六義園のシダレザクラ異変
六義園の最大のイベント、サクラのライトアップが開催中です。目玉は、正門からはいったところにある大きなシダレザクラです。しだれた先から開花して、てっぺんまで咲くとピンクの滝のようになります。ところが、今年はいつもとちょっとようすが違います。
写真のように下の方は咲いたのですが、開花が昇っていかないというか、半分から上が咲かないのです。今まで30年以上、見ていますがこのような状態は初めてです。
まず、疑ったのが今シーズン大群で飛来したアトリの食害です。多いときは、300羽を超える群れが飛び交っていましたので、花芽を食べてしまったのではないかという疑いです。『清棲図鑑』のアトリの食性の項を見ると、草や木の実は記載されていますが、芽については書かれていません。ただ、サクラの蕾をウソが食べて問題になるのは周知のことですので、アトリがまったく食べないとも言えません。
六義園では、アトリは地面で食べ物をあさっていることが多く、木にとまるのは人やネコを避けるときです。実際、このシダレザクラに数10羽がとまっているを見ていますが、蕾を食べていたかどうかまで観察していません。もし、食べているとすると食痕が落ちているはずですが、見当たりません。ただ、数が多いので可能性は捨てきれないと、なんとも悩ましいところです。
ということで今日の午後、職員の方と花の付き具合を調べてみました。望遠鏡を持参して、ていねいに見ると意外なことがわかりました。
すでに葉芽は、成長して来ているので木が枯れていないことがわかり、まずは一安心です。ただ、よく見ると木の3分の1から上は、蕾が付いた形跡がほとんどないのです。もし、蕾が付いて鳥が食べたのならば、柄のところが残り、下の写真のような痕跡が残るはずです。鳥が食べたと思われる痕跡は、この写真を撮ったところぐらいで、他には見当たりませんでした。
職員の方から、1年目の枝の成長が短いという指摘がありました。一番先にある枝が、ここ1年で成長した枝で、そこによく蕾が付くのですが、その枝が短いというのです。理由は、去年の夏の天候から周辺の樹木が生長して日当たりの悪化、根が伸びその上を人が歩いているなどなど、いろいろな可能性があるとのことでした。
また、数10mしか離れていないところにもう1本、シダレザクラがあります。こちらも花が少なく、やはり上に行くに従い蕾の痕跡はありません。同じような状況でした。
さらに、六義園には直線で300m離れた西の端にも大きなシダレザクラがあります。こちらもチェックすると、幸いなことに花は7分咲き、残り3分には蕾が付いていて正常な印象です。問題となった1年目の枝が、長く成長しているのもわかりました。ここで指摘があったのが、木肌の艶がこちらのほうが黒くて良いというものでした。ちなみに、ここもアトリの群れが飛び交っていましたので、アトリが蕾を食べるのならばこちらも被害にあっているはずです。
ということから、どうも正門付近の環境と変化にありそうです。今後は、樹木の専門家の意見を踏まえて対応して行くことになると思います。もし、今年はアトリが多かったからと、本来の症状を見誤り適切な対策をしなかったら、最悪の事態になったかもしれません。
また毎年、シダレザクラを楽しめる陰には、職員の方々の知識はもとよりご苦労があることも改めて知りました。
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