コマドリの寝言-日光
原富貴人著『信濃の野鳥』(1955・甲陽書房)は、何を隠そうネタ本です。そのなかに「小鳥の寝言」と「続小鳥の寝言」という項があって、コマドリが夜にさえずる話が紹介されています。きっかけは、原さんが山小屋に泊まったとき、午前1時15分コマドリのさえずりを2声聞きます。これは寝言なのではないかと、その後検証を試みます。まずは、友人が飼っているコマドリを一晩、鳴くかどうか観察しますが、鳴きません。その後もコマドリのいるところで深夜まで起きて鳴き声を聞こうと試みますが、聞くことはできず。このように、希なのだからさえずり(本文ではトキと言っている)ではなく寝言であろうというという話です。
さえずりの定義から言ったらさえずりで良いと思うのですが、私もいつかこの伝説のコマドリの寝言を聞いてみたい、録音してみたいと思っていました。今まで、コマドリのいるところで夜の録音をしたことがありますが、夜中にコマドリの鳴き声が入っていることはありませんでした。原さんの言うように、夜中にコマドリが鳴くことは希なことのようです。
霧降高原では、コマドリがたくさんいましたがいなくなり、コルリ、ルリビタキと入れ替わりました。その後、コルリとルリビタキもいなくなりましたが、今年はコマドリが少し復活し、夜明け前の野鳥コーラスのワン・パートを担うようになってきました。
ちょうど、日本野鳥の会からOLYMPUSの最新機種LS-P4の試し録りを依頼されました。このLS-P4はタイマー機能がないため、長時間録音で補うという録音方法をためしたところ、なんと夜中にコマドリのさえずりが入っていました。
LS-P4で録音、ボリュームのアップ、ノイズリダクションをかけています。
「japanese_robin180625_2345.mp3」をダウンロード
鳴いた時刻は、午後11時45分頃です。最後のコマドリは午後7時、これが昼の鳥の最後となり、あとはときどきホトトギスが鳴くだけでした。しーんと静まりかえった深夜にコマドリが鳴いたのです。それも、たった一声。原さんは2声聞いていますが、同じような現象とみてよろしいでしょう。
静まりかえった谷間に響き渡るほど、しっかりしたさえずりなので寝言というのには憚れます。夜中に目が覚めて、思わず一声鳴いたということでしょう。それにしても、まさか伝説の鳴き声を録音できるとは思いませんでした。
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