昔、カモの脇腹は灰色だった
昨日訪れた皇居の凱旋堀では、ヨシガモが近くで撮れます。先日の来訪では、良い天気のため頭のエメラルド色が輝いていました。できたら、明るい曇りくらいでしっとりとした色あいで撮りたいと思っての昨日の再訪です。
ヨシガモをファインダーで見ていると、頭のエメラルド色の美しさはさることながら、全体の模様の妙はまるで工芸品のようです。オバさんたちが「きれいなカモね。オシドリだわ」と言いながら通って行ったのも無理はありません。
気が付いたのは、ヨシガモの脇腹にある虫喰い模様の美しさです。バードウォッチャーだとムシクイには模様はないと思ってしまうかもしれませんが、青虫が葉を食べた跡、あるいはシミが本を食べた跡のような模様を言うのだと思います。白地に黒いジグザグの細かい模様です。ヨシガモの場合、胸のほうの青海紋のような鱗模様で、それがだんだん虫喰い模様になっていくというなんとも不思議なパターンです。なんで、このような模様になったのか、想像もできません。
私が学生時代、カモ類をよく見ていたのは千葉県の印旛沼です。当時は、狩猟が可能であったために、カモ類は陸から遠い水面にいました。そのため、コーワのプロミナーで波の間に間にいるカモを識別して数えたものです。たとえば、ホシハジロにも脇腹に虫喰い模様がありますが、遠いので灰色に見えました。その後、上野不忍池にホシハジロが増えて、近くで見ることができるようになって、はじめて脇腹が虫喰い模様であったことに気が付きました。
その頃、たしか高野伸二さんだと思いますが「今度の新しいレンズは、虫喰い模様が撮れる」と言ったのをかすかに覚えています。当時の望遠レンズでは、灰色にしか撮れなかったのです。たとえば、高野さんが1978年に手がけた『野外ハンドブック4 野鳥』(山と溪谷社)のホシハジロの脇腹は灰色に写っています。使用したレンズはタクマー400ミリとなっています。いっぽうヨシガモは虫食い模様がわかり、ニッコール800ミリです。撮影者はいずれも高野さんではありませんが、この違いを言ったのかもしれません。レンズの善し悪しの判断をカモ類の虫食い模様が撮れるかで判断した時代があったのです。
ちなみに前回のヨシガモの記事の写真は縮小しているので灰色に見えます。今回は、縮小率を下げているので虫食い模様がわかります。このように、昔は灰色に見えたことになります。
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