小鳥は、夜明け前後しか鳴かなくなったのか?
奄美大島のオオトラツグミは「夜明け前10分間しか鳴かない」と言われています。これを聞いて、これは貴重、録音するのはたいへんだと思いました。実際、奄美では録音機をどこに置こうか、あたふたしているうちに鳴きやんでしまった経験をしています。
ところが、夜明け前の録音をするようになると、オオトラツグミのように早朝の短い時間しか鳴かない鳥がけっこういることに気がつきました。
最初に気がついたのは、マミジロです。夕方、森のなかで日が沈む瞬間に鳴き始め、周辺でも数羽のマミジロが呼応するように鳴き、数分で鳴きやんでしまいました。このときの録音は、わずか3分でした。同じように早朝にも鳴きます。しかし、朝はアカハラなどの大合唱にまぎれてわかりにくいのですが、やはり10分程度です。オオトラツグミとよい勝負です。
タイマー録音をするようになると夜明け前後の録音が驚異的に増えましたので、このような鳥が多いこともわかりました。意外と思われるかもしれませんが、コジュケイも場所によっては夜明けに1回鳴いて、あとは「シーン」というパターンがありました。減ったと言われてるコジュケイ、昼間は鳴かないので気がつかないだけかもしれません。
実は、奄美大島のオオトラツグミも、繁殖期初期には長くさえずり続けることがあるそうです。同じように、夏鳥たちも渡ってきたばかりの時は、長く鳴くけれど、なわばりが安定するとさえずりの頻度は減っていき、夜明け前後に少し鳴いて終わりになるのではと思います。
あと、ポイントは密度で、さえずりって周辺の仲間が多く反応があれば鳴き続けますが、それがないと鳴かないことがあると思います。録音を聞くと、さえずっている奥には必ず別のさえずりが聞こえます。鳴き合う雄がいないと、鳴きやむか、短いのです。また、密度が高ければ独身雄がいて雌を求めて鳴き続けるので、それにつられて既婚雄が昼間も鳴くのではとも思っています。密度が低ければ朝、周辺の雄と存在を確認しあったら終わりというパターンではないかと推測しています。
だいたい、私がタイマー録音をしかけた録音機を森に回収に行くのは、午前9時頃です。そのころの森は、しーんと静まりかえっています。しかし、夜明け前後の録音を聞くと、うるさいくらい鳴いています。
それを聞くと昼間、私たち見ている鳥相って、そこに住む野鳥の種類も数も反映していない可能性が高いことを実感します。
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