地鳴きをやめたらすっきり-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング
さえずりの定義が混乱しているのと同じように、地鳴きも一言では言い表せません。よく言われている定義には「仲間同士の合図」という意味を表すもの、「短い鳴き方」と行動を示すもの、そして「さえずり以外」という定義さえあります。
地鳴きには、仲間がどこにいるか、自分がどこにいるか鳴き合って確かめたり、敵がいるぞという警戒、敵に向かう威嚇や攻撃、ねぐらに入るときに特有の声を出すものもいます。それに、雛、幼鳥と鳴き方が変わっていくものがほとんどです。それを、地鳴きという言葉で、十把一絡げにしてはもったいし、意味が伝わらないことになります。
ちなみに、野鳥録音では地鳴きはとても重要です。たとえば、ホオジロのさえずりを録音していて「チッ」という声が間に入れば警戒していることになり、それ以上は近づきません。また、カラ類がお互いの存在を確認し合う鳴き方で移動していくときは、安心して近づけます。ハシブトガラスが、アラートコールで鳴いたらオオタカが近くにいるかもしれません。などなど、地鳴きの意味がわかると鳥の気持ちがわかり、効率よく録音できるのです。野鳥録音のベテランは、これを習得していると思います。
ですから、地鳴きと一言で片付けずに、それぞれの意味を明記して、バードウォッチャーにも理解してもらえたらバードウォッチングがより広がると思いました。
ひとつ困ったのは、英語で言うIdentityCallです。おそらく、鳥の声でいちばん多い鳴き方です。姿が見えづらい森のなかで、お互いの存在を確認しあう鳴き方です。カラ類が移動しながら「チー、チー、チー」と鳴き合う声、ハシブトガラスがのんびりと「カア。カア」と鳴き、近くで「カア」と答えるものがいる鳴き方です。このIdentityCallの和訳に適切なものがないです。”鳴き合い”が一般的ですが、ケンカでも鳴き合います。”存在鳴き”とは日本語になっていません。造語は作りたくありませんので、「存在の確認」というやや説明的な言葉にしました。
このほか、飛び立ち、飛翔中、群れ、警戒、威嚇、追いかけ合い、戦い、ねぐら入り、ねぐら立ち、コロニー、雛や幼鳥など、それぞれの状況や意味がわかるように明記しました。しかし、存在の確認と自己主張、警戒と威嚇など、区別や状況の判断が難しいものもあります。さらに、判断に迷うものは「~か」とし、状況がわからず判別できないものは憶測を加えず「不明」としたものも少しあります。
でも地鳴きを使わないことで、かなりすっきりしました。
« さえずりの定義-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング | トップページ | 講演会のご案内-『鳴き声ガイド日本の野鳥』がらみ »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『雁の道をたずねて』-ご案内(2022.06.15)
- 『奥入瀬渓流 きのこ ハンドブック』-ご案内(2022.04.27)
- 六義園、やっと夏鳥。そしてBirder5月号の紹介(2022.04.24)
- 『あした出会える野鳥 100』-ご紹介(2022.04.08)
- 『ジョウビタキ・ルリビタキ・オジロビタキ』ーご紹介(2021.12.15)
« さえずりの定義-『鳴き声ガイド日本の野鳥』メーキング | トップページ | 講演会のご案内-『鳴き声ガイド日本の野鳥』がらみ »
コメント