セグロセキレイのさえずり-日光
考えてみると、セグロセキレイのさえずりを録音できたのは4回くらいしかありません。セグロセキレイは、珍しい鳥ではありませんし、記録的には一年中さえずっている鳥なのですが、なかなか良い音が録れない難題の鳥です。
理由は、他のセキレイ類に比べて”流れ”依存が強いために水音があって、なかなか思うように録音できないのです。たとえば、キセキレイは細い流れのため水音が小さい、さらに高いところにとまってさえずるので、空ヌキとなりノイズが少なくてすみます。セグロセキレイは、河原の岩の上などにとまって鳴き、空ヌキにはなりません。ハクセキレイは、水音より車の騒音のほうが多い環境にいますが、数が多いのでチャンスもありなんとかなります。
今まで、録れたセグロセキレイのさえずりは、流れから離れたがれきのような上でさえずっていたことが1例、貯水池や湖などで流れの音がなかった3例です。このうちの1例は、声量が少なく小刻みで複雑な節の鳴き方をしていたのでサブソングのようです。残り3例は、しっかりとした同じ節を2,3回繰り返したあと、別の節をまた2,3回繰り返す鳴き方です。たとえば、ホオジロは同じ節を何度も間を開けて繰り返します。クロツグミは、たえず違い節で鳴き続けます。数回同じ節を繰り返し、また別の節、そして今度は前の節を繰り返すという鳴き方は、セグロセキレイ特有の鳴き方かもしれません。
ところで今回、日光の大谷川の河原散歩で、セグロセキレイのさえずりが聞こえて来ました。セグロセキレイとの距離は20m、中州の岩の上にとまって鳴いています。間に緩いながらも流れがあり、40mくらい先は堰で盛大に音を立てています。PCM-D100で録音、音量などすべてそのままです。
「japanese_wagtail170728_002org.mp3」をダウンロード
「ゴーッ」という水音のなかで、かすかにセグロセキレイのさえずりが聞こえると思います。だいたいセグロセキレイのさえずりの出会いは、このような状況です。人は脳で音をいているので聞きたい音は増幅され、現場ではもう少し鳥の声がはっきり聞こえましたが、これに近いです。録音は無理だと判断しましたが、試しに録音してみたものです。
これを現場で聞いたように編集加工してみます。まず、鳥の声は高い音域にあるため低いノイズを軽減します。4,000Hz以下のノイズを段階的にフィルターをかけて取ります。さらに、ノイズリダクションをかけて「ゴーッ」という音を少なくします。
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長めの同じ節を3回、短い同じ節を2回繰り返しているセグロセキレイ風のさえずりであることがわかります。この程度の加工で、声紋のパターンを読み取ったり、さえずりの構造を調べることができると思います。
しかし、環境の音がないので不自然に聞こえてしまいます。番組には使えません。これに、別に録音した流れの音をミキシングしてやります。このとき、現場でどのように聞こえたか、しっかりと記憶してないと再現できません。目をつぶって録音したときの状況を思い出し、音がその情景にあっているかどうか、それぞれの音の大きさのバランスを調整します。
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だいたい、ここまでの加工編集は30分くらいでできます。もっと時間をかけてていねいにやれば、よりきれいな音にすることもできます。ちなみに、編集ソフトはAudition CCを使用しています。もちろん、いろいろなやり方があると思いますが、その簡単な1例をしてご紹介したものです。
こうして、録音した野鳥と自然を思い出しながらの作業を繰り返すことで鳥の声を忘れることはありません。
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