和感がなく、行動と意味を分けられたと思います。しかし、まだちょっとすっきりしないですね。

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