『発掘狂騒史』を読む
面白かった本です。
藤村新一によって石器発見がねつ造され、一大スキャンダルになってのは10数年前。私は、鳥友達の仁さんと同じ姓で同じ年でしたので、特に記憶に残っています。はじめは、このねつ造がテーマかと思って読み始めました。当然、ねつ造事件も語られているのですが、日本の考古学の歴史と歴史を作ったキーパーソンの話がおもでした。わが鳥の世界と比較して読み進めると共通項も多く、とても興味深い話の連続となります。
考古学と鳥類学、どちらの世界に共通しているのは、とても狭い世界であること。そして、数少ない著名な先生によって成り立っていた研究であったこと。そして、お金にならないこと。お金にならないだけに、功名に走ってしまう傾向があるわけで、本書で歴史を解説してくれたおかげで、なぜねつ造が行われた下地がわかり、納得できます。また、なぜあれだけの連続した発見を怪しいと思わなかったのか、気になっていました。もちろん、気がついた人、怪しいと思った人がいたのですが、発見に燃える学会のムードと権威のなかに埋没していきます。
石器というのは権威のある先生が石器と言えば、それが石器になってしまうあやうさがあり、科学的ではない科学の世界であったことになります。権威を守るゆえ、科学的に考証し証明する努力が足りなかったという反省が、ねつ造事件以降、行われていることを祈ります。
幸いにして、鳥の世界ではここまでのねつ造はないと思いますが、かつては新種発見で功名にはしり、亜種命名で論争したことを考えると下地は似ています。今ならば、神の目を持つ○○さんが行くと必ず珍鳥が出る。○○さんが「あれがいそうだというと、必ず出る」、さらには写真をコラージュして珍鳥情報を発表していたことがバレるといったようなもの。わが鳥の世界も「○○さんが言った」ということで鳥が名前が決まるようなことがある以上、いつ同じようなことが起こるかわかりません。
めんどくさいけど、いかに科学的なものの見方が必要か、わかった読後感です。
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